犬ぞり案内人 山崎哲秀 ー北極圏をテツがゆくー

グリーンランド北西部地方に古来から住む、エスキモー民族から伝承を受けた犬ぞりを操り、“アバンナット北極プロジェクト”に取り組む、山崎 哲秀のブログです。 このブログでは、北極遠征中や日本滞在中の活動の様子を紹介します。 アバンナットプロジェクトの詳細は、山崎哲秀のホームページhttp://www.eonet.ne.jp/~avangnaq/ をご覧下さい。山崎哲秀の連絡先は、同ホームページに記載しています。

2008年01月

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2歳の兄弟犬が2頭、新たにチームに加わった。アービッギアが譲ってくれたのだ。名前は「アミッ」という。両方同じ名前も困ったものだけど、「アミ1(イチ)、アミ2(ニ)」と呼ぶことにしよう。すでにチームにいるシルバーと毛並みがそっくりで、聞いてみると、多分シルバーの子供だろうとのことだ。元々シルバーも飼い主がアービッギアだった。
これでチームはオス犬13頭とメス犬1頭の計14頭となった。メンバーが出揃ったわけだが、3月中旬までに一つのチームとしてまとめなければならない。相棒がいればいいのだけど、チームが10頭を超えると、一人でまとめるのはけっこう大変だ。多数の猟師から寄せ集めたのだからなおさらだ。
また、カナダ当局にも各犬たちの歳や毛並みなど、特徴の詳細を書き出して書類を作成し、予防接種証明書を添えて提出しなければならない。

※写真上から新加入のアミッ兄弟犬。今日も村人のプラット。橇製作経過。

7yjpn1zh 24日から日付が変わった夜中の1時頃、目が覚めて外の様子を見てみると、満月は過ぎたものの月明かりで照らし出され、穏やかな天気。昼間はだいぶ薄明るくなってきたものの、月はまだこの時期は太陽の代わりだ。心強くしてくれる。次の満月の頃には、太陽が戻っているはずだ。
海氷観測に出かけることに。AM2時を回った頃に犬橇を出す。シオラパルク村から西に15kmほど離れたあたりで海氷観測。村に戻ったのはAM7時前。

今日は洗濯大会。明日、明日と思いつつ、何かと手が空かずに今日になった。お湯を作り、桶で手洗いとすすぎを繰り返すから、どうしても時間がかかる。
橇作りもランナーの底にプレートを取り付ける段階まで進んだ。今月中にはメドをつけ、さらに明るくなる2月は、犬橇で外に出る時間を多くしたい。

夕食のあと、さすがに眠たくなった。

※写真は観測 & 橇のランナープレート取り付け & 洗濯風景。

Gv_oe7__ 昨日の夕方から、久々の地吹雪となり朝方まで続いた。強風で起こる波のうねりで、海氷はゆらゆらと揺れている。
今日もソリ作りに励んでいたのだが、お昼前からひっきりなしに村の人たちが遊びに来て、その度に手を休め、コーヒーを飲みながら話し込んでいた。ここではこういうふうに訪問することを「プラット」という。夕方までに9人、子供を合わせると13人のプラットを受けた。製作中の橇にみんな関心があるようだ。今日も先生が一杯であったが、賑やかで楽しかった。コーヒー腹である。橇はランナー板の補強がやっと終わった。

少し前に犬たちに予防接種を受けたが、今日ようやく証明タグを受け取ることができた。とり合えず12頭分。今、2〜3歳のオス犬を2頭新たに探している最中だ。全頭が揃ったら、カナダへ提出する証明書を発行してもらおうと思っている。

※写真上はプラットの先生?たち。写真下は予防接種証明タグ。

Gj4iqdka 今日は朝からソリ製作。凹凸の激しい乱氷帯でも板が割れたりしないように、左右のランナー板を、鉄プレートで補強する作業で一日が終わってしまった。このあたりが橇作りの要点となる。村の人たちが代わるがわると橇作りの様子を見に来るのだが、それぞれ自分の作り方、こだわりを持っていて「ここはこうしろ」と教えてくれるのだが、微妙に違う。犬橇用ソリの作り方(基本)は、10年ほど前にこちらの人たちから教わって作ったのが最初だった。先生が多いのも困ったものだが、納得のいくところは取り入れて、あとは自分がいいと思うやりかたで製作している。生きることもそうだけど、自分の意思でやって失敗したとしても、後悔はしないだろう。

夕方から久々に地吹雪となった。外に置いてある装備などが吹き飛ばされないように養生しておく。

※写真は橇のランナー板を補強する作業

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シオラパルク村のあるフィヨルドから外洋に、海氷観測に出かけた。薄明るい時間帯も長くなってきたので、今後は3月中旬スタート予定の犬橇旅行まで、犬橇トレーニングも兼ね、外洋へ海氷観測に出かける機会を増やしていきたいと思っている。

※写真左:テントを張り観測地点にて、写真右:犬たちの餌の肉を切る風景

K3b6h4gm 子供の頃から腕白坊主だった、今年19歳のアービッギア。彼は若くしてピニヤット(猟師)の道を選んだ。この地区では若者にも人気がある隣町のカナックへ今は通い詰め。青春を謳歌しているようだ。

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カナックから戻り、落ち着いたので橇作りを始めた。
その他に各観測や犬の世話、犬橇訓練。グリーンランドからカナダへ犬橇で渡航するにあたり、各手続き関係を進めたりと、今後することも多く、いよいよ忙しくなってきた。日に日に薄明るくなる時間帯も増えてきて、気分が高まってきている。

※写真は橇の製作と海氷厚測定風景

K4albz7o 山口県の周南市在住の有佐の両親から、中型くらいの段ボール箱一杯に詰められた食糧が届いた。ありがたい。レトルト食品からお菓子類、お餅、お米や干し柿。果てはさつまいも。これっていいんかい?!

※写真は送られて来た食糧の一部

3o7bihru 1月10日〜11日
数日前の仕切りなおしで、10日から11日にかけて、隣町のカナックへ行ってきた。10日の朝10時頃、南の空が薄明るくなるのを見計らい出発。メス犬を含む、4頭の犬たちは村に残して、8頭立ての犬橇で出かける。その日の夕方4時頃にカナック着。ここではいつも町下の海氷にテントを張ることにしている。カナックはグリーンランド、アバンナッソア地区最大の町で、現在の人口は700〜800人と聞いている。
今回の目的は、新しい橇を作るのに、材木等の資材を購入に行ってきたのだった。テントで夕食を作り食べたあと、PM7時過ぎに材木をお願いしていたキム&トク夫妻の家を訪ねて、ピックアップする。車でわざわざ海岸まで運んで下さった。
 犬たちを村に残しているので、早急に帰らなければならず、翌朝10時頃、カナックをあとにシオラパルク村へと帰路を急いだ。夕方4時過ぎに村に到着。カナックへはたったの3時間の上陸であった。2月に時間の余裕ができたら、走行訓練を兼ねて、また訪れる機会があるかもしれない。

※写真はカナック下の海氷でのテント風景

知人、友人を含め、多くの方たちに、北極圏での自分の活動を広く報告する場所として、昨年夏からブログを始めました。
この度、関西どっとコム様からスペシャルブログへの掲載の連絡を頂きました。さらに報告できる場所が広がることにとても感謝しています。

10年間にわたる「アバンナット北極圏環境調査プロジェクト」http://www.eonet.ne.jp/~avangnaq/avangnaq_00.html計画を進めています。昨年10月から北極圏のグリーンランドに滞在しており、この3月中旬からスタート予定の北極海の犬橇旅行に向けて準備中。
今後の活動を、定期的に報告をしていきますので、末長くどうぞ宜しくお願い致します。

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  1月6日〜7日
最悪の1日半だった。天候と海氷が最高に安定しているので、今日と明日にかけて、隣町のカナックへ装備の買い出し行こうと数日前から用意して今日を迎えたのだが、AM10時頃薄明るくなり始めて犬橇を出そうとしたら、どうやら発情してしまったドックチームの紅一点のラッシが、オス犬と始めてしまってからが事の始まり。他の10頭のオス犬たちが大騒ぎでこちらの号令を聞くどころじゃなくなってしまった。12本ある曳き綱は数頭の犬も一緒に絡まりまくり、それを直そうとムチでなだめたところ逃げまとい、さらに収拾がつかなくなってしまった。大汗を掻いて格闘する様子を見かねたのか、大島さんが海岸べりに下りて来てくれ、手を借りる始末となってしまった。大島さんの助言でメス犬を村に残して、なんとか出発した。快調に雪の少ない海氷上をグングンと犬たちは飛ばし走り始めた。ところが村から数キロ離れたあたりで、急に「ガツン」という衝撃と共に橇から振り落とされそうになった。薄暗くわけが分からずヘッドランプをつけてみると、なんと犬たちがいないじゃないか。呼び戻す号令を大声で叫ぶが、スタートしたばかりでいきり立った犬たちは暗闇の中へと消えていった。氷の凸凹に、曳き綱を束ねている「ヌッギ」というメインロープがひっかかり、犬たちはパワーでぶっ切ってしまったわけだった。舌打ちするとはこういうことだ。出だしが悪いと、尾を引くということか。残された橇を押して、まだそう離れていないシオラパルク村へとりあえず戻った。
村の人たちは、「そのうちお腹が空いたら戻ってくる。」と慰めてくれるのだが、犬たちの情報が入ったのがPM3時頃。約60kmほど離れたカナックの町へのルート上にある、シオラットックという非難小屋のある場所に現れたという。よくもまあ、主人を置き去りにして、はるばる40kmも走ってくれたものだ。そこに居合わせた猟師からの情報だった。すぐに犬たちを連れ戻すべく犬橇を出してくれる人を捜したところ、「すぐ行ってやる。」と頼みの綱は、やはり信頼しているアグチンギアであった。PM5時頃アグチンギアがドックチームを出してくれ、pick upへ。アグチンギアの犬橇操作術はやはり見事である。色んな北極の話を聞きながら、マイナス30℃を下回る気温に凍えながらも進んでいった。空にはオーロラが流れ、満天の星空だった。
そして村に帰ってきたのが翌朝7日のAM3時頃であった。
カナック行きは延期に・・・。

Yroofzgu
2007年はありがとうございました!
本年も宜しくお願い致します!!

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