犬ぞり案内人 山崎哲秀 ー北極圏をテツがゆくー

グリーンランド北西部地方に古来から住む、エスキモー民族から伝承を受けた犬ぞりを操り、“アバンナット北極プロジェクト”に取り組む、山崎 哲秀のブログです。 このブログでは、北極遠征中や日本滞在中の活動の様子を紹介します。 アバンナットプロジェクトの詳細は、山崎哲秀のホームページhttp://www.eonet.ne.jp/~avangnaq/ をご覧下さい。山崎哲秀の連絡先は、同ホームページに記載しています。

2008年11月

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1129日(土)

 121日を犬橇トレーニングの開始日、と決めて今日も色々と準備した。胴バンドのついていない犬達には取り付けてやったり、また犬を仮留めする場所を整備したり・・・。

今日、レゾリュートの隣町(といっても800kmほど離れている)グリスフィヨルドという小さな町のイヌイットのもとへ、子犬2匹がもらわれていった。カナダイヌイットの間では、犬橇文化が崩壊し、スノーモービルへと変わってしまったのだが、中にはまだ犬橇を操るイヌイットもいるのだ。しかし混血も進み、純粋な橇曳き犬の血は絶えつつあるのが現状だ。「純粋なイヌイット犬の血を入れたい。」と申し入れがあり、僕がグリーンランドから連れてきた犬に産まれた子犬を譲る運びとなった。グリーンランドでは、他の国から犬を持ち込むのを法律上禁止していて、混血していない純粋なイヌイット犬が残された最後の場所、といっていいと思う。カナダでもイヌイットの犬橇文化を絶やさない、という意味ではすごく大切なことだと思った次第だ。

手元には2匹の子犬が残ったが、大切に育ててやろう。

写真:(左上)犬たちを仮留めする紐を設置。石に紐を縛って雪の下に埋め、水をかけて凍らせた。水が足りなかったので、小用で間に合わせた・・・。(右上)胴バンドをつけてやる。「走る季節が来たのか!?」と犬たちの遠吠えの合唱が始まった。繋がれているのにうんざりしているのだろう。(左下)グリスフィヨルドへもらわれていった2匹の子犬。白いのがメス。頭の茶色いのがオス。(右下)今日のワンコはアミッアミッ。相変わらずシャイですな。

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1128日(金)

 質問など、メールでも時々届いたりしますが、もし聞きたいことがありましたら、avangnaq@gaia.eonet.ne.jp までどんどん質問をして下さい。大歓迎です。ブログの中で、お答えしていきたいと思います。

今日は大阪府のハルカンボママさん(ハルカンボってどういう意味だろ?)からの質問です。

Q:白熊対策には、ヒグマ対策で使われる「鈴」の音はダメなのでしょうか?

A:う~ん、考えたことが無かった・・・。日本から装備品の中に入れて、送ってもらおうかな。橇にぶら下げて試してみるのもいいかもしれないですね。僕のドックチームの犬たちは、白熊が逃げる前に、匂いを嗅ぎつけて、白熊に突進していくかも・・・。

今日の外はホワイトアウト。雪というよりも、霧がかかっている感じだ。町の街灯がぼんやりと見える。風も弱く、気温マイナス20℃弱でも、暖かく感じる一日だった。

写真:アプ君、やや太り気味だね、君は・・。(犬たちの写真もローテーションで掲載していきます。不公平のないように50音順だよ。)

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1127日(木)

 コンテナの中に預かってもらっておいた、犬橇用の橇を外に出した。出来れば来週あたりから少しずつ、犬橇トレーニングを開始しようと思っている。今、このレゾリュート周辺には、2頭の子供を連れた白熊がウロウロしているとのことだ。

写真:(上)コンテナに保管されていた橇。(下)コンテナから橇を出す様子。PM1時を回ったばかりだというのに、明るさはこの程度だ。

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1126日(水)

 レゾリュートでの長期滞在場所を確保できた。最初は安く賃貸できる小屋が無いものか、と探していたのだが、Aziz氏のアコモデーション(宿泊施設) http://www.southcampinn.com/ に、手頃な家賃で滞在が可能となった(3食付き)。通信関係も設備されているので、この上ない環境で準備をしていける。ポケットの中身が寂しいことはAziz氏も察しているようで、取り計らいに、ただただ感謝だ。

滞在環境が整ったとはいえ、すぐに犬ぞり訓練に入れる訳ではない。極夜の真っ只中ということもあり、もう少し時間がかかりそうだ。

おととい、昨日と視界が利かない吹雪が続いた。レゾリュート到着後は、天気が良くない。今日は低い地吹雪だが、空は晴れ渡った。午前中は犬たちの胴バンドを縫ったり、餌をやりに行ったりする。グリーンランドの小さなシオラパルク村とは勝手が違い、犬たちはかなり離れた海岸近くに繋ぐことになっていて、見回りは視界が利かない天候だと方向を見失ってしまうなど危険が伴うから、少し不便である。午後は町の周辺で、4~5頭の犬たちから走行トレーニングを始めることが出来そうな場所を偵察してみた。夏の間には全く走っていない彼らは、少しずつ走らせて、筋力を戻していってやらないといけない。グリーンランド、イヌイットに教えられた方法だ。自分も感覚を取り戻さないといけない。前半約3ヶ月の準備期間は、そういった理由も半分兼ねている。先は長いのだ。気も長くなければいけない。

写真:胴バンドを縫う様子

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1123日(日)

 朝8時半頃、預かってもらっていた装備を、取り合えず必要な分だけコンテナから出してきた。昨日レゾリュートに到着したばかりなので、まだ体勢がなにも整っていない。焦らずにやろう。そしてようやく薄明るくなり始めたAM10時を回って、犬たちと再会。少し離れたところからグリーンランド、イヌイット語で合図をすると、犬たちが大騒ぎし始めた。どうやら忘れずにいてくたようだ。11頭触れ合ってやる。太りすぎとちゃう?という気がしないでもないが、みんな元気だ。ただ残念なことに、夏を越す間に「シロ」が死んでしまったとのことだ。いずれまたこのことは触れるとして、今日からまた犬たちとの生活が始まった。

 レゾリュートの周辺は白熊が多く、また町にも頻繁にやってくるというので、ライセンスをとっているライフルの手入れをしておく。町を外れて歩くことも多いので、犬の世話に行く時も常に持ち歩くことにする。

 薄明るくなった南西方向の空は、3時頃にはまた暗くなった。

写真:レゾリュートの町。11月下旬のレゾリュートは、これくらいしか明るくならない。

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1122日(土)

 今日ようやくレゾリュートベイ入りした。午後3時前に飛行機はイカルイットを出発。530分頃、バフィン島北端にあるナニシビックを経由したあと、PM7時過ぎにレゾリュート到着。今日の午後あたりから天気が崩れ始めたらしく、雪を伴ったやや強い風が吹いていた。当然ながら辺りは真っ暗である。空港には前回もお世話になったAziz氏が迎えにきてくれた。Aziz氏はインド人なのだが、この周辺の北極域に遠征に来る人たちのサポートを仕事としている。そして犬たちはAziz氏のイヌイットの奥さん、アリサックが、僕が帰国中は世話をしてくれていたのだ。今日はひとついい知らせが待っていた。我がドックチーム紅一点のラッシに、なんと子犬が4匹生まれていたのだ。113日に生まれたとのこと。前回の計算から、そろそろのはずだったので、お腹にいるくらいかと思っていたが、まさかもう生まれているとは!またしっかりと世話をしてやらないといけない。

さて、明日から少しずつ体勢を整えていこう。

写真:生まれていた4匹の子犬たち(左)と母犬のラッシ(右)

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1120日(木)

 16日の夕方に日本を出発して5日目、まだカナダ、ヌナブット州の州都イカルイットという町にいる。日本を出た時はホッとした気持ちで、飛行機の中と到着したバンクーバーではとにかく爆睡した。バンクーバーに1泊したあと、次のフライトの都合でオタワに移動。オタワでは2泊。

そして昨日(19日)オタワ発のFirst Air http://www.firstair.ca/  便に乗り込んだ。First Airは、カナダ北極域を中心に運航している航空会社で、オタワ発便は、カナダ北東部でバフィン島の南にあるイカルイットを経由する。イカルイットからは、19日にそのまま乗り継いでレゾリュートベイへ行けるはずがキャンセル。仕方ないな・・と思っていると1度あることは2度ある。今日もキャンセルとなってしまった。土曜日の便を待たないといけない次第。トホホ・・・。

いい方向に考えよう。イカルイットは北極圏には入っていないにもかかわらず、近くを寒流が流れている影響とかで、比較的寒い。今朝も気温を測ったら、-22.8℃まで下がっていた。レゾリュート入りする前に寒さへの順応訓練ができる。また日本から、風邪気味をずっと引きずっていたのだが、昨日あたりにピークが過ぎ、ぐっと体調が良くなった。休養日が多く取れたからだろう。このあと、いい体調でレゾリュート入りできそうだ。明日は一日時間ができるから、ゆっくり町を見てみることにしよう。今後こんなに長く、イカルイットに滞在する機会はないだろうしな!!

添付:イカルイットの位置図

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1113日(木)

 1116日の日本発を控えて、かなりバタバタしている。ブログも随分と休んでしまった。いつもブログを見てくださっている皆さん、申し訳ありません。支援、応援をいただいている皆様、申し訳ありません。まだ誰にもお礼を言えていない状態です。

今シーズンはカナダ北極圏での活動になります。前半3ヶ月ほどは、レゾリュートベイという町をベースに、極夜の中での準備期間です。そして太陽が高く戻ってくる来年3月頃から犬橇での旅行期間になる予定です。ブログでも活動の様子など発信していきます。これからもどうぞ宜しくお願い致します。

1111日に、北海道の旭川工業高等専門学校で話をさせて頂く機会がありました。僕は冒険的な、記録を打ち立てていくタイプではないですが、これまで自分の歩んできた道と、今後の抱負など話をしました。40歳を過ぎた自分にも未だ「情熱」があります。いつの時代(年齢)でも「手抜きのない人生」を送ろうよ!ということをメッセージとして、特に生徒のみなさんに伝えたかったです。

それでは、行ってきます!

写真:(旭川工業高等専門学校より)講演の様子

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