犬ぞり案内人 山崎哲秀 ー北極圏をテツがゆくー

グリーンランド北西部地方に古来から住む、エスキモー民族から伝承を受けた犬ぞりを操り、“アバンナット北極プロジェクト”に取り組む、山崎 哲秀のブログです。 このブログでは、北極遠征中や日本滞在中の活動の様子を紹介します。 アバンナットプロジェクトの詳細は、山崎哲秀のホームページhttp://www.eonet.ne.jp/~avangnaq/ をご覧下さい。山崎哲秀の連絡先は、同ホームページに記載しています。

2009年02月

20090224

2月24日(月)


朝はまだ地吹雪がひどかったが、天気予報通り午後から小康状態になってきた。昼食後、物資を海氷上に運び始めた。5頭の犬達で数往復。これから今夜はテント泊。出発前にソリのランナーをカンナで磨いてやったりとか、作業が待っている。そのあと積込みだ。

明日天気が良ければ犬橇旅行の出発です。安全面には特に注意を払いながら、行ってきます。

 

写真:レゾリュートの海氷上にテントを張る。

200902233 223日(月)

 昨夜から地吹雪が続いている。明日24日は風が弱まれば、夕方までに海氷上に物資等を集積し、ソリに積込んで夜はテント泊の予定。そして日程どおりの25日早朝にレゾリュートを出発する予定だ。天気が回復することを祈って・・・。

写真:地吹雪に丸まって寝る犬達。

20090221 221日(土)

 18日深夜から19日の夜にかけては、久々の吹雪となった。天気が回復してからはまた冷え込み、今朝はこの冬の最低気温を更新。マイナス41.3℃。

 朝9時頃、薄明るくなってきてから犬橇の準備。今日で犬達の全体トレーニングは最終となるかもしれない。出発が近づき、胸がドキドキと鼓動することが多くなってきた。太陽に反射するソリのトレースは、この先へ続いていくと信じている。

写真:太陽に反射するソリのトレース。

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218日(水)

 今日は足の裏の手入れをした。といっても自分のではない。犬達だ。長く伸びすぎた毛をハサミで刈ってやるのと、爪も同じく伸びすぎている先端を切ってやった。足の裏を覆うような長い毛には、走行中に雪が氷玉となりへばりつき、爪と爪の間の根元を傷つけてしまうのと、爪は長すぎると踏ん張る際に痛いのだそうだ。イヌイットから教わったケアである。

寒さに、軍手一枚の手が凍えてしまい、全12頭の足の裏、計48本分するのに時間がかかった。

写真:ハサミで長く伸びた毛を刈ってやる。

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 この冬一番の冷え込みとなった。夜に測定した気温はマイナス40.9℃。太陽は戻ってきたものの、ここではまだまだ春の匂いを感じさせてはくれない。

今日の作業課題は、アイスドリル(ハンドオーガー)のテスト。朝10時頃から沖合の海氷に犬ぞりで出かけてきた。いざ犬ぞり旅行で持ち運ぶのはいいけど、使えなかったら意味が無いのでチェック。初めて使うタイプのものだが、無理せずに使えば充分に役目を果たしてくれそうだ。1mばかり掘ってみたところでテスト終了。コーヒーを飲んで一息入れてから町に戻った。

 いよいよ来週末に犬ぞり旅行に出発する予定だが、今回は大きく3月期と4月期の二回に分けて、犬ぞり旅行を計画している。3月期の計画について簡単に触れてみると、パリー諸島群、レゾリュートのあるコーンウォリス島から北西方面にあたるバーサスト島北部まで足を延ばし、島の周りをぐるりと回ってレゾリュートに帰着するという、25日間前後の旅行計画だ。近将来の観測調査を見込んで、パリー諸島予備探査、という位置づけである。3月下旬にレゾリュート帰着後、約1週間の滞在で態勢を作り直し、4月期の旅行をスタートする行程を立てている。極地に詳しい方たちからみれば、物足りない計画に映るかもしれないが、限られた予算内でやるというのも一つの遠征だ。

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写真:(上)アイスドリルのテストをする。(下)活動計画の地図。緑丸部が3月期の活動予定範囲。

20090216 216日(月)

 犬橇スタートを間近に控えて、確認事項をいくつか済ませておく。一つは5月中旬に滞在期間が6ヶ月を超えるため、事前に滞在ビザ延長の申請しておく必要があるか、ということ。もう一つはライフル所持許可の期限も、5月上旬に切れてしまうため、事前申請が必要かということを、合わせてレゾリュートの警察へ確認しに行ってきたところ、今シーズン最終目的地にしている、ケンブリッジベイに到着時(5月上旬頃)に、滞在期間を超えてしまった場合に申請で構わないとのことだった。ライフル所持も同じく・・。

 今回は3月期と4月期に大きく分けて、犬橇による活動を計画している。明日のブログでは、3月期の計画を少し書いてみたいと思う。

知人から、犬ぞりの質問を頂きました!

Q:(その1レゾリュートに犬ぞりチームは何チームあるのですか?

(その2)今シーズン、別の犬ぞりチームで走らせている様子はありますか? 

犬ぞりはやはり、多くの方たちが興味を持っているみたいですね。

A:(その1)(その2)僕が町の様子を見ている限りでは、おそらく3~4のドックチームがこのレゾリュートにはあるようです。どこでそう判断するのかというと、チームで繋がれている犬達の輪が、僕の目に見えるのは3チーム。でも残念ながらそのドックチーム達はまだ、今シーズン一度も走らされてはいないです。やはりスノーモービルが、こちらのイヌイットの人たちの移動手段であり狩猟手段のようです。確かにスノーモービルはスピードが速く、時間の効率はいいですからね。それじゃ、どうして犬ぞりチームがあるのか?と疑問に思いますが、聞いたところによるとこちらでは、白熊狩りはスノーモービルを使用したらダメだそうです。犬ぞりでの白熊狩りは認められているとのことらしいです。猟師の人達は、年間に許可されている狩猟頭数があるようですが、中にはそのライセンスを外国からの観光客に売り、白熊狩りを一つの収入源にしている、という話もあります。ここレゾリュートでの犬ぞりは、白熊狩りのためにあるのかもしれないです。この時期は、白熊の毛皮も綺麗な冬毛に生え揃っているでしょうから、レゾリュートの犬ぞりシーズンが、このあとやってくるのかもしれません。

 

写真:モンベルから特製で作って頂いた、犬ぞり用の装備袋に、積込みのシュミレーションをしてみる。装備袋の大きさは幅95cm×長さ300cm×高さ85cmで、万が一海氷が割れてしまった時に、ソリが浮かんでくれるように想定しているのと、走行中に荷物を落としたりしないようにすることを考えた。

犬ぞり旅行中の質問もavangnaq@gaia.eonet.ne.jp で受け付けます。毎日の定時交信時に伝言、ブログ更新してもらいます。

20090214_2 214日(土)

 今朝の気温はマイナス37.2℃。周囲が明るく見渡せるようになったAM10時頃、犬橇を出す。昇る太陽もだいぶ角度がついてきた。225日~27日あたりの天気がいい日をスタートと決めて、気持ちはすでに犬橇旅行に向かっている。

 今日は大阪市の桃太郎さんから質問を頂きました。今回で3回目かな?いつもありがとうございます。

Q:(その1

いよいよ、(出発まで)あと2週間ですね!!遠征の間も、ブログの更新もできるんですか?

(その2)

同行者の人もいるんですか?

2つ目は、かなり切実な質問です。

A:(その1)ブログは僕のほうからは更新できないですが、日本で後方支援をしてくれている有佐(ありさ)から、旅行中の様子を更新してもらうことになります。安全対策の一つとして、イリジウム衛星電話で毎日、定時交信をします。今回、イリジウム衛星電話とパソコンを接続して、写真を送信する計画だったのですが、接続が今のところうまくいっていません。犬橇旅行スタートまで、もう少し頑張ってトライしてみます。できればみなさんに、ブログでも活動中の写真を見て頂けるように送信したいのですが・・。以前まで出来ていた写真送信が、今回も同じ操作をしているのですが全くできず、頭を抱えています。

 (その2)とても深刻な問題です(笑)。現在取り組んでいる「アバンナット」計画で目指している一つとして、フィールド(野外)でチームを組んで活動することもあります。研究者の方であったり、極地で活動している方(あるいはしたい方)であったり、映像の方であったりなど・・。予算上の都合で、まだそこまで形になっておらず、今回も一人となってしまいそうです(自費参加、大歓迎ですが、なかなか・・(笑))。冒険というような記録を目指しているわけではないので、一人にこだわりは全然ありません。犬橇で旅をするだけならいいのですが、一人で出来ることには限度があり、やはりそれぞれの専門分野の方たちとなんとか近将来、そういう体制を持ってチームで活動したいです。必ず形になると信じています。

写真:午後一時の太陽。高度がだいぶ出てきた。

質問がありましたら、avangnaq@gaia.eonet.ne.jp まで遠慮なく!ブログ上でお答え致します!!

200902124 212日(木)

 町の中を少し歩いてみたら、今日はやけにワンワンと吠える犬達が目に付いた。どうもこの寒い北極には、似つかわしい犬達である(笑)。イヌイットの生活の中に、いつ頃からペットとしての外来犬が入り込んだのだろうか?

久々に空に雲が広がり、雪がちらついた。気温も暖かくマイナス25℃前後まで上がった。今日は犬橇は出さず、その他準備に集中。タイミングよくイエローナイフの動物病院に注文していた、犬達の予防接種ワクチンが届いた。ジステンバーやパルボウイルスなどの混合ワクチンである。北極地域でもジステンバーなどによる伝染病が猛威をふるうこともあり、ちゃんと予防はしてやらないといけない。ワクチンを凍らさないように、全頭に射ってやった。

今月末には、犬橇旅行をスタートしたいと思っている。

写真:(上)レゾリュートの犬達。(下上)犬橇トレーニングにて。(下下)予防接種のワクチンを注射器に吸入。

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29日(月)

 1月上旬に日本宛に出した郵便物が、なんと1ヶ月経った今頃、カナダ本土から返送されてきた。いわく付きの郵便物で、昨年のクリスマス後に一度郵送したにも関わらず、1月上旬に返送されてきて、すぐまた再郵送したのだった。レゾリュートの町の郵便局員さん(一人しかいないのだが)に、念を押したにも関わらず、今回は料金不足だったとか。おいおい・・、急ぎの郵便物であったのに。頼みますよ~。局員さんが立て替えてくれていて、すでに定期飛行機便に合わせて送ってくれたとのことだったが、再々送本当に大丈夫だろうな・・。

 この数日間は、犬橇トレーニングと食糧等の準備の繰り返し。犬橇で外に出ると丸一日潰れてしまうので、うまく調整している。ここしばらく天気が安定していて、冷え込みもマイナス35℃前後と平均している。顔にはすっかり凍傷だらけだ。

数日前、ボス犬のルッキとナンバー2のキナリが喧嘩を始めたところ、キナリの子分犬がそれに加勢してしまい、ルッキが右前脚を噛み付かれて負傷。この3日間は傷口が化膿しないように抗生物質を飲ませて面倒をみてやった。どうやら回復してきたようで一安心。クロとシロがチームから抜けてしまったぶん、一頭も欠かすことができない戦力だ。

写真:南南西の空に陽が沈む。

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26日(金)

太陽を見たら急に、もう出発までに時間が無いのだという気分になってきた。今月は28日までしかないし・・。

昨日から食糧の段取りを始めた。犬達の餌はすでにドックフードを確保しているので心配する必要はないが、自分の食糧は輸送費がかさむので現地調達である。今日もCO-OPへ買出しに行ってきた。毎回のことだが、ちゃんと一日分のカロリーを計算して食糧計画を立てるのだ。買い込んだものをさらに、一食ずつに小分けしてやらないといけない。少しずつ買出しをして、3月の旅行30日分を準備しなければならない。

 今日も天気が良く、犬橇トレーニングへ。

写真:(上)カロリー計算をしながら、食糧の準備をする。(下)防寒靴のインナーブーツを縫う作業。

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24日(水)

 太陽が戻って来たあ~!!

今日は今シーズン初の、犬達の全体トレーニング。12頭の犬達を一緒に走らせた。そんな中、お昼の1240分頃、橇を止めてコーヒーを飲んで休憩していると、なんと太陽が南の空に戻ってきたのだ。もう何日かあとだと思っていただけに、感激ひとしおだ!思わず犬達に「もっと喜べー!」と小躍りしながら叫んでしまった。太陽全体が出るまでにはいかなかったが、それでも南の海氷上を左から右へ、転がるようにオレンジ色の太陽が、2時間ほど顔を出していた。ここからはどんどん太陽が高くなっていく。北極のいい季節の始まりだ。犬橇旅行に向け、早く最終準備を進めなければ・・・。

写真:戻ってきた太陽!

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23日(火)

 一昨夜はどうしても仕上げなければいけないレポートがあり、数時間しか寝ないまま朝を迎えてしまった。さすがに昨夜は夕食後、しばらくすると目を開けていらず眠りについてしまった。いかんいかん・・。

今日は日本の国立極地研究所の本山さんから、アイスドリル(ハンドオーガー)が届いた。3月は、パーリー諸島予備探査という形で、将来の観測調査を見込み、レゾリュートから北西部へ、2025日間の予定で犬橇旅行に出かける予定だ。海氷の多年氷(夏の間も融けない海氷)のコア採取も一つの課題としてもらっている。さっそく荷物を開け、使い方の予習をしておく。近いうちに実際に試すことにしよう。

写真:(上)犬橇トレーニングにて、氷の前で記念写真。(上下左)ドックフードの準備風景。(上下右)日本から届いたアイスドリル(ハンドオーガー)セットとその他観測資材。(下)今日は「ルッキ」の登場です。ルッキは英語?でいう「ルーク」です。もとから名前が付いていました。後ろ足を怪我していて、見捨てられかけていた時に引き取りました。そのシーズンは全く走ることができず、散歩に連れて行ったり、一緒に走ったりと必死にリハビリをしたのち、翌シーズンに見事に復活。チームでもトップクラスの馬力です。

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20090131 131日(土)

 「キタァ~!」というモノマネがあるそうだが、ここでは気温の話。今朝の気象観測で、この冬一番寒いマイナス37.8℃を計測した。気象観測は朝夜の2回、日課である。冷え込みの強い日は、最低気温がくるのでは・・と、いつも楽しみでドキドキするのだ。この下旬はやや気温が高いなあ、という日が多かったが、今日で1月も終わり。2月はもう少し冷え込みが強くなるはずだ。

 天気もよく、犬橇日和の今日は犬達を8頭連れ出して、レゾリュートから南西方面の新氷に観測に出かけた。海氷はすでに30cmに発達していた。その沖合は、まだ海水から蒸気が立っているので近づいていない。

2月からはいよいよ全頭の犬達でトレーニングを始めて、チーム作りの最終調整に入りたいと思っている。

写真:(上)犬橇トレーニングにて。(下)今日のわんこは「リク」です。リクの由来は「陸」で、産まれた時は3兄弟で、他に「空(ソラ)」と「海(カイ)」がいましたが、グリーンランドでイヌイットにもらわれていきました。今ではチームで一番体格がよくなりました。そういえば親父によく言われたものだ「体ばっかりデカくなりよって・・・。」

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