2009年12月
「マングアッ」
クリスマスが終わり、年末に差し掛かったレゾリュートは静かな感じだ。
現在12頭の我がドックチームを補強すべく、若いオス犬を2頭ほど12月に入ってから探している。12頭のうちの2頭のメス犬が、2月下旬頃からを予定している犬橇本旅行の際、産休になる可能性を考えてのことだ。数日前に、1頭譲ってもいいという人が現れ、連れてきて餌をやりながら様子を見ていた。昨日は天気が良かったので、少しテストをしてみたところ、ちょっとソリ曳き犬には厳しいなという感じ。餌をもらってないのか、やせ細っている上に、脚とか体の骨格があまりに細く、テストを共にした他の4頭の犬たちにソリと一緒に引きずられ続け、走れないのだ。1歳を過ぎたシンとコウがなんと立派に見えることか・・。情が湧く前に飼い主に戻すことに決めた。
今日はブリザード。こんな日は屋内作業。日本から持ってきたムートンの毛皮で防寒オーバー靴を縫い始めた。寒い時に、防寒靴のさらに上に履くものだ。こちらでは「マングアッ」というらしい。イヌイットの間では、実際はトナカイの毛皮なんかを利用するはずだ。
写真:縫いかけの防寒オーバー靴「マングアッ」。
レゾリュートもクリスマス
2009年12月25日(金) やや地吹雪
年末年始を極地で過ごすのも、2004年の南極観測隊に参加以来、6シーズン連続となった。今日はこのレゾリュートもクリスマスを迎えた。町の講堂であったクリスマス会に参加してきた。去年もそうだったけど、クリスマスはイヌイット文化から離れた、立食パーティーだ。クリスマスツリーが飾られ、やはり盛り上がりは、子供たちのためにサンタクロースが登場。写真を撮ろうとすると、カメラに向かって手を上げてくれるほど、サービス満点のサンタクロースだった。アザラシの肉、美味かったなあ・・・。
こういう日はやっぱり、一人で過ごすものじゃないんだろうね。大勢の中で浮いてしまいます(笑)。ここでは犬たちが家族です。
写真上:町のクリスマス会にて。食べ物のあるテーブルに集まる人たちと、サンタクロースからプレゼントをもらう子供たち。
写真下:宿泊先のSouth Camp Innのクリスマスツリー。
部屋掃除
ミッド ウィンター
2009年12月22日(火) 地吹雪のち晴れ
ここレゾリュートも、日本から一日遅れて冬至。「ミッドウィンター」だ。一日中太陽が昇らず暗いから、ミッドウィンターという言い方に現実味を感じる(笑)。極夜も折り返し。これまでは一日一日と明るい時間帯が短くなっていたのが、今度は一日一日と明るい時間帯が増えていく。外は相変わらず地吹雪の日が多いけど、気分も明るくなってくるね。ちなみに太陽が戻って来るのは2月初旬頃。よし!!
アニガー
2009年12月21日(月) 曇りのち晴れ
3日ぶりに雲が切れて晴れ空になってみると、どうやら月がまた戻って来たようだ。犬ぞりトレーニング&観測から帰って、PM3時半頃、犬たちに餌をやりに外に出たら、南の空に三日月が顔を出していた。太陽の代わりの月に思わず嬉しくなる。
今日もエスキモー語講座。「月」はエスキモー語で「アニガー」。そして「お金」のことをなんて言うかというと「アニガー ファ」。ここでの「ファ」という意味は「~のようなもの」になる。ようするにお金(硬貨)のことを「月のようなもの」と表現してる。面白いね。
さて問題です。「ヒオガ」というのは「砂」のことを意味します。それでは「ヒオガー ファ」と言うのは、どういう意味でしょう?(答えは写真の下)
写真:じゃれついてくるリクとシン。
答え:「砂糖(砂のようなもの)」でした!
オーロラと流れ星
2009年12月18日(金) 晴れ(低い地吹雪)
朝早くに目が覚めてしまって寝付けなかったので、5時頃早々に気象観測に外に出た。空には満点の星。そして高緯度のレゾリュートにも珍しく、薄っすらとオーロラが出ていた。寝静まっている犬たちの中で、シンがムクムクと起き上がって寄り添ってきた。「シン、ほら見ろ。オーロラや。」そこに今度は、かなり鮮やかな流れ星。出来すぎたシーン(場面)だなあ。ま、横にいる相手がシンでもいいか。今シーズンもいい遠征にしようゼ。
グリーンランド、アバンナッソア地区のエスキモー語で、オーロラのことは「アッハンナ」。何かが踊っている意味だったはずだが、なんだったかなあ・・・?流星は「ウッドガヤ アナッ」。この意味が面白い。ウッドガヤは星のこと。アナッは糞のこと。ようするに星のうんこ、という意味だ。シンプルだよね(笑)。ちなみに彗星のことを「ウッドガヤ パミウリ」。パミウリは尻尾、の意味。シンプルだよねえ(笑×2)。
写真:17日のPM1時頃の南の空。色彩が綺麗だった。向うにはグリフィス島の島影が見える。手前は犬たち。
気分スッキリ!
いや~、長い悪天候だった。昨日のブログには、気分転換に青空が広がった犬ぞり風景の動画を載せてみました。2008年4月に撮影した動画でした。
今レゾリュートは極夜で、一日中太陽が昇らない季節だから、青空は見れないのだけど、あと1週間もすれば冬至も過ぎて、極夜も折り返し。
今日はしっかり犬ぞりトレーニング。気分スッキリ。キナリ、シン、リク、コウ、アプ、カヌッルンニの6頭立て。冬至を過ぎたら、一回のトレーニングで走らす犬たちを、8頭くらいに増やしてステップアップしようと考えている。それと、チーム補強のために、現在2頭のオス犬を探している。
写真:今日のトレーニングにて。
犬ぞり風景動画
困ったもんだ
「第一便」
快晴
2009年12月10日(木) 快晴
気持ちいいくらい快晴。AM10時半頃、犬ぞりの準備を始めて出かける。今日はキナリ、リク、シン、ルッキ、ウヤー、ラッシの6頭。湾を出て少し沖合いへ。観測日和なので、海氷のデータを収集。氷の厚さは43cm。これまでで一番薄かった。気温もマイナス34℃と冷え込み、両方の頬が少し凍傷になる。この部分はもう癖になっていて、毎シーズン同じ場所がやられてしまう。話のネタにはいいのだけれど、勲章にはしたくないものだ。
写真上:両頬が少し凍傷に。
写真下:今日のわんこ紹介は「アミッアミッ」。昨日紹介したアミッバル同様に、引き取った当初は人間をすごく怖がっていたけど、今では触ってやると気持ち良さそうに、おとなしくしている。アミッアミッは平和主義で、喧嘩を他の犬たちにふっかけたりしない、おりこうさん。気の優しい犬です。顔立ちがなかなかハンサム。仕事をサボらない、すごく真面目な犬です。
South Camp Inn
連日マイナス30℃以下の気温が続いている。昨夜からの地吹雪は、あっけなく午後あたりには穏やかになった。明日からはしばらく落ち着いた天気になりそうだ。
今日は、自分がレゾリュートで滞在している宿舎を紹介。泊まっているところは「South Camp Inn」 → http://www.southcampinn.com/ というアジスさんが経営するアコモデーション(宿泊施設)で、もともとレゾリュートで働く、設備関係の労働者が長期滞在するアパートとして利用されていたようで、のちに増築した新館を旅行者などの宿泊(ホテル)としているようだ。施設にはちゃんと専属のコックさんもいて、3食込みというありがたい環境。まともに何ヶ月も滞在していたらとても支払いができないので、アジイさんの好意で、ここに長期滞在している人たちと同じような条件で、宿泊させて頂いてる。北極遠征の人たちの利用も多い。活動のベースがあるというのは、安心して取り組むことができる。アジイさんにも感謝、感謝です。
写真上:宿泊滞在しているSouth Camp Inn。
写真下:今日のわんこ紹介は「アミッバル」。次回登場のアミッアミッとは兄弟。アミッバルは元の飼い主の影響だったのか、1歳過ぎた頃に引き取った当時は、とにかく人間を恐れていて、僕が近づいても逃げまとっていた。今でも他の犬たちに比べたら、触られるのを嫌がるが、随分となつくようになった。餌をいくらやっても太らず、気が強い痩せっぽちのアミッバルだけど、馬力はある。白熊に敏感で、いつも一番最初に気付いてくれる、飼い主にはありがたいヤツです。
久々に犬ぞり!
2009年12月8日(火)
今日ようやく犬ぞりを出すことができた。南の空が薄明るくなるお昼前後に、一時的に天気が良く、犬たちを走らせた次第。キナリ、シン、リク、アミッ兄弟、シルバーの6頭をトレーニングする。今日はサイレス&サエコ夫妻も是非とのことで参加。マイナス30℃より下がった気温の中で2時間ほど活動してきた。昨日あたりからグッと冷え込み始めて、手元の温度計でマイナス34.2℃を記録。いよいよ北極も冬本番か。町に戻ったら、また視程不良になってきた。予報は今晩からまたブリザード。犬たちにはしっかり餌を与えた。
写真上:吐く息が凍る、サイレス&サエコさん。
写真下:今日のワンコ紹介は「ウヤー」。兄弟犬にアプがいて、チームではどちらかというと体は小さいほう。でもウヤーは気が強く、一緒に繋いでいるルッキとは、しょっちゅう取っ組み合いをしている。兄弟が揃えば怖いものなしという感じ。ウヤーの特徴は鼻が利くこと。
重機
2009年12月6日(日) 雪のち晴れ
夕方になり、ようやく天気が回復。いつも出入りしている宿舎の裏口に、雪が吹き溜まってしまったので、スコップでせっせせっせと雪かきをしていると、町の除雪ブルドーザーが通りかかり、ひょいひょいっと二(ふた)かき。あっという間に除雪。早っ・・、なんじゃそりゃ。まだまだ重機には負けへんで~。
季節が真冬へと移ろうとしているのかもしれない。冷え込んできそうな気配。明日は犬ぞりで暴れるでえ~!
写真:今日の犬紹介は「カヌッルンニ」。4歳を過ぎたところで、ソリ曳き犬として脂が乗り切っている頃。カヌッルンニのいいところは、喧嘩は好まず弱い(気が優しい)のだけど、とにかく明るい。いつも近くに行くと飛び上がってじゃれついてくる。敵をつくらないタイプです。
「真っ白」
霧
2009年12月2日(水) 晴れ 一時 霧
今朝6時に外に出た時は、満月が煌々と輝いていたが、時間が経つにつれて霧が出始めて視界が利かなくなった。犬ぞりを出す準備を進めていたが、見合わせた。午後を過ぎても変わらないので、犬たちに餌を与えたら、そのあと急に霧が切れ始めた。舌打ちだ。また明日、明日!
写真上:満月が輝く。
写真下:今日の犬紹介は「キナリ」。ルッキと並んでボス格であると共に、チームの大事なリーダー犬。キナリが前に出ると走行中は一番まとまる。子分で仲の良かったウキダガヤが亡くなってしまい、気落ちしないか心配だったけど、大丈夫そう。最近、自分より体格が大きくなったリクに反抗にあい、喧嘩ではやや押さえ込まれ気味。顔は相変わらず傷だらけでハクがありますなあ。チームでも長老になったけど元気です。
北極も師走
2009年12月1日(火) 曇りのち雪
AM11時前に、犬ぞりトレーニングを兼ねて海氷観測にでかける。天気はどんよりと曇り。温度計を忘れてしまった。いかん、いかん・・・。風が弱く、暖かく感じた。午後、町にもどってしばらくすると、雪がちらついてきた。
よく考えたら今日から12月。今年ももう師走か。
写真:今日のワンコ紹介は、メス犬の「コウ」。シンと兄妹で1歳を過ぎた。母親のラッシに似て、食い意地がすごくはっている。また元気が良すぎるくらいで、ピョコピョコ跳ね回っている。これも母親似か・・。写真の左上は半年前のコウ。そして今は、すっかり大人っぽくなった。まだ体は大きくなりきってないように思う。数日前から発情。チームの男どもを幻惑しています(笑)。
ヒート
2009年11月30日(月) 晴れ(低い地吹雪を伴う)
少し風が弱まったので、犬たちのトレーニングに出かける。キナリ、リク、シン、ルッキ、ラッシ、ウヤーの6頭立て。湾の外まで足を延ばしてみた。
今日、コウが発情した。このまま身ごもるとすれば、今シーズンの犬ぞり旅行にはタイミング的に、連れて行けないかもしれないなあ・・。もう一頭のメス犬のラッシは、今度いつ発情してしまうだろう。4月か5月頃ならタイミングがいいのだが・・。今シーズンは深刻な戦力不足だ。メス犬2頭は戦力と考えないとして、もしオス犬が怪我でもして離脱されたらあとがない。頭が痛いところだ。2頭ほど若いオス犬を補強したいのだが、このレゾリュートで、重い荷物を積んだソリを引っ張れる犬が、果たして手に入るのか?なるべく早いうちに補強をするか、しないか結論を出さないと・・。野球やサッカーなどチームを組むスポーツで、事情に合わせて戦力を補強する気持ちがなんとなく分かるなあ。
写真上:月が周囲を照らす。間もなく満月だ!
写真下:今日のワンコ紹介は「シルバー」。今のチームは4シーズン目を迎えるが、このチームを結成した時には、シルバーファミリーの犬たちが半数を占めていたのだが(元の飼い主が同じだった)、ファミリー犬だった、シロ、クロ、クガッが順番に亡くなっていったと共に、やや最近は元気が無くなってきたような気がする。体も大きく馬力もある。今シーズンも頑張ってくださいよ。