山崎哲秀 ー北極圏をテツがゆくー

北極圏の犬ぞり遠征をライフワークにしている山崎 哲秀のブログです。北極圏を犬ぞりで遠征し環境調査を行うアバンナットプロジェクトに取り組んでいます。このブログでは、遠征前は日本での準備や生活の様子、遠征中は、北極圏の様子を紹介します。 アバンナットプロジェクトの詳細は、山崎哲秀のホームページhttp://www.eonet.ne.jp/~avangnaq/ をご覧下さい。山崎哲秀の連絡先は、同ホームページに記載しています。

2010年01月

2010129日(金) 地吹雪 のち 曇り -34.8

20100129_15

今日も天気の回復待ち。

10時を過ぎて郵便局に行ってみると、荷物が幾つか届いていた。一つは日本からの別送荷物「第4便」。今回は犬ゾリ旅行で持っていく食糧関係で、在住の高槻市の地元の方たちからの支援で「パウンドケーキ」が届いた。中川さん、内田さん、石丸さん、ありがとうございました!

あともう一つの荷物は、驚いたことにグリーンランドのシオラパルク村から。現地在住の大島育雄さんから、アザラシの毛皮の手袋と、ムチ用の皮ひもが届いたのだ。ほんとにちょうど欲しいと思っていたところだったのでビックリした。出来が悪いと怒られそうだが、大島さんはじめグリーンランドエスキモーの人たちは、僕の極地活動方法と犬ゾリを教えてくれた師匠だ。

色んな方たちから支えられていることに感謝です。

写真:日本から届いたパウンドケーキ。そしてグリーンランドから届いた手袋とムチ用皮ひも。

2010128日(木) ブリザード -35.8

 昨夜からブリザードとなる。一日中天気は回復せず、外での活動は出来ず。

午後、風が一時的に弱まったのを狙って犬たちに餌をやりに行く。今日から犬たちにラード(動物性の脂)の塊をドックフードと一緒に与えることにした。犬にも体質があるのか、いくら餌を多めにやっても太ってくれない犬がいる。寒さのせいもあるのだろうが、犬ぞり旅行出発までにもう少し太らせてやりたい犬が数頭いる。このラードは、サイレス&サエコ夫妻がモントリオールからわざわざ取り寄せてくれたもの。とりあえずペール缶で20kg×3缶のラードが昨日届いた次第。

写真:今日のワンコはシルバー。年をとってきたせいか、昨シーズンあたりから、ややおとなしくなり心配をしている。今シーズンもなんとか戦力として頑張って欲しいと思っている。身体が大きいだけにソリを曳く重要な戦力。お願いしますよ!

20100128_2 

2010127日(水) 晴れ -22.4

 北海道大学・低温科学研究所 → http://wwwoc.lowtem.hokudai.ac.jp/ から的ちゃんが到着。2週間ほど滞在予定で、レゾリュート周辺で観測活動を共にする予定。的ちゃんとは、お互いにまだ20歳代の頃、北極圏スピッツベルゲン諸島での氷河掘削観測調査に参加させてもらった時に、初めて顔を合わせて以来、旧知の仲だ。その後、グリーンランドでも何度か、犬ゾリで一緒に観測調査をして回ったことがある。今や気安く的ちゃんと呼ぶには、立派な研究者になってしまった。的場先生である。

写真:的ちゃんとグリーンランド内陸域の観測調査を実施した時の様子(1998年)。

20100127

2010126日(火) 晴れ -26.0

20100126  犬たちの紹介2順目を、近況合わせてしていきたいと思う。まずはメス犬の「コウ(光)」から。1歳を過ぎ、12月初めに発情期を迎えたのだが、どうやら御懐妊したのでは!と思われる。あと1週間もすればハッキリすると思うのだが、お腹回りがどんどん大きくなってきた。秋口に母犬ラッシの“誤懐妊”騒動があったので、今回は本当でありますように!コウはこのトレーニング期間、将来のリーダー犬となるように育ててみた。身体がもう一つ大きくなってくれないので、重いソリを引っ張るよりは、オス犬たちをリードしてくれることに期待している。リーダー犬に関しても期待大ですよ!

写真:今日のコウ。

2010125日(月) 曇り -29.9

201001251_4

中島先生が訪問中ということもあり、盛りだくさんの一日。午前中は町にある学校訪問。午後からは犬ゾリで少し走ったあと、気象観測所にも足を運んだ。夜はサイレス&サエコさん宅に伺って、すっかり楽しませてもらった。中島先生は明日の朝一の便でレゾリュートを発ち、今度は北極圏にあるノルウェー領の島、スピッツベルゲンで観測とのことだ。

201001252_3

201001253_2

写真上:町の学校にて。小学校の生徒と音楽を楽しむ。

写真中:犬ゾリで出かける。

写真下:気象観測所にて、観測風景。

2010124日(日) ブリザード -30.4

 昨夜レゾリュート着の定期便で、つくば市にある(独)国立環境研究所・大気圏環境研究領域 → http://www.kankyo.tohoku.ac.jp/renkei/home.html の中島英彰先生が到着。今後の観測の視察のため。26日まで滞在される。

それを見越したように今日の午後、一本の電話が宿舎に入った。なんと南極にある日本のドームふじ基地に滞在中の本山先生からであった。南極は北極と正反対の夏季。明日ドームふじ基地をあとにして、雪上車で1000kmほど離れた昭和基地のある沿岸地帯へ向かうのだという。サプライズであった。

南極観測隊 → http://www.nipr.ac.jp/jare/ 

20100124

2010123日(土) 晴れのち吹雪 -27.9

 滞在中のレゾリュートの前に広がるバロー海峡は、潮の流れが早いせいか冬の間もなかなか氷が安定しない。昨日、狩りに出た猟師が、なんと海氷が流出してスノーモービルごと流されてしまい、いまだにレスキューされずに漂流中とのことを今日になって聞いた。食糧と装備はヘリコプターで投下補給されたらしいが、このあと天気が荒れる予報なので気にかかる。3年前に犬ぞりを流されてしまった自分の事故の悪夢がよみがえった。

写真:120日にバロー海峡沖合いに偵察に行った時の写真。数キロ先は海が開いていると思われる蒸気雲が見える。

20100123_2 

2010122日(金) 雪のち晴れ 一時 地吹雪 -30.0

20100122

日本からの別送装備、第三便が到着。今回は防寒着だ。これは僕の北極計画を支援してくださっている「montbell」→ http://www.montbell.jp/ が特注で製作しくれたもので、昨シーズンから使用しているものを、少し手直しして頂いた。今年に入って冷え込みがきつくなっていたので、心待ちにしていた。さっそく明日からこれを着て活動しよう。

写真:届いた防寒着を着てみる。

2010121日(木) 晴れ(低い地吹雪を伴う) -29.8

20100121_2  僕がグリーンランド北部のシオラパルク村に通い始めた20年ほど前の話。村にはまだ、アガッコ(シャーマン)だというサキウス爺さんがいた。今でこそ北極圏のエスキモーの間にはキリスト教が浸透しているが、もともとは祈祷師のシャーマニズムの世界。お酒を飲んだ爺さんが「アヤーヤ~、ヤ~」と民族の唄を口ずさむ姿が忘れられない。

写真:今は亡き、サキウス爺さんと。僕が23歳の頃。

2010120日(水) 晴れ -30.8

 外での活動時間もだいぶ長くなってきた。今は朝9時頃から薄明るくなり始め、周囲を見渡せるくらいまで明るくなったあと、午後3時頃に暗くなる感じだ。今日は犬たちも4時間ほど20km以上走らせた。沖合いがけっこう乱氷になっていて、ソリの先端部が氷にひっかかった際に外してやったら、犬たちがワッと急に走り始め、危うくソリの下敷きになりかけた。危ない、危ない。少し左足首と膝をひねった。

観測用に凍りたての新しい海氷を探しているのだが、なかなか行き着けず。

写真:今日のトレーニングにて。

20100120

201001191 2010119日(火) 晴れ -36.1

 予防接種をする。といっても僕ではなく犬たちだ。今日は第一弾として狂犬病の予防接種。ちょうど一年が過ぎた。朝10時頃、町の病院に行ってワクチンと注射器を受け取ってきた。ここでは狂犬病の接種は無料となっている。獣医はいないので、僕が犬たちにしてやるのだ。外気に注射針の中が、瞬間的に凍ってしまうので、ワクチンを吸入した注射器を、身体に近いところの内ポケットに入れて暖めながら、サッと取り出して首のところに注射してやる。2月中旬頃には第二弾として、その他伝染病の予防接種をしてやる予定だ。

 連日の冷え込みに、犬たちもエネルギーを消費して、やや痩せ気味。今日は夏の間にサイレス&サエコ夫婦が確保しておいてくれた貴重な肉を、犬たちに与えた。大喜びの犬たちだ。

写真上:狂犬病のワクチン。

写真下:予防接種の風景。

201001192

2010118日(月) 晴れ -41.1

 一日一日と太陽が近づいて来ているのを感じる。このあたりから白夜へとなっていく数ヶ月は、僕が最も北極で好きな季節だ。雪と氷に覆われた、なにもない真っ白な世界だけど、空を色取る色彩が、とにかく多彩で綺麗なのだ。犬ぞりを走らせて、寒さで顔面は凍傷だらけだけど、ホッとさせられる。

 夜の気象観測でこの冬一番の冷え込み、マイナス41.1℃を計測した。ゴッキゲンだぜ~。

写真:今日の空。

20100118

2010115日(金) 雪のち吹雪 -26.1

 夕方までに吹雪へと天候が変わった。視程は数百メートル。気温が幾分高くなりマイナス20℃台となった。

吹雪や地吹雪の日は、くるまって寒さを凌ぐような頼もしい犬たちだ。新しい雪は大歓迎。凍りつく北極の冬に、犬たちはどうやって水分補給をしているかというと、彼らは雪を食べる。容器に水を入れて与えても、あっという間に凍り付いてしまい無駄になってしまうのだけど、ちゃんと自分達で水分補給してくれるのだ。雪が全く積もっていない海氷上には、犬たちのために雪をソリに積み込んで持ち運ぶこともある。

写真:風を凌ぎ眠る犬たち(今日のお昼頃)。

20100115_3

2010114日(木) 晴れ -35.5℃

 AM10時頃から犬ぞりを出す。海氷のデータをとって帰着。同じことの繰り返しで、変化が欲しいところだが、このあとに続くんだと言い聞かせて、もうひと踏ん張りだ。

写真:海氷上で犬たちと。

20100114

2010113日(水) 晴れのち雪

 天気が崩れ始めたので、その他雑用をする日にした。ちょうど、やることが色々あった。

 まずはライフル所持の許可が昨日で切れたので、町の警察に行き再申請。また2ヶ月間の許可をもらう。許可料?カナダ$255月までまとめてくれたらいいのに2ヶ月毎らしい。

 明るい時間帯が長くなってきたので、そろそろ犬ぞりでの活動範囲を広げるのに、最低限の装備を持ち運ぶことにしよう。テントやコンロといった装備のチェック。天気が急変したりした時など何かアクシデントがあった時に、逃げ込めるようにしておくため。コンロのメンテナンスをしたが手間取ってしまった。僕が使っているコンロは20年来、灯油式ものだ。

 また、日本から第2便の別送装備が届いたので、郵便局に行きピックアップしてきた。犬ぞり旅行に持参する通信機器や細かい装備品、食糧など。

写真:北極で使用している灯油式のコンロのメンテナンスをする。

20100113_3

201019日(土) 地吹雪

 昨夜から、恒例の地吹雪となった。

今日は犬たちへの号令のことを書いてみる。号令はすべてグリーンランド北部アバンナッソア地区のエスキモー式だ。グリーンランドの中でも南とはまた、号令が全然違う。カナダではまだ聞いたことがないなあ・・。

基本的なのは下記の通り。

1.止まれ    「アイ、アイ、アイ」

2.動くな    「アウリッチ」

3.伏せ     「アコイッチ」

4.おいで    「アッハ、アッハ、アッハ」(喉から吐き出すように)

5.おいで-2  「アギャッチ」

6.右へ     「アッチョ、アッチョ、アッチョ」

7.左へ     「ハゴ、ハゴ、ハゴ」

8.強く引っ張れ 「ハック、ハック」(坂道など)

9.早く走れ   「ホッポア」(喉で鳴らすように)

10.OK     「テーマ」

11.その調子  「タア、タア、タア」

12.やめろ   「アダゴ」(悪さをした時など)

13.頑張れ   「ナゴナ」

14.静かに   「ハタ、ハタ」

おまけ.     「タックバルッ ファー」(これはかなり汚い言葉です。叱咤する言葉というか・・、号令ではありません(笑))

走行中は何だかしら、犬たちに声をかけ続けてリズムを作ってやる。号令以外にエスキモー語で話しかけたり、日本語で話しかけたり。歌ってやることもある(笑)。

写真:レゾリュートでは数少ない犬ぞり遣いの、デビットじいさんと。

20100109

201018日(金) 晴れ

 珍しく3日続けて晴れの日が続いた。気温も冷たくマイナス30℃以下の日が続いている。風が少し吹けば、冷気が露出した顔の肌にチクチクと突き刺してくる。頬と鼻の凍傷は、治ってまたヤケドしての繰り返し。寒さでする火傷もあるのだ。

 今日も犬たちを走らせてきた。まだ犬ぞりを交通手段に利用している、グリーンランドの猟師たちは、この太陽が昇らない季節は、近場で狩りをして、夏の間に筋力が落ちた犬たちの回復に努める。犬たちのトレーニングという意識はなく、生活とうまく回転しているわけだ。そして太陽が高く昇る季節には、長距離、長期間の狩猟に出かけるようになっていく。僕の場合は、外から来ていて狩猟のライセンス等の問題なんかもあり、狩りに力を入れる訳にはいかず、その分この季節は犬たちを走らせて、体力と筋力を回復させているわけだ。いきなり犬ぞり旅行で重い荷物を曳かせて走らせれば、当然犬たちも倒れてしまう。そういった犬ぞりのサイクルを彼らに教わった。だから数ヶ月のこの準備期間はどうしても必要となってくる。

写真:明るい時間帯が、確実に増えてきている。太陽が待ち遠しい。

20100108

201001071 201017日(木) 晴れ

 町に白熊が現れた!朝の5時過ぎに気象観測に外に出て、犬たちのところに行くと、なんだか変に吼えたり唸ったりするので、放し飼いになってる犬が暗闇の中をウロチョロ近づいて来ているのかな?くらいに思ってそのまま宿舎に戻った。その数時間後、僕の犬たちを繋いでいる場所から50メートルほどしか離れていない場所で白熊が獲れたという。宿舎からも100メートルくらいしか離れていない場所。ライフルを持って駆けつけてみると、すでにイヌイットにより射殺されていた。どうやら犬たちの様子がおかしかったのは、近くに白熊が徘徊していたからのようだ。まだ体長150cmほどの若い白熊だった。

この場に及んで、人里に現れる野性の白熊はやはり射殺するべきだと思う。動物保護という観点からいくと、追い逃がすべき、となるのかもしれないが、白熊が人間を食べる事故は現に起きている。

ひとつ投げかけたいのは、本当に世間で騒がれているように、白熊は絶滅の危機にあるのだろうか?グリーンランドといい、現地に住んでいるエスキモーの人たちの話と、どうも食い違いがあってならないような気がする。ちなみに僕が見る限りでは、白熊はイヌイットにより乱獲はされていないと思う。そして白熊は海氷が無くても、陸で寝ているアザラシやセイウチを狩って食べる方法だって知っている。餌を獲る競争率が激しくなって共食いなんてことも出てくるかもしれないし・・。本当はどっちなのだろう?興味のある問題だ。

 今日は天気も良く、犬たちのトレーニングと海氷観測へ。

写真上:建物の周りに白熊の足跡が続く(赤い矢印)。

写真下:海氷の厚さを測定する風景。

201001072

20100105_2

201015日(火) 吹雪

度々インターネットが不通になってしまう。年末以来ようやく復旧。今日久々にメールを見たら、日本の有佐から写真が届いていた。僕のドックチームの犬たちほど仕事はしないが、愛犬のピエール&タロと、田舎の山口県光市でお正月を過ごしてきたようだ。僕のほうは年末年始、もう6年連続で極地に滞在していて、有佐とはまだ一度も過ごしたことがない状態。いい加減、怒られそう・・?

レゾリュートは年が明けても相変わらずスッキリしない天気の日が多いが、合間をぬって犬たちのトレーニングも続いている。

写真:有佐から届いた写真。元旦にピエール&タロと。

201002_2 201012日(土) 雪時々曇り

 今日から犬ぞりの走り初め。これまで6頭立てでトレーニングしていたのを、8頭に輪を広げて走らせ始めた。

数日前から縫っていた、防寒靴のさらに上に履く防寒靴「マングアッ」完成。

写真:「マングアッ」を履いてみる。デカ過ぎたかなあ・・。

201001011

201011日(金) 吹雪

 カナダ北極圏のレゾリュートも新年を迎えた。「明けましておめでとう」は、エスキモー語で「ウキヨッターミ ピッドアイ」。ウキヨというのが「年」の意味。アッタというのが「また」。ウキヨ アッタを続けて「ウキヨッタ」に聞こえる。ミはここでは「したね」でいいのか。そして「ピッドアイ」は「おめでとう」。全部で「また年を越したね(新しい年がきたね)。おめでとう。」といった感じか。

一年の区切りがあるのはいいことで、新たな気持ちにさせられる。信じ込んでるわけじゃないけど、ようやく厄年(後厄も)から開放された。同級生と会う度に、そんな話題が出ていたので、ちょっとは気にしてた(笑)。からといって無茶は禁物、禁物。

今年の目標として、北極は自分の生きる道だから当然だけど、身体のケアを、せめて日本にいる間くらいは、これまで以上に心がけていきたい。まだまだこれから先、継続して北極でやっていくので(笑)。

 今夜はイヌイット主催の新年会。町の講堂に遊びに行ってきた。

写真上:新年会で生肉を食べるイヌイット。やっぱりこうでなくちゃ!僕もたんまりご馳走になった。

写真下:ゲームを楽しむ人たち。

200101012

20091231 20091231日(木) 晴れ

 ブリザードあとの大晦日の空には、満月が輝いている。2日続いた地吹雪は、今冬季最強。平均15m/s以上で吹き荒れた。そして天気が回復した今夜は、この冬一番の冷え込み、手持ちの温度計でマイナス38.5℃を記録した。まだまだこれから冷え込みがきつくなる。

2009年が終わる。どちらかというと、悪いことはすぐに忘れてしまう性格で、いつも「いい一年だったなあ」と思ってしまう(笑)。

写真:大晦日の月。

↑このページのトップヘ