犬ぞり案内人 山崎哲秀 ー北極圏をテツがゆくー

グリーンランド北西部地方に古来から住む、エスキモー民族から伝承を受けた犬ぞりを操り、“アバンナット北極プロジェクト”に取り組む、山崎 哲秀のブログです。 このブログでは、北極遠征中や日本滞在中の活動の様子を紹介します。 アバンナットプロジェクトの詳細は、山崎哲秀のホームページhttp://www.eonet.ne.jp/~avangnaq/ をご覧下さい。山崎哲秀の連絡先は、同ホームページに記載しています。

2010年12月

20101230日(木) 雪 -25.3

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 今日も雪がチラつく中、犬ぞりを出す。とりあえずこれで、今年は走り納めかな。予定通り年内に、8頭前後での走行トレーニングまで進んだ。年が明けて、明るい時間帯がもう少し長くなったら、十数頭での走行にステップアップして、2月までには全15頭での走行まで持っていく予定だ。ワンコたち、とりあえず年内はお疲れさま!

 今日のワンコ近況は「ウヤー」。ウヤーもアプ同様に、他の強い犬たちに押さえつけられていて、かなりおとなしくしてるけど、今はキャヨットと同じ班で繋ぎとめていて、2頭は仲良くやってます。根はすごく真面目なウヤーです。

写真上:今年最後の走行にて、8頭の犬たち。(ピンボケ写真ですが・・)

写真下:今日の「ウヤー」。ほっぺたの黒ヒゲと眉毛が相変わらず立派だね。

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20101229日(水) 雪 -25.3

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 日本から荷物が2個、立て続けに届いた。一つは有佐の母から、日本食類が一杯詰まった「特別便」。もう一つは有佐から、装備や食糧品類が入った「第2便」。どちらも犬ぞり旅行の時に使用するものだ。ひたすら感謝です。いつもありがとう!

2便の荷物の中には、さらに特別食も入っていた。地元の高槻で応援して頂いてる「SACHIYO」さんが、自家製パウンドケーキを今シーズンも時間をかけて作ってくださった。これもいつも犬ぞり旅行に持参して、移動中の行動食として食べさせてもらってるのだが、ラム酒たっぷりのせいか、氷点下の気温でも凍らないんですよね。カロリーもあって元気がでます。他にも色んなケーキを作っておられます。⇒  http://www.tcn.zaq.ne.jp/pound_cake/kitchen/cake.htm プロの腕前です。SACHIYOさん、いつもありがとうございます!SACHIYOさんのホームページ ⇒ http://www.tcn.zaq.ne.jp/pound_cake/ 

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 今日のワンコ近況は「アプ」。体調は絶好調。トレーニングも頑張っている。でも少し前に、息子と思われるゴードンに、喧嘩で押さえつけられてしまってからは、少しおとなしい。君のいつもの元気な姿を、早く見せてくださいよ~。

写真上と中:届いた「特別便」と「第2便」。パウンドーケーキも入ってました。

写真下:今日の「アプ」。エスキモー語で雪の意味だけど、今日は積もった雪の中でゴロン。

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20101228日(火) 雪 -21.7

 11月下旬に行方不明になった、3匹の仔犬たち。ちょうど今日で1ヶ月が過ぎてしまった。レゾリュートや、周辺域の町々にもポスターを貼り出してもらったりと探し回ったが、情報はなし。ここまで時間が経ってしまうと、もうダメかな・・。納得はできないんだけど、切り替えるしかないか。

昨日、面白い出来事があって、母犬の「コウ」を繋いでいる留め金が、ロープから外れて、仔犬が生まれてからしばらく一緒に過ごしていた、サイレス&サエコ夫妻宅に、ひょこっと現われたらしい。テクテクと歩いて行ったみたいだ。

そのコウの呟き。

「あら、留め金がうまく外れたわ。あの子たちどうしてるか、家(うち)まで行ってみましょう。」

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20101226日(日) ブリザード -15.2

 研究者の的ちゃんから、動画第2弾が届きました。タイトルは「グリーンランド氷床を犬ゾリで進む」 

⇒ http://www.youtube.com/watch?v=uMrxGNPmlAw

これも2000年に的ちゃんとフィールドワーク(観測活動)を共にした時のもの。ひとつタネ明かしをすると、三脚を立てて撮った2人の演技です(笑)。懐かしいな。

写真:動画のひとコマ。2000年グリーンランド内陸氷床にて。

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20101225日(土) 曇り -14.3

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 クリスマスには、サンタクロースの気分で犬ぞりを!というわけではないけれど、天気のいい日の日課、トレーニングに出かけた。今日から産休で休みだったメス犬の「コウ」をチームに復帰させることに。コウのための走行。久々なので足慣らしに、軽く他の4頭の犬たちと走らせた。そのうち体力も戻ってくるだろう。

ここレゾリュートもクリスマスを迎えて、午後3時頃から町の講堂で始まった、クリスマス会の様子を少し見てきた。3シーズン連続でクリスマスをレゾリュートで過ごすことになるが、今日の自分のお気に入りは、発酵させたセイウチの肉「イグナック」。グリーンランドではよく口にする機会があるけど、なかなかカナダで口にすることがなかった。久々の発酵肉によだれが出た。今も手に臭いがこびりついて、石けんで洗ってもプンプンしている状態で、大満足(笑)。近年はこの辺りでは、発酵肉を作る人も食べる人も少なくなってきたそうだ。

写真上:産休を終えて「コウ」がチームに復帰。トレーニングを始めた。手前がコウ。

写真下:町のクリスマス会にて。

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20101224日(金) 雪のち曇り -21.7

 気温がマイナス20℃台に戻ってきた。海氷の状況は、衛星画像で傾向をチェックする。僕の本来のホームベースとなるグリーンランド北西部、アバンナッソア地区の海氷状況もよくチェックしているが、全くいい状態ではない。気持的には早くグリーンランドに戻りたいけど、犬ぞりで海氷上を活動するには、まだまだグリーンランドに戻る時期ではないようだ。リスクがありすぎる。温暖期とはいえ、このカナダ北極圏のレゾリュート周辺域は、これまでの3シーズンの活動で見ても、なんだかんだといえ、ひと冬に150200cmくらいに海氷は発達する。この周辺域で活動しているほうが利口だ。グリーンランド内陸域の氷床で活動するのは、今もこのあとも問題はないだろうが、もうしばらくの間、遠くからグリーンランド海域の様子を見ていよう。そのうち活動しやすくなる時期もやって来るだろう。

20101223日(木) 晴れのち曇り -18.0

 少し前に白熊に遭った地点まで犬ぞりで出かけた。その時は観測データをとらずに戻ってきたのだったが、今日は久々に穏やかな快晴となったので、やっと仕切り直しすることができた。月明かりもまだ残っていて、正午の薄明に加わって、周辺を明るくしてくれた。氷の厚さは90cmほどあった。昨シーズンの同じ時期、同じ周辺の海氷の厚さが60cm110cmと場所によって違いがあったが、今シーズンは薄いのか厚いのか、まだよく分からないなあ。そのうちもう少し明るくなってきたら、さらに沖合いに行ってみよう。

 今日のワンコ近況は「カヌッルンニ」。ラッシ亡きあとは、カヌッルンニがチームで一番食い意地がはったワンコとなった。犬たちの様子を見に行く時と、餌をやりに行く時との違いに、最初に気付くのがカヌッルンニ。餌の時は、かなり遠いところからワンワン、ワンワンと騒ぎ出す。喧嘩はチームで一番弱いくせに、他の犬の餌を横取りしようとして、やられてもやられても、また横取りしようとして、またやられるのがカヌッルンニです。憎めません。

写真:今日のカヌッルンニ。黒目がちで、普段は毛の色に目が隠れて何処にあるか分からないけど、今日はフラッシュの光に反射した目がくっきり。

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20101221日(火) 曇りのち晴れ -8.3

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 ここレゾリュートも冬至を迎えた。極夜も折り返しだ。これからはまた一日一日、明るい時間帯が長くなっていく。気分も乗ってくる。

 深夜AM1230頃から皆既月食が始まったが、空には雲が広がっていた。時々雲越しに月が見えたり見えなくなったり。そしてAM4時頃、またもとの月へと戻った。

その後、空の雲は切れ始め、穏やかな天気になった。10時頃から犬ぞりトレーニングに出かける。4頭の若いデビュー犬たちも、走るパターンをすっかり覚えてきて、手が掛からなくなってきた。

写真上:雲越しに見える月食時の月。

写真下:今日の犬ぞりトレーニングにて。気温が高いので、薄着で出かけた。

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20101220日(月) 晴れのち曇りのち晴れ -10.3

 この数日、暖かい気温が続いている。夕方にはマイナス3.7℃まで跳ね上がった。12月下旬じゃないみたいだ。ちょこっと犬たちと走ると暑く、大汗をかいた。

今夜はこちらでも皆既月食が見れる予定。夜中に起き出してみるつもりだ。

今日のワンコ近況は「ルッキ(ルーク)」。ルッキもすっかりベテランとなり、7歳になる。犬の年齢では老犬になるのだが、このルッキは相変わらず落ち着きがなく、ボス犬ぶりは健在。元気だから見ていて安心といえば安心。チームで一番のヤキモチ焼きで、他の犬たちを触っていると、いつも間に割り込んできて引き離します。チームでは一番スタイルもよく、美男犬かな。

写真:今日の「ルッキ」。両ほっぺたに伸びる毛が、立派ですね。

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20101219日(日) 吹雪、地吹雪 -8.3

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 僕がアマゾン河をイカダで下った1980年代の終わり頃は、アマゾンのジャングルが広大に焼畑されていたことから、地球の酸素が近い将来に無くなる(といったことだったと思うが)、と大々的に報道されていて、それが世界でも一つの環境問題のブームになっていた。その問題は、今どうなったのだろう?その後のことは、すっかり報道では聞かなくなった。そして近年は温暖=CO2、という観点での環境問題が大々的に報じられるが、今それも少しずつブームが終わりかけているような気がする。(報道の露出が一時より下火になってきたから、そう感じるだけだろうか?)。「温暖はこれだ」などというように、大々的に一つの要因のことだけに環境問題が報道されるのは、僕ら一般の人間に周知してくれるという意味ではいいけれど、その問題だけを先行すると、どうも一時のブームで終わってしまって、長続きしないような気がする。温暖問題にしても、ほんとのことは(結論は)、数年、数十年という短い時間では見れないはずだし、人為的な汚染への意識、取り組みは今に始まったことでなく、昔からも当然のことだっだと思う。

何が言いたいかというと、環境問題への取り組みは、まずは意識を持って、「どれ」ということなく(片寄ることなく)、身近なところから自分が出来ることを取り組んでいけばいいと思う。そのほうが一時のブームで終わることなく、行き詰まらないで長続きするような気がする。僕の場合・・・、今の北極での活動は、温暖だけの問題だとは思っていないし、「犬ぞり」という移動手段をたまたま持っていた中で、自分に一つの出来ることとして、次の世代に繋げるという意味でも、長く続けていきたい。

写真:1988年、アマゾン河上空より。

20101217日(金) 地吹雪のち曇り -27.1

 またまた昨夜から地吹雪。夕方頃には一旦落ち着いたが、また荒れそうな予報。天気がいい時悪い時、それぞれの日にやることは、いつも同じ。単調な日々の繰り返しです(笑)。2月中旬頃に出発予定の犬ぞり旅行が待ち遠しい気分。しっかり出来る準備を整えていこう。

 今日のワンコは「シルバー」。年をとってきて、今シーズンは引退させるか、現役続行するかトレーニングを見ながら見極めているところ。レゾリュート近辺を走るだけなら全く問題はないが、長期の犬ぞり旅行に耐えれるかが少し不安。の~んびりした性格で、寝るのが趣味みたい(笑)。時々うまく胴バンドを外して、何処かをうろついて帰ってくることがある。

写真:今日の「シルバー」。いつもはあっちを向いてばかりだが、珍しくカメラ目線。

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20101216日(木) 晴れ -26.0

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 今朝の気圧を測定すると、1055hpaを超えていた。こんな高気圧はなかなか見ないので、気圧計が壊れたのかと思って、もう一つのデジタル気圧計を見るとやはり1056hpa。どんな天気図になってるんだろう?と興味津々で、DMIのページ ⇒ http://www.dmi.dk/dmi/index/gronland.htm を開いて見てみると面白い気圧配置。夜には1060hpaに。

天気も穏やかで、今日は犬ぞりを出すことができた。

今日のワンコ近況は「キナリ」。我がドックチームの優秀なリーダー犬。白熊と格闘をして、瀕死の重傷を負ったのは前に書いたが、12月に入り戦列復帰。リーダー犬がいなくても、犬ぞりを走らせることは出来るが、やっぱりいるといないとでは雲泥の差。だいぶ年をとってきたけど、もうひと頑張り元気で頼みますよ!

写真上左:今日の天気図。

写真上右の上下:上の写真は今日の一番明るい時の実際の明るさで、下のほうは同じ光景を明るくして撮影。犬たちの繋留場所の様子です。

写真下:すっかり元気な、今日の「キナリ」。

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20101215日(水) 吹雪のち雪 -15.5

 研究者で仲のいい的ちゃんから、面白い映像をYoutubeにアップした、という連絡が届いたので紹介します。以前にグリーンランド北部で、観測調査を共にした時の、シオラパルク村での映像です。世界三大珍味、と言われる発酵した水鳥(アッパリアス)「キビヤック」を食べている映像です。

⇒ http://www.youtube.com/watch?v=wAi5_y4OsoA

写真:2000年、的ちゃんとグリーンランド内陸氷床に犬ぞり旅行に出かけ、フィールドワーク(観測活動)を共にした時の写真。

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20101214日(火) 吹雪のち晴れ -22.5

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 吹雪から、夕方には雲がきれて月が顔を出した。天気がよくても悪くても、犬たちの世話は欠かせない。その他の時間帯は、たくさんの事務仕事や、そろそろ犬ぞり旅行の段取りが頭の中をグルグル駆け回っていて、考えてたら夜も眠れない(笑)。

 今日のワンコ近況は「シン」。相変わらず元気いっぱいだけど、2歳を過ぎて少しは落ち着いてきたかな?胴バンドを噛み切る癖は、現在着用中のワイヤー入り特製ハーネスで、継続してしつけ中。少しだけ噛んだ痕があるけど、だいぶよくなってきた感じがする。

写真上:犬たちの見回りにて。

写真下:今日の「シン」。でっかく口が開くなあ。喉の奥まで見えてるよ(笑)。

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20101213日(月) 雪のち晴 -28.0

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 昨日は流れ星を見たことを書いたが、日本の友人からメールがあり「きっと双子座流星群だよ」とのこと。そっか、ラッキーだったな。今夜からこちらはまた吹雪の予報だけど、天気がいい日にじっくり眺めてみようか。

 今日のワンコは「キャヨット」。ウキヨとは兄弟。子供の頃から、人間をすごく恐れていて、この10月から11月にかけては1ヶ月間ほど逃げまとって野良犬をしていたが、捕獲後はなんとか落ち着いてきたみたいだ。そのうちもっと慣れてくるだろう。頭がいいのか??こちらのやることを、よ~く見ていて、覚えるのは4頭の若い犬たちの中では一番早いみたいだ。そんなに怖がらなくいいんですよ、キャヨット君。

写真:今日の「キャヨット」。構えているのがよく分かる(笑)。

20101212日(日) 雪のち晴れ -28.8

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 今日の犬ぞりトレーニングでの出来事。犬たちを誘導するのに「ハゴッ!ハゴッ!(左へ、左へ)」とソリの上から号令をかけながら、ムチで誘導していたら、ムチの跳ね返りが顔面直撃。明るければ軌道を見ながらかわすこともできるのだが、殆ど暗闇で、全く予期していなかった。直撃した時は訳が分からず、目の前にピカッ!と星が散った。ほんとに星のような火花が散って、一瞬明るくなる感じ。痛かったなあ・・。

星が散るといえば、犬ぞりの復路、町に向かって走らせていると、今度は本当に北の空に星が散った!すごく近いところでピカッと光って星が流れた。鮮やかだった。今日は二つの星を見た。今シーズンも縁起がいいぞ~!

夜空には数日前から月が戻ってきた。極夜を幾らか明るく照らしてくれている。

 今日のわんこ近況は「ウキヨ」。冬の12月に生まれたからウキヨ。エスキモー語で冬の意味だ。1歳になり体はすっかり大きくなったが、少し痩せっぽち。もう少し太って欲しいところ。すごく控えめで、おとなしい性格だ。最初の頃は、どちらかというと懐いてくれなかったが、今では自分から近づいてくれるようになりました。

写真上:月が真っ暗な極夜を照らしてくれる。

写真下:今日の「ウキヨ」。耳がピンッと大きいね。

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20101211日(土) 地吹雪 -29.3

 2日ほど天気がなんとか良くて、また数日間は荒れるといった繰り返し。今日もこれでもか、というくらい吹き荒れている。お昼頃に一時的に風が弱まったところで、犬たちに餌をやりに行った。

 

今日のワンコ近況報告は「ゴードン」。昨日のボタンとは兄弟で、ゴードンも生後10ヶ月にして見事に体が立派になった。生まれた時、もともとこの兄弟は大きかったからなあ。もう一回りデカくなると思う。ゴードンはボタンに比べ、かなり勝気な性格みたいで、他の先輩犬たちにも喧嘩を挑んでいく。父親と思われる小柄なアプも(ゴードン&ボタンのほうが体が大きくなってしまった)負かされました・・。君はアプがお父さんだと知ってるかい??ダメよ~、親子は仲良くしなきゃ。今、顔には傷が2つほど。ハクがつきそうな予感・・。

写真:今日の「ゴードン」。

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20101210日(金) 地吹雪 -28.3

 早朝はよかった天気が荒れ始め、高い地吹雪となった。そんな中、町では白熊が徘徊している、と騒動になっている。学校も休校になったりしたそうだ。

白熊のことは何度も書いているが、温暖で海氷が融けていて、餌が獲れないから人里に現れるのではないと思う。絶滅の危機というが、逆に増えすぎて、海で餌を獲る競争率が激しいから人里に来るとも考えられるし、温暖とは切り離して考えたほうがいいと思う。また人里で残飯をあさったり、保管してある動物の肉をあさったりするのも、もしかしたらそれに慣れてしまって、自分でアザラシなどといった獲物を獲る方法を知らないとも考えられる。もともとの白熊は、海氷がなくても、獲物を獲る方法も知っているし、思っている以上にかなり図太い生命力の持ち主だ。それとも近代の白熊が、海氷がなければ獲物を獲ることが出来なくなってしまったというのか?あくまでもこちらで活動する中で、白熊を見ていて個人的に感じることですが・・。アニメで(たしか、風の谷のナウシカ?)、「お前たちは森に帰りなさい。」といったシーンがあったような気がするが、白熊にも「お前たちは北極海に帰りなさい。人里はお前たちが住む場所ではないのだよ。」と声をかけたくなる。

 今日のワンコ近況は「ボタン」。今年の2月に生まれたコウの子供だが、体は他のベテラン犬たちとも見劣りしないくらい、すっかり立派だ。まだ若すぎて、元気がありすぎるくらいだが、今のところ喧嘩はあまり好まないようで、優しい性格みたいだ。名前の由来となった、おしりの丸いボタン模様のブチは、今もくっきりです。

写真:今日の「ボタン」。地吹雪に丸まって・・・。

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2010128日(水)アイスクリスタル(細氷)(上空は晴れ) -34.6

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下界は霧がかかったように視程が数キロメートル。地上の雪を巻き上げるほどの風は無く、上空は雲もなく晴れなのに雪のような細かい氷が舞っている。たぶん太陽が出ていると、この細氷に太陽が反射してキラキラと光る、ダイヤモンドダストが見られるのだと思う。「細氷」と「氷霧」のどっちで言えばいいのだろう?気温はマイナス35℃くらいまで連日冷え込んでいる。

 2順目のワンコ紹介(近況の紹介)。まずはチーム紅一点の「コウ」。アユ、ムク、アノウィの仔犬たちが行方不明になったのは、ブログに書いた通りで、今も町中を探したりするのだが、仔犬たちの名前を大きな声を出して呼んでいると、コウが聞きつけて大騒ぎを始める。やりきれん・・・。「コウ、お前は現場を見てたでしょ?何があったんよ??」人間の言葉を話してくれたらなあ・・。

写真上:霧がかかったように数キロメートルほどの視程しかない。フラッシュで写真を撮ると細かな氷が舞っている。

写真下:今日の「コウ」。

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2010126日(月) 晴れ -32.4

昨日は雪が降り、日曜日のせいか町も静まり返っていたが、犬ぞりトレーニングに出かけた。そして今日は快晴で、また犬ぞりを出してきた。今シーズンのレゾリュート周辺の海氷の様子が分かり始めて、行動範囲も少しずつ広がってきているが、一日中暗く活動はやりづらい。冬至が過ぎるまでは、もっと暗くなる。今は月明かりも頼りにできない周期だ。適当な沖合い地点で犬ぞりを止めて、観測をやろうと準備をしていると、北の方角の暗闇に向かって犬たちが唸り、騒ぎ始めた。よーく眼を凝らすと、薄暗い中に白い大きな物体が、すぐそこまで接近しているのが確認できた。躊躇なくライフルで威嚇発砲。素直に逃げてくれたみたいだ。周辺を白熊がうろちょろしているのが分かっては、集中できない。天気がよくもったいなかったが、無理せず今日の観測は取りやめにして、町へ戻ってきた。また次回、また次回!

2010124日(土) 晴れのち地吹雪のち晴れ -31.7

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 昨日は地吹雪が、一日続いた。今朝は小康状態になったと思ったら、しばらくしてまた高く雪を巻き上げる地吹雪となった。

 そうそう、日本の有佐から、第一便の別送荷物が届いた。主に装備&犬ぞり旅行で使う乾燥食品類。箱には少し早いけどクリスマスの切手が一面に貼り付けられていた。こんな切手もあるんだね。感謝!

 今日のわんこ紹介は「リク(陸)」。4年前、グリーンランドで生まれてから育てたリクは、いまだに甘えん坊で、少し人見知りをするみたいだ。決まって両前脚を俺の体の胸あたりまで上げて抱きついてくる。いつもダンスを一緒に踊ってやります。

写真上:日本から届いた別送荷物、第一便。クリスマス切手が一面に。

写真下:「リク」。

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2010122日(木) 雪のち晴れ -27.2

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 今日から犬ぞりトレーニングはステップ2に入った。犬たちを7頭に増やして走らす。リーダー犬「キナリ」も療養を終えて加入。今シーズンがデビューの、若い犬2頭(ウキヨ&ゴードン)は、まだ号令や誘導のパターンが分からず、すんなりとはいかないが、そのうち覚えるだろう。悪天候の日が多いから、天気の穏やかな日は、貴重な野外活動の時間だ。海氷データも収集してきた。今日の地点は、厚さが約125cm

 仔犬たちの捜索は進展なし。

 今日のワンコ紹介は「アプ」。昨日のウヤーとは兄弟。まもなく5歳になる。アプの人懐っこさは、カヌッルンニ並み。得意技はウルトラマンのように飛んで、顔を舐めて(頭突いて??)くること。それにしても勢いが強すぎて、顔が痛いですゼ、アプ君。

写真上:7頭での走行にステップアップ。正午を回ったというのに、この暗さ。

写真下:飛んでくる「アプ」。

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2010121日(水) 雪一時曇り -18.3

 気がついたら、もう12月。日本でいうと師走だなあ。11月は比較的に暖かい日が多く、天候があまり安定していなかった。12月はもっと厳しい寒さになってくれるだろうか?

朝のうちは雪で視程がよくなかったが、次第に止んでいった。薄明るくなったAM10時半頃、犬ぞりを出す。4頭ずつを一組に始めた走行トレーニングも、今日でその2順目が終わった。12月はステップアップさせて、78頭での走行にし、チームを少しずつまとめていく。10月に白熊と格闘し、重傷だったリーダー犬のキナリも、そろそろ戦列復帰してもよさそうだ。キャヨットもトレーニングに加えよう。3班に分けて繋いでいたが、戦列に加わる2頭たちを入れて、4班に編成し直した。コウはもうしばらく産休だ。

 今日のワンコ紹介は「ウヤー」。チームでは兄弟犬のアプと共に体が小さい。気はすごく強いのだが、どうしても体格がいい、他の犬たちに押さえ込まれてしまう。今は少ししょげかえっておとなしくしているが、走行中はサボらないタイプ。今シーズンも頑張ってくれるはず。

写真:「ウヤー」。

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20101130日(火) 吹雪のち雪 -17.6

 仔犬たちの情報はなし。気持ちを切り替えていこう。

レゾリュート近辺地域の町にも、警察から情報提供を呼びかけてもらった。考えられる一つのケースとして、お願いした次第。これでひと通り手を打った感じ。でも警察にこういった形でお願いするのは、こちらの人たちを疑ってることになるから、心苦しい。ひょこっと町の家の軒下からでも、そのうち出てきてくれればいいのだけど。

 明日は天気も回復しそうだ。また犬ぞりレッスンと観測データ収集に取り掛かりたいと思う。

 今日のワンコ紹介は「カヌッルンニ」。そろそろ5歳になる。相変わらず喧嘩は弱いが、今シーズンは立ち向かう姿勢を持つようになった。強いといえないけど(笑)、くよくよせず、メチャクチャ明るく元気なのがカヌッルンニです。

写真:「カヌッルンニ」。

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