2011年12月
「カヌッルンニ」
2011年12月30日(金) 晴れ -36.5℃
どうやら今日は、この冬の最低気温を更新したみたいだ。今日も犬たちを走らせたが、犬たちは走ったら暑いみたいで、止まった時に体を雪面に擦り付けて冷やす仕草。羨ましいね(笑)。明日はもしかしたら強風になるかもしれない予報。今日が今年の走り納め? 今日はワンコ紹介「カヌッルンニ」。5年前はあんなに幼かった「カヌッルンニ」も、すっかりベテランそり曳き犬。今シーズンも調子は良さそう。サボることもないから全然手がかからず。 写真上:「カヌッルンニ」。黒目がちで、黒い毛に目が同化してしまうけど、フラッシュをたいたら、目が光って何処にあるか分かるね。 写真下:今日の犬ぞりトレーニングにて。数日前から月が空に戻ってきた。
Country
2011年12月29日(木) 雪 -29.3℃
2004~2005年は南極観測隊で南極、そのあと2006年からはずっと北極で年末年始を迎えているが、年末年始というのはどうも、もの寂しい感覚が付きまとってしまっている。身近な人といるイメージがあるが、ここレゾリュートにもポツンと単身でいると、いくらワンコたちがいるといっても、なんだか周りから浮いてしまう。暗くなってしまうな・・。太陽が出ない極夜にも、追い討ちをかけられているのだろうか。
Keith Jarrettの「County」という20年来好きな、僕のテーマソングがあって、このメロディを聴くと「ジ~ン」としてしまう。この曲の「Country」は、祖国、望郷のことを奏でているのだろうか?日本は僕にとって、かけがえのない故郷だ。
写真:「Country」の入ったアルバムのジャケット。
ご対面
日本より
レゾリュートもクリスマス
「ルータ」&「ルーク」
2011年12月24日(土) 雪のち晴れ -32.3℃
新しい仲間、兄弟犬を譲ってくれたのは、レゾリュート在住のエスキモー、バディ&デビー夫婦。カナダ・エスキモー民族の間では、スノーモービルが主流になり、誰も犬ぞりを移動手段には利用していないのだが、犬だけは保持しているエスキモーの人がレゾリュートでも何人かいる。犬ぞりを走らせることが「プライド」ではなく、チームを持っていることが「ブランド」となってしまったのだが、僕のように犬を必要としている者にも、なかなか譲ってはくれないのだ。幸いなことに10月中旬に産まれたオスの兄弟犬を、今回はバディ&デビー夫妻が譲ってくれることになったのだった(ちと値が張ってしまったが・・(笑))。またメス犬が生まれた時には、譲ってくれる約束をした。 この兄弟犬は10月18日生まれとのことで、2ヶ月を過ぎ母犬からの離れたところで、丁度いいタイミングだった。とんでもない雑種だったらどうしよう、と思っていたが(笑)、ひと目見て、「あっ、譲ってもらいたい!」と思ったほど、ソリ曳き犬の風貌を備えていた。成犬は今のカナダ北極では、殆どソリを引いて走ったことがないだろうから、体力を向上するにはすでに難しく、チームに入っても他の先鋭犬たちに着いて来れないと思われるが、仔犬からなら育てあげることができる。名前はすでに付いていて「ルーク」&「ルータ」だ。 写真:左が「ルータ」。右が「ルーク」。見分け方は、ルークは額から鼻にかけて白い毛が筋となっている。
展開
2011年12月23日(金) 雪 -27.8℃
何かが一つ動いた時の展開は、どんどんと進んでいくものだ。いや、進めていかなければならない。 「キナリ」亡きあと、早急な次の手を打たなければならなかった。これは昨年の12月に3匹の子犬の盗難に遭ったことが、ずっと響いてしまっているのだが、チームに現在一頭しかいないメス犬の「コウ」から、その後2回連続で子犬が産まれず、今後のチーム存続を脅かされていて、気が休まらなかった。そんな矢先の「キナリ」の離脱は、さらに危機感を抱かされることになり、すぐに僕を動かさせた。犬ぞりが生活移動手段のグリーンランド・エスキモーの友人たちのところへ、ひょいとツインオッター機をチャーターして飛んでいけば、分けはないのだけど、そんな予算の余裕はない。なんとかレゾリュート、あるいはこの周辺の町で犬を手に入れて、チームの維持を考えておく必要があった。 今日、生後2ヶ月の兄弟犬が僕のところへやって来た。 写真:生後2ヶ月の兄弟犬。
「ボタン」
2011年12月22日(木) 雪のち晴れ -30.1℃
次期リーダー犬に養成中なのが、若き「ボタン」だ。けっこう筋がよさそうで、今シーズンみっちりとキナリの横に付けて走らせ、学ばせたかったのだが、その途中段階だった。このあと「ボタン」をリーダー犬として厳しく育ててみたいと思っている。リーダー犬のまずの条件としては、他の犬たちと一緒に走った時に、一人でも堂々とみんなより前に出て走れること。殆どの犬は臆して、みんなと同じ後ろに下がってしまう。あと、そこそこケンカにも強いこと。また当然ながら、僕のエスキモー語の号令を聞き分けること。一番ものになりそうなのが「ボタン」。頼むよ!! さて今日12月22日は冬至。ようやく極夜も折り返し。あとは南の空が日に日に明るくなっていく! 写真上:「ボタン」。2歳ながら体はチームでも大きく、寡黙なタイプ。 写真下:キナリを沖合いの海氷上の雪下に埋葬。夏になれば海に帰っていくはず。さよならキナリ。
「キナリ」へ
2011年12月21日(水) 雪 -26.7℃
夏が過ぎて10月に再会したとき、随分と急に歳をとってしまったなあ、という印象を受けました。この冬も一緒に走り始めてから、これまで年老いて去って逝った犬たちと同様、なんとなく予感めいたものはあったけど、「キナリは特別だ。強いからもう1シーズン大丈夫だ」、と思ってた。というより信じようと自分に言い聞かせていたんだ。間違いなくお前は、これまでのワンコたちの中で最も優秀なソリ曳き犬、リーダー犬でした。もう少し一緒に走りたかった。出来たなら引退後は日本に連れて帰りたかった。最後は僕の手の中で去って逝ったのは救いでした。これまで他の犬たちをリードしてくれてありがとう。非情ではなく、また明日からチームのみんなと走り始めるよ。まだ先に行かないといけないからね。
※「キナリ」はこれまで飼った犬たちの中でも、かなり想い入れの強い犬だった。
リーダー犬「キナリ」逝く
oil(脂)
2011年12月19日(月) 地吹雪のち雪 -32.0℃
この数日は、また冷え込みが強くなってきた。去年の12月は暖かかったが、今年は断然と寒い。マイナス30℃台の気温で強い地吹雪に吹かれると、人間はかなり寒さが体に沁みるけど、エスキモー犬たちも毛皮をまとっていくら寒さに強いとはいえ、やはりエネルギーの消費は激しいはずだ。やみくもに走らせてばかりいても、どんどん痩せていってしまうので、このあたりのコンディションを保ってやるのは大変で、ドックフードに固形のラードやらオイルを加えて与えてやる。本来ならエスキモー猟師のように、アザラシなど動物の肉+その脂肪を与えるのが理想的なんだろうなあ。いい猟師の犬は丸々太っていて、そうでない猟師の場合はガリガリに犬が痩せ細っていてと両極端だ。僕の場合は、規則も合わせて狩りをするのもそう簡単ではない。ドックフードを確保しておいたほうが無難だ。
グリーンランド・シオラパルク村のエスキモーの人たちからは、ドックフード中心の場合は、動物の脂肪や油も混ぜてやれ、と教えてもらっている。今使っているドックフードは、高カロリーの極地犬仕様のものだが、これでも厳冬期ではエネルギーが少ないくらいなのだろう、キリがないくらいよく食べる。
写真:ドックフードに油を混ぜてやる。
「キャヨット」
2011年12月17日(土) 地吹雪のち晴れのち吹雪 -25.3℃
レゾリュート入りしてからちょうど2ヶ月。大好きなお酒も、北極では禁酒。すっかりアルコールも抜けて、清い身体になっている(笑)。極夜も間もなく冬至を過ぎれば折り返しだ。心境的にはお正月よりも「早く来い、来い、太陽さん♪」
天気のいい日は犬たちを走らせて、悪い時は屋内で仕事。そんな繰り返しでブログのネタにも困ってしまうが、苦しい時の犬頼み・・。ということで、ワンコ近況報告の二巡目を始めよう。1ヶ月半を走らせてみて、だいぶ今シーズンの犬たちのコンディションが分かってきた。
今日は「キャヨット」。夏の間逃げまとって、野良犬だった「キャヨット」君も、10月末に捕獲してからは大人しくしていて、立派にソリ曳き犬をしている。「もう逃がさへんで!」少し体格は小さいが体力はありそう。
写真上:今日の「キャヨット」。常にこっちの動きを見ていて、目を離さない。やっぱり警戒心が強いのかな。
写真下:今日のお昼前。月は半月、南の空は少しオレンジ色に。
荷物
full moon
「ウキヨ」
2011年12月6日(火) ブリザード -19.6℃
ワンコ近況報告の一巡目、最後は「ウキヨ」。キャヨットの兄弟で、こちらはすっかり懐いていてフレンドリーだ。脚がやたらと長く、また体もスラッと細く長身で(これってもしかしてモデル系?!)、ソリ曳き犬らしからぬ体型をしている。もう少し太ってくれれば・・。メス犬のコウが、何故か「ウキヨ」を目の仇にしていて、しょっちゅう噛みつかれているけど、やり返したりしない優しい「ウキヨ」です。オス犬に対してはちゃんと反撃するのにね。基本的(当然?)にオス犬たちは、メス犬には暴力を振るったりしないんだけど、たまには軽くガブッと反撃していいよ。 写真:まだ2歳。あどけない表情の「ウキヨ」。
ブリザード警報
50/50
2011年12月4日(日) 晴れ -34.7℃
この間は、これでもか!というくらいに4、5日連続で吹き荒れたと思ったら、それを取り返すように、珍しく4日も続けて快晴が続いた。天候も、いい時悪い時っていうのは50/50(フィフティーフィフティー)なのかもしれないな。生きることもおんなじかもしれない。いい時も悪い時もあって、どちらかというと、いい事のほうが少ないかもしれないけど、たまにいい時があるから、それだけが記憶に残って楽しんだろうな。だから北極も25年続いてるのかも。北極活動も、たいしたことはやってないんだけど、失敗したことはあったかなあ?・・ないと思う(笑)。もともと悪いことは(イヤなことも)、殆ど思い出せない(すぐ忘れてしまう)都合のいい性格です。
写真:今日も快晴!
2012年カレンダー販売のお知らせ
2011年12月3日(土) 晴れ -29.7℃
「アバンナット」2012年カレンダー 販売のお知らせ 「アバンナット」2012年カレンダーを販売しています。壁掛けタイプ、中綴じ冊子カレンダー(見開きでA3サイズ、297mm×420mm)です。1~12月の12枚の写真は北極の自然を背景に、犬ぞりや犬たちの表情が中心となっています。1部・\1000(送料込み)で販売しています。ご希望の方は、発送先と数量をお知らせ下さい。支払い方法は、発送に合わせて案内を同封致します。 カレンダーのお問い合わせ、お申込み アバンナットプロジェクト事務局 山崎哲秀もしくは山崎有佐まで。 E-mail : avangnaq@gaia.eonet.ne.jp カレンダーの売り上げにおいては、「犬ぞりによる北極圏環境調査(アバンナットプロジェクト)」の活動費の一部として使用させて頂きます。応援して下さっている皆さまには、活動報告として、北極通信「北極圏をテツが行く」を送付しております。また、これらの支援金につきましては使途を明確にし、シーズン終了後に収支報告をしています。どうぞよろしくご支援をお願い致します。
made in Japan
2011年12月2日(金) 晴れ -31.0℃
ずっと愛用している「靴下」がある。知人の小さな会社が販売している靴下 → http://hus-jp.com/goods_guide.html ((株)ハス)で、以前から北極での野外活動時に愛用している装備品の一つだ。だけどこの靴下も、採算が合わず、売り切り終了という形になってしまったのだが、日本の「もの作り」が、どんどん片隅に追いやられていくのは寂しい限りだ。残念な気がしてならない。やっぱり日本製は丁寧に作っているなあ、というのが個人的な実感としてある。
また、安定電力問題も追い討ちがかかって、今後どんどん産業、生産なんかは海外に移行して「made in Japan」が無くなっていきそうな気配だし、日本はどうなっていくのだろうか。
写真:愛用の「HUS」ソックス。