犬ぞり案内人 山崎哲秀 ー北極圏をテツがゆくー

グリーンランド北西部地方に古来から住む、エスキモー民族から伝承を受けた犬ぞりを操り、“アバンナット北極プロジェクト”に取り組む、山崎 哲秀のブログです。 このブログでは、北極遠征中や日本滞在中の活動の様子を紹介します。 アバンナットプロジェクトの詳細は、山崎哲秀のホームページhttp://www.eonet.ne.jp/~avangnaq/ をご覧下さい。山崎哲秀の連絡先は、同ホームページに記載しています。

2012年01月

2012130日(月) 曇りのち晴れ -34.8

20120130 午前中、食糧や装備などの準備時間。午後は仔犬のルータ&ルークのレッスンの時間。走る度に、どんどん足取りがよくなってくる。

写真:今日のお昼の南の空。手前には自転車がゴロン。子供が遊びの途中で置いていったのかな?

2012129日(日) 晴れ -34.6

201201291 11頭の犬達と走る。2頭はお休み。だいぶ今シーズンのチームらしくなってきた。

写真:11頭の犬達と。

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2012128日(土) 雪 -17.4

201201281 生後3ヶ月を過ぎた仔犬「ルータ」&「ルーク」兄弟のレッスンは続く。チームの他の犬たちも万遍なく走らせてやらないといけないから、そればかりに犬ぞりトレーニングの時間を使ってられないので、今日みたいな視程の悪い雪の日なんかは、「ルータ」&「ルーク」のレッスンに時間を充てている。

イエローナイフから来たカナディアンエスキモー犬「ケガッ」と「パミウリ」は、何とかチームに入って走れるようになってきた。ただこの2頭はどうしたわけか、顔を合わせると取っ組み合いの大喧嘩を始める。メス犬がこんな喧嘩をするところは見たことがないんだけどなあ・・。オス犬同士の迫力ある喧嘩とはまた違った、執念じみた凄まじい取っ組み合いなのだ。どうも仕掛け犬は「パミウリ」のようで、何だか凄くヤキモチ焼きの性格なのか?「ケガッ」が可愛がられるのに嫉妬しているように見える。それに応戦するのが「ケガッ」だ。犬ぞりで走行中も、他の犬達はどんどんソリを引っ張って走って行くのに、この2頭はお互いに噛み付きあって、ズルズルとみんなに引きずられながらも離そうとしない。雪面には犬達の走った足跡ならぬ、引きずられた跡が残る。恐ろしい・・。こんなの初めて見るよ。別々に走る時は何ともないんだけどなあ。

今日は「ルータ」と「ルーク」を連れ出した。ここのところフリーにしてやると、とんでもないところに2匹で離れて行ってしまうので、もうフリーには出来なくなってきて、ソリの横に繋いだりしているのだが、今日は初めて5頭の成犬たちと一緒に繋いでみた。スピードにはついてこれないだろうから、ソリのランナーにブレーキをかけ、速度が出ないようにしておく。往復1112kmのコースだったが、往路は2匹とも頑張った。復路まずは「ルーク」がへばって、ソリに乗せてやる。「ルータ」は完走出来そうだったが、無理はさせずに復路の半分くらいでソリに乗せてやる。ソリは曳かなくてもいいんだけど、犬ぞり旅行に間に合うかな??

写真上:「ルータ」&「ルーク」(右の2匹)のレッスン。初めてソリを曳く。

写真下:復路、ソリに乗る「ルータ」&「ルーク」。

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2012127(金) 吹雪のち雪 -20.8

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暖かい日だった。いつもワンコたちの話題ばかりなので、たまには感じてることも書いてみよう。

今はカナダ北極圏で活動をしているが、僕のホームグラウンドであるグリーンランド・アバンナッソア地域の中心、カナックの町には、エスキモーの爺さん婆さんのための老人ホームがある。恐らく世界最北の老人ホームだと思うけど、立派な施設だ。カナックの町の中では僕が一番好きな場所。これはデンマークの福祉国家という要素か取り入れられてるのだろうな(グリーンランドはデンマークの自治国)。必ずしもエスキモー民族と、民族を取り巻く国との関係の全てが気まずいわけではないと思う。

グリーンランドにエスキモー文化が根強く残っているのは、デンマークが過度な異文化の押し付けや保護をしなかったからだと思う。意識してそうしたのか、たまたまそうだったのかは分からないけど、急激な文化の衰退にはならなかった。それがカナダ北極(アラスカも?)を見てみると、異文化の強要と過度な保護で、与えるものは無償で与え続けるなど、彼らの文化をぶっ壊してしまったような気がする。領土・資源などなどが絡んだ政治的な意味合いが大きいような気がするけど、住んでいる民族を取り込む必要があった(んだと思う)。デンマークとグリーンランドの関係が全て円満というわけではないけど、グリーンランドは時間の流れが北極の他の地域に比べると緩やかで、彼らの文化が根強く残ってる。専業猟師の人たちも、毛皮などを政府が買い取ってくれたりや、南部では漁業なんかも盛んで現金収入のつてが、かろうじてあるのだけど、カナダ北極辺りは毛皮を市場から締め出してしまったりとか(動物保護という建前か?25年ほど見てきた中では、エスキモー民族がする狩猟に乱獲という言葉は当てはまらない)、エスキモーの人たちが専業猟師で生きていくあてが無くなってしまっている。与えられることに甘んじて何もしなくなってしまうケースもあるようだが、少なからずとも生活に、与えられるもの以外にも現金収入が必要な時代になってしまったから、そりゃ文化も潰れてしまう。みんな給料が貰える仕事に流れてしまうから。北極を取り巻く国が意図的にそうしてるのかなあ?なんて思ってしまう。少しは伝統を継承しながら生きれる道を残してあげるのも、関わっている国の役割のような気がする。

民族は無償で何もかも与えられたら、これまで自分達が営んできた生活の中の、伝統や文化が手から離れ壊れて行くことは、その時は分からない。失って初めて「Native Proud」というような意識や運動が出てきたりと、気付かされるんだ。「エスキモー」という呼称も、彼らと接していて僕が感じるところ、今もほんとは差別語でもなんでもない。彼ら民族に対して、どういう気持ちで接しているかの話だ。彼らがそれを感じ始めた時、気付いた時に生まれた、ある人たちへの反感だったのだと思う。

でも、一度便利な生活を手に入れたら、なかなか元には戻れないよなあ・・。それは北極だけでなく・・。いつかエスキモー民族が、本当の意味で自分達の住んでいる土地を統治できる時代が訪れますように。

写真上:今は亡きウーリ爺さん夫妻。グリーンランド、アバンナッソア地方にて(20年ほど前)。

写真下:冬支度。越冬用に獲られ陸揚げされたセイウチの肉。グリーンランド、シオラパルク村にて(200610月)。

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2012126日(木) 晴れのち雪 -27.7

20120126 明るくなってきた。太陽が戻るまで、あと10日ちょっと。今日は9頭の犬達と、1125日以来のMartyr岬まで様子を見に行ってきた。

写真:正午頃、Martyr岬を回りこんで海氷上にて。

2012122日(月) 晴れ -37.1

20120123 「コウ」の発情期が始った。

ということで今日のワンコ紹介は「コウ」。ここ数日、オス犬どもが「コウ」を取り巻いて何だかソワソワしてるなあ、そろそろかと思っていたら、やはり発情期を迎えた。周期も予定通りといえば予定通りだが、これで犬ぞり旅行には連れて行けなくなるなあ。さらに手薄になる。リーダー犬も兼ねていて、まだ不慣れな若きリーダー犬、ボタン(ボタンはコウが生んだ子供)に教えるには、キナリ亡きあとでちょうどいい感じだったのだが・・。仕方ない。受け入れてやろう。喜んでやらないといけないね。昨夜、準備を整えてやり、今回は相性のよさそうな「アプ」と繋いでやる。この1年間、2回続けてうまくいかなかったので、今度はと期待したいところだ。

レースの世界では、ソリ曳き犬を避妊・去勢処理をすることが多いそうだが、それに関しては自分はしたくない。イエローナイフから来たケガッとパミウリの2頭はどうなんだろう?処理されていないことを願う。エスキモーソリ曳き犬は、エスキモーの伝統の通り、あくまでも自然でいさせてやりたい。

そうそう、グリーンランド・アバンナッソア地域では発情期のことを「ヌリヤット」と言っている。「ヌリ」というのは「お嫁さん」のことで、これに「・・ヤット」という未来形が入って「お嫁さんになる」といったところか。いい表現法だな。ちなみにもう一つ。犬とは関係ないが、鮫(サメ)のことを「イカルッホア」と言って、エイのことを「イカルッホアヌリ(鮫のお嫁さん)」と言う(笑)。

写真上:お嫁さんになった幸せそうな(我を忘れてる?)「コウ」。みんな次から次へと、何かと世話がやけますなあ。

写真下:今日の活動。

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2012121日(日) 晴れ(地吹雪を伴う) -29.7

20120122 午前中は風が強く地吹雪が舞っていたが、午後あたりから少し弱まったので、時間がもったいないので、今日も仔犬2匹のレッスンをした。明日からはまた、予防接種後のチームのトレーニングを再開する予定。

 今日はワンコ紹介で「ゴードン」。胴バンドをグチャグチャに噛み切る癖は、この3ヶ月ほどでだいぶ改善してきたみたいだ。体格はチームでも大型。昨シーズンは途中で計画を中断したこともあり、長期間の旅行はしてないが、体力は問題ないだろう。ボタンと共に最年少だったけど、ルータ&ルークの後輩犬が走り始めたからね。かっこいいとこ、見せてやって下さいよ。

写真:幾らか落ち着きも出てきた?「ゴードン」。

2012121日(土) 地吹雪のち晴れ -30.5

20120121 犬ぞり旅行用の食糧の準備も始めた。乾燥食品などは昨シーズンの残ったものを有効利用して、足りないものは新たに購入することにする。だいぶ節約できそう。

 犬達は予防接種後なので休ませてやろうとしたのだが、やたらとテンションが高く騒がしい。特に仔犬の「ルーク&ルータ」が繋ぎとめている犬小屋のところで、取っ組み合いのお騒ぎ。よ~し、分かった。体力が有り余ってるんだね。少しだけレッスンしよう。成犬のルッキ、カヌッルンニ、コウにお付き合いしてもらい、最初のレッスン。僕が3頭のワンコたちを誘導して歩いて行くのに「ルーク&ルータ」をフリーでついて来させる。ついて来るようなら、しめたもの。最初としては手が掛からない。このケースだとたいていの仔犬は、犬ぞりを走らせると、一緒についてくる。仔犬から育てた際の利点といったところか。「ルーク&ルータ」は、しばらくこれの繰り返し。犬ぞり旅行にもフリーの状態で同行する予定です。

写真:ちょうど生後3ヶ月を過ぎた「ルータ&ルーク」。今日からレッスンの開始。フリーで3頭の成犬たちと走る。

2012120日(金) 晴れ -32.1

201201201_2 犬達の5種予防接種ワクチンが、ようやく届いた。年末年始が入ってしまったのは仕方がなかったが、届くまでに3週間ほどかかってしまった。まずは真っ先に仔犬の「ルータ」&「ルーク」に。生後の接種予定をとうに過ぎてしまって、キナリとウキヨが立て続けに亡くなったこともあり、念のためしばらく他の犬達に近づけないように隔離状態でハラハラしていた。3ヶ月が経ったので、数日休ませたら、成犬と共にさっそく犬ぞりレッスンに取り掛かろう。成犬たちもとり合えず予防接種を済ませた。

写真上:今日の「ルータ」&「ルーク」。

写真下:今日の南の空。

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2012119日(木) 晴れのち曇り(地吹雪を伴う) -31.0

201201192 昨日の定期便で、日本の有佐の御両親から、食糧の差し入れが届いた。毎シーズン送ってくれるのだが、北極をほっつき歩いているだけで、もう頭が上らないのに、さらに上りません。いつも感謝です。犬ぞり旅行にも持参しますね。

写真:届いた食糧。梅干にラッキョに栗の甘煮・・。こ、これっていいんだろうか(笑)。

2012118日(水) 雪 -27.5

201201189 イエローナイフから来たワンコたちのレッスンは続いている。今日から明日にかけて風が吹き荒れる予報なので、天気が荒れないうちにAM8時半頃から早々に始める。このあとの流れがあるので、外で動ける時間を無駄に出来ないといったところ。今日で3日目。初日はそれぞれ全3頭の犬でレッスン。強制的にでも前に走らせること。2日目はそれぞれ全4頭の犬でレッスン。前に走ること。今日は67頭の中に混ざって走行レッスン。それぞれ別の班に加えて走らせる。一度走って町に戻り、もう一班をそのあと走らせるという感じ。手間はかかるけど、なんとかチームに加われるように。このあたりまでが基本かな。前を向いて走ってくれたら、あとはなんとかまとめられる。しばらく繰り返してたらパターンを覚えてくれるはず。エスキモー型の扇状スタイルにも慣れてもらわないと。2月に入ったら全頭で走り始めるからね。

君たちにエスキモー語の名前をあげよう。まずは「アスペン」君。君は鼻が特徴的で魅力的ですな。君に「ケガッ」という名前を授けます。「ケガッ」はエスキモー語で「鼻」の意味。そして「ロンディ」君。君は尻尾が美しく魅力的ですな。君には「パミウリ」という名前をあげよう。「パミウリ」はエスキモー語で「尻尾」の意味。アスペンとロンディはとっさに名前が出てこないんだ・・。あとは長期間走れる体力をつけることと、もっとエスキモー犬らしく、一杯食べてくださいな。まだ運動が足りてないせいか、全然他の犬達に比べたら食が細すぎる。仔犬の「ルータ」&「ルーク」より今のところ食べないくらいだ。食べ物の好き嫌いはもっての他ですゼ。

写真上:真っ暗な朝早くから走行トレーニング。他のワンコ達は「ケガッ」と「パミウリ」のお付き合い。

写真下:「ケガッ」(左)&「パミウリ」(右)。凄く人懐っこいワンコたちで、扱いやすいのは助かります。

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2012117日(火) 雪 -27.0

201210171 カナダ北極のエスキモー犬は、過去にカナダ政府によって大虐殺されてしまったり、またこれも政治が絡んだりするのだろうけど、無償でエスキモーの人たちにスノーモービルを与え続け、カナダ・エスキモーの犬ぞり文化を崩壊させると共に、純血のエスキモー犬がどんどん生活から姿を消していき、残ったものは混血化され、純血種としては一時殆ど途絶えた状態だったと聞いている。最近は何とかそれらしく残っていた犬を集めて、カナディアン・エスキモー犬と称した犬種として残されているみたいだ。ブリーダー(繁殖売買家)もいるみたいだ。

ところで、何故か4日前に僕のところにイエローナイフから「カナディアン・エスキモー犬」たる2頭の犬がやってきた。空輸送費もすべて無償である。オスとメス一頭ずつとのことなのだが、どう見てもメス犬2頭にしか見えない。確認しようとして見ようとすると嫌がるのでハッキリ確認できてないのだが、脚をあげてどこを探しても・・、ない・・。13歳と思われる。かなり人懐っこい。

そんな出来事があって、受け入れるかどうか悩んでいるのだが、チームに混じって犬ぞりレッスンをしている。ソリ曳きの経験があるとのことだが、多分引っ張ったことはないなあ、という印象で、とりあえず最初はかなり手厳しく教えているが、なんとか走るようになってきた。この場合、僕がこれまで見てきた中では、メス犬のほうが順応力があって、経験がなくても早く覚えるのと、意外にも体力があったりする。犬ぞり旅行を約1ヶ月後に控えて、仔犬の「ルータ」&「ルーク」のレッスンは予定に入れていたが、これは予定外の仕事で必要な時間ギリギリのところだが、なんとかついて来れるだけの体力をつけさせてみようと思っている。

それにしてもどこから僕の噂を聞きつけたのか、出所がハッキリせず、多分イエローナイフのマッシャー(犬ぞり遣い)かブリーダーと思われるが、また2頭送って寄越すというので、さすがに断ってもらった。即戦力となるならまだしも、望めないと思うので、送るなら仔犬にして欲しいことを伝えてもらう。

やって来た2頭の犬たちについては、また近いうちに紹介しよう。

写真上:イエローナイフから来たワンコ「アスペン」。

写真下:イエローナイフから来たワンコ「ロンディ」。

※あまりにも上品過ぎる名前なので、ソリ曳き犬になれそうなら、エスキモー語のいい名前を考えてやろう。

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2012115日(日) 氷霧、地吹雪 -33.0

201201151 1月も半分が経ち、そろそろ2月下旬頃からの犬ぞり旅行が頭にちらついてきている。犬たちに予防接種をしないといけないのだが、まだワクチンが届かずハラハラしている。特に仔犬たちに早くしてやりたいのだが・・。

カナダの軍隊の方たちと思われるが、レゾリュートに演習に来ているのか、僕が滞在しているSouth Camp Innにも10人ほどの皆さんが滞在していて、ひょんなことから、僕のドックチームを見学することに。午後に餌をやる時に一緒に案内をした。とんだビックツアーだったが、やはり犬たちは人気がある(笑)。犬たちは、なんだろう?という感じで人見知り・・、なんて、餌を食べる時は関係ないやね。いつも通り、ガツガツと皆さんの前で食べてました。

今日はついでにワンコ近況も。「アミッバルッ」。どちらかというと太りにくい体質で、スリムな体つきだけど、「アミッバルッ」は体力がある細身。馬力も凄いから、やはりいざという時は頼りにしてしまう。

写真上:今日の「アミッバルッ」。寝ながらも、やはり絶品のカメラ目線。

写真下:餌を食べる「ルーク」&「ルータ」。エスキモー犬らしくガツガツ食べてくれる。安心。少し前から半分はお湯でふやかせて柔らかくしたのと、半分は硬いままのドックフードを混ぜて、ドライのままガツガツと食べる練習を始めている。2匹で毎日1.40kgをペロリと平らげる。予防接種が終り次第、犬ぞりレッスンに入る予定。

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2012111日(水) 雪 -26.7

20120111 昨夜あたりから雪がちらついていて、今日は久々に気温がマイナス20℃台と暖かかった。

今日はワンコ近況で「ルッキ」。キナリ亡き後、チームでは最年長となってしまったが、まだボス犬を張っている。キナリが元気だった時は、ボスの座を分け合っていたが、今はチーム一。とにかく永遠に元気なじゃないかと思うくらい元気で、落ち着きもない。チームでは一番のヤキモチ焼きかな。そうそう、「ルッキ」はエスキモー語に訛った呼び方で、実際は「ルーク」。仔犬のルークと重なってしまったけど、「ルッキ」と「ルーク」で呼び分けたらいいやね。

写真上:「ルッキ」。体格といい態度といい、相変わらずいつもデカイです。

写真下:小屋の中の「ルータ」&「ルーク」。

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201219日(月) 晴れ -35.9℃ 

 今日も正午の南の空が、見飽きないくらい綺麗だった。

写真:今日の南の空。

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201218日(日) 晴れ -31.9℃ 

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 朝6時頃の満月は明るく、レゾリュートから南西の、20kmほど離れたグリフィス島の島影まで見渡すことが出来た。今日はサボッて寝まくろう!と硬く決心していたのだけど、あまりにも天気が良すぎて、ついいつも通り犬ぞりで出かけてきた。このあたりの時期から2月、3月頃までが特に空の色彩がとりどりで、北極で一番僕が好きな季節だ。

 今日はワンコ紹介で「リク(陸)」。リクも5歳を過ぎてソリ曳き犬として全盛の年齢だ。体調、体力もこれまで通り問題ないだろう。ベテラン中心組の一頭だ。

写真上:今日の正午過ぎの南の空。オレンジ色が鮮やかだった。彼方にはグリフィス島がクッキリ。

写真下:今日の「リク」。えらいビックリした顔してるね(笑)。

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201217日(土) 雪のち晴れ -36.8

201201071 日本の有佐より、別送品の荷物第2弾が届いた。今回のメインは、お馴染みとなった、在住の高槻市で応援をして頂いてる幸代さん手作りの「パウンドケーキ」(幸代さんのブログ → http://diary2.fc2.com/cgi-sys/ed.cgi/pound_cake/ )。

犬ぞり旅行に持参するのに、いつも差し入れしてくれます。ラム酒たっぷりで、意外にも極寒中でカチカチには凍りつかなくて、走行中にもヒョイっと普通に食べれて重宝します。幸代さん、忙しいのにいつも感謝です!!無事に届きました!

写真上:届いた「パウンドケーキ」を手にニンマリ。

写真下:日に日に明るくなってます!

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201216日(金) 地吹雪のち晴れ -32.1℃ 

 今日の未明より、町は断水となっている。レゾリュートの町は、裏山の池からポンプで水を汲み上げていると聞いているが、水道管が凍ったのではなく、どうやらポンプの故障とのこと。僕の宿泊先の宿主、アジイさんは、町の設備関係の維持を一手に取り持っているが、朝早くから電話がひっきりなしにかかっていたのは、水道の問い合わせとか苦情だったんだろうな。こんなので憎まれ役になっても可哀そう。当然、宿のトイレなども水が流れず。僕の場合は無ければ無いで、ひょいと犬たちのところに行って、野外で用を足している。犬たちが大好物だったりして・・(笑)。

いっそのこと世界中が一度、原始的な時代に戻って、見つめなおしてみるのもいいかもしれない。

写真:今日は「ウキヨ」を沖合いに埋葬しに。月の明るい午後でした。

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201215日(木) 地吹雪 -34.5℃ 

 残念ながら「ウキヨ」がダメだった。何かと波風に打たれるなあ・・。でもクヨクヨしても仕方ない。切り替えていかないと。

こういった僻地なので、犬たちの直接的な治療は受けることは出来ないが、犬たちに重症的なトラブルがあった際には、日本でお世話になっている、動物病院の先生に、犬の遠隔治療という形で相談に乗って頂いていて、今回の「キナリ」と「ウキヨ」を立て続けに亡くしてしまったケースでもアドバイスを頂いたので、やり取りを紹介したいと思います。長くなるので興味のある方は読んでみて下さい。

― 以下 ―

XX 先生

明けましておめでとうございます。昨年は犬たちのことで、色々と相談に乗って頂きありがとうございました。今シーズンも北極で新年を迎えました。

新年早々で申しわけないのですが、またこちらのワンコたちのことでアドバイスをください。

12月末から今日1月4日にかけて、立て続けに2頭の犬を亡くしてしまいました。1頭は9~10歳の老犬で、昨年末に、前日まで元気で食欲はあったのですが、翌日に急に元気が無くなり急死。たいていのソリ曳き犬は7~8歳でどの犬もリタイヤしてしまうので、老衰だろうと思われますが、年が明けてから2歳の若い犬が、やはり昨日まで食欲もあり元気だったにも関わらず今日(4日)になって元気が無くなり急死してしまいました。同時期に立て続けにソリ曳き犬を亡くす経験がこれまでには無いのと、急に元気が無くなり急死という症状が似ていて、気になったのが伝染病なのですが、こういったケースはあり得ますでしょうか?ちなみに年に一回、1月に狂犬病と5種混合ワクチンの接種はしており、今年も今月中に間もなく接種をする予定のところでした。老犬のほうは今シーズンになって、めっきり年老いてしまった印象があって体力が落ちていたこと、また2歳の若い犬はいくら餌を与えても、これまでに全然太ってくれず、痩せすぎで体力は他の犬たちに比べたら不安のある犬でした。寒さに耐える体力が2頭とも無かったならいいのですが、ジステンバーなどの伝染病だとしたら、他の犬たちに感染しないか心配しているところです。また犬たちの繋ぎ方は3~4頭のグループ分けで繋ぐ習慣があり、その2頭の犬は同じグループで、12月下旬頃にどちらかの犬が吐いていた形跡が何度かありました。

可能性のある範囲で構いませんので、ご意見と今後の予防事項などアドバイスがありましたら、頂きたく思っております。

お忙しいところ申しわけありませんが、宜しくお願い致します。

カナダ北極・レゾリュートにて  

2012年1月4日

山崎 哲秀

― 返信 ―

山崎様

明けましておめでとうございます。

わたくしは日本の寒さでまいっております。ご自愛くださいませ。

さて、ご相談の件ですが、手掛かりとなる症状が、「嘔吐」「急死」「痩せて弱っている」とのことですね。

老犬は厳しい環境に耐えられなかったとしても、2歳の若い犬は何か病気を疑いたくなりますね。

伝染病ならパルボが可能性を残すと思います。昔は心筋炎を起こして急死し、コロリ病といわれた時期もあります。しかし、5種混合には含まれていますので可能性は低いのではないでしょうか?
「食べるのに痩せる」このことから、慢性の消化器疾患などの内科疾患の疑いがあると思います。例えば寄生虫、慢性腸炎、糖尿、腎不全などなどです。

症状から推察すると病気が多すぎてキリがありませんので、同じグループの2匹を注意深く観察(食欲、体重、嘔吐、下痢、など)なさって、可能であれば検便を行うことがまずは必要かと思います。

犬は非常に重要なパートナーでしょうから2匹も立て続けだと大変でしょうね。お察しいたします

XX動物病院  XX

201214日(水) 雪のち晴れ -30.1

20120104 懸念がまた一つ。「ウキヨ」だ。2年前に500kmほど離れた隣町、アークティックベイから、3ヶ月の仔犬の時に兄弟犬のキャヨットと共にやって来たのだが、その後、体格はすっかり成犬並に大きくなったのだが、いくら餌を与えても太ってくれず、とにかく痩せてガリガリなのだ。ここに来て冬の寒さに耐え切れないのか体調が思わしくなく、屋内に入れて介抱している。君はソリ引き犬にはなれないなあ・・。連れて行けないよ。とても長期間の旅行に耐えれそうもない。見ていて気が気じゃないよ。もともと何か持病を持っているのか?この地では動物病院も無く、施しようがないのだ。チームが半崩壊状態だ。

写真:屋内で介抱中の「ウキヨ」。

201212日(月) 地吹雪のち晴れ -31.3

20110102 元旦は吹き荒れていて、恒例の新年をお祝いする、生肉食べ会は中止になったのかと残念に思っていたら、今日の夕方にあった!声を掛けてくれたので、喜んで町の体育館に飛んでいく。毎年通りにカリブーやらアークティックチャー(いわな)などが凍って並んでいた。

グリーンランドのカナック地方では凍肉のことを「コア」(多分、鯨やらアザラシ、セイウチ、カリブー等々の凍肉の総称だと思うが)という。このレゾリュート地方でも同じく「コア」と言っている。僕はその中でも発酵した凍肉が大好きだ。夏の間に積み上げた石の下に肉を寝かせておくと発酵するのだが、それこそ僕の一番関わりの深いグリーンランド・シオラパルク村ではセイウチ、アザラシ、鯨、極めつけは「キビヤック」という水鳥を発酵させたものであったり、色んな種類があって、とにかく美味しいのだ。発酵してるだけに臭いは強烈で、手に染み込んだら数日とれないくらいだ。

今日の僕の目当てはセイウチの肉を発酵させた「イグナック」。ママット(おいしい)でした。ここにもまだこういった文化が少なからず残っているのはホッとする。

そのあと口の周りと手に染み付いた臭いをプンプンさせながら、犬たちの見回りに行くと、いつも以上に犬たちにモテモテだった。

写真:例年の光景。生肉を食べてお祝いする町の人たち。

201211日(日) 

 日本より15時間遅れで、カナダ北極圏・レゾリュートも新年を迎えた。

2012年の目標と今後の目標を掲げておこう。今後の目標は何十年かかるか分からないが、兼ねてからの夢。一人で出来ることではないけれど、時々挫けそうになる気持ちが途切れないように、毎年公言していきたい。

2012年の目標

    今年も手抜きなく生きること。

今後の目標

    グリーンランド極北、カナダ極北にそれぞれ日本の観測拠点を設営する。

    エスキモー民族(グリーンランド)と日本の姉妹都市(友好都市)の橋渡し、促進。

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