山崎哲秀 ー北極圏をテツがゆくー

北極圏の犬ぞり遠征をライフワークにしている山崎 哲秀のブログです。北極圏を犬ぞりで遠征し環境調査を行うアバンナットプロジェクトに取り組んでいます。このブログでは、遠征前は日本での準備や生活の様子、遠征中は、北極圏の様子を紹介します。 アバンナットプロジェクトの詳細は、山崎哲秀のホームページhttp://www.eonet.ne.jp/~avangnaq/ をご覧下さい。山崎哲秀の連絡先は、同ホームページに記載しています。

2012年03月

2012329日(木) 地吹雪 -26.4

20120329

 今日は明るい話題を!

1月下旬に発情期を迎えたメス犬の「コウ」。リーダー犬を務めているので痛かったが、犬ぞり旅行には同行させず、サイレス&サエコ夫妻の元で準備中だった。おととい27日に仔犬を産みました!お腹がそんなに大きくなかったので、もう少しかかるのかと思っていたけど、犬小屋で「クンクン」と鳴く声が聞こえ、覗いてみると・・。今回は一匹だけの出産だったけど、待望のメス犬!なんとか元気に育ってくれよ。引き続き環境のいい、サイレス&サエコ夫妻宅でお世話になります。

写真:オッパイを飲む産まれた仔犬と母犬のコウ。

2012328日(水) 晴れのち地吹雪 -29.0

 レゾリュート帰着後は、またいつものSouth Camp Innに滞在。宿主のアジイ&アリーサック夫妻には、毎シーズンのことながらサポートして頂いており、今回の8日間の補給停滞の件も心配をかけ、尽力して頂いた。

この補給停滞中に起きた、もう一つの事件とは「白熊の襲撃」だった。補給停滞に入った310日には、キャンプ地においてまず最初の来襲を受けた。その時は30mほどの距離のところまで近づいてきたところ、白熊の頭上に向けてライフルの威嚇射撃を2、3発。なんとか追い払うことができた。悪天候中は白熊も活動しないのか?その後はただ風が吹き荒れていたが、半日ほど風が小康状態になった315日のお昼過ぎ、4班に分けてグルリとテントの周りを囲って防御してくれている犬たちがうなり始めた。慌てて外に出てみるともう20mも離れていない所まで、白熊が迫ってきていた。ヤツらはいつも風下から近づいてきて、犬たちも直前まで気付かなかったみたいだ。急いでライフルを取り出して、ルールに従って威嚇射撃を数発。ところが今回は逃げずに、歩測を早めて突進してきた。目前になるとさすがに迫力がある。もう躊躇なく白熊をめがけて弾を撃ち込んだ。ようやく逃げ出した白熊は、テントから500mほど離れたところで倒れたのだった。白熊の恐怖に加えて、尽きた犬のエサ、殆ど手元に無くなった自分の食糧のこともあり、「助かった」との思いが頭をよぎったのも嘘ではなかった。黙っていればよかったのかもしれないが、やはり黙っておくことは出来ず、その日の定時交信で報告したのだった。もし補給に来た際にでも見つかれば、追及されるのは免れないから。カナダ北極に出入り禁止になるのだけは避けたかった。

その後、Nunavut州のPangnirtungにある行政機関から、情況を報告せよとの問い合わせがあったり、レゾリュートでは町のHTO(Hunter and Trappers organization)(エスキモーの人達の狩猟組合?)から聴取を受けた。今はPangnirtungの機関とレゾリュートのHTOとの間で話し合われているようで、なんだかの処分があるなら連絡が来ることになっているが、おそらく重い処分は無さそうな気配、といった情況だ。

犬ぞりが北極や南極での遠征の移動手段として使われるようになった大昔は、狩猟をしながら移動を続けるのが普通だった。また相棒の犬たちでさえ食糧の一部と計算されていたのだが、今はもう時代が違う。動物保護という観点からも許される時代ではないし(僕も相棒の犬たちを食糧などとは考えることが出来ない)、現代は航空機などを利用した「補給」を受けれる時代でもある。流れには上手く合わせていく必要がある。ただ一つ言いたいのは、保護が過ぎているのだと思うが、やたらと白熊が増えすぎている。レゾリュート近辺での活動は4シーズンを迎えたが、年々白熊に遭遇する機会が増えていて、今シーズンに限っては犬ぞり旅行中に殆ど毎日100%といった感じだ。9割近くがキャンプ地への襲撃。残りは犬ぞり走行中。威嚇しても逃げなくなってきており、ディフェンスしきれない。この調子では、近い将来に銃を持たない遠征隊の人間が食べられる事故なんかも起こるだろう。探検・冒険の記述で、こんなに頻繁に白熊に遭遇しているのは読んだことがない。それともたまたま自分が白熊に好かれているというのか?何度もブログでも書いているが、白熊は絶滅の危機なんかじゃない。何千年後か何万年後かを見据えての、種の絶滅という意味ではそうなる可能性はあって、絶滅の危機にあるのかもしれないが・・。

これまで通りエスキモーの人達に、普通に狩猟をする権利を戻してあげて欲しいものだ。おそらく白熊は逃げるようになるだろうし、増えすぎることもないように思う。

2012325日(日) 晴れ -32.2

20120325

 AM6時過ぎにキャンプ地を出発し、11時半頃にレゾリュートに帰着しました。とりあえずホッと一息です。今回の補給停滞の8日間には、まだ報告出来ていない「オチ」がありました。その件も重なり、一旦レゾリュートに戻らないわけにはいきませんでした。明日以降、聴取を受けることになると思いますが、またその件については落ち着いたら報告したいと思います。

写真:あと30kmほどでレゾリュート。ここまで近くなると、スノーモービルのトレースが道になっている。犬たちの息も白く・・。

2012/03/19 2nd-day18
+74° 50' 57.70", -101° 5' 5.40"
補給隊のアリーサクが朝、トナカイのシチューをご馳走してくれた。体が暖まった。ゆっくりくつろぐ二人を残し、レゾリュートに向け先に帰途につく。レゾリュートまでは1週間から10日を要する見込み。スノーモビルは狩りをしながら別のルートから帰途についており、再び出会うことはなかった。

2012/03/20 2nd-day19
+75° 1' 36.70", -100° 38' 23.20"
通常、朝8時頃から2時または3時くらいまで犬ぞりを走らす日が多いが、今日は途中から風が強く視界が悪くなり、正午過ぎに行動終了。補給待ちの8日間の間、走らず、エサも少なかった犬たちには、いい休養になるだろう。

2012/03/21 2nd-day20
強風により停滞、午前中、視界ゼロ。夕方から回復。

2012/03/22 2nd-day21
+74° 59' 21.90", -99° 19' 42.50"
背中から風を受けながら走る。向かい風ならまともに顔に風を浴びるので走れないが、追い風ならなんとかなる。気温-30度で風が秒速5mの場合、体感温度は約-50度になる。

2012/03/23 2nd-day22
+74° 56' 47.60", -97° 51' 32.10"
朝の気温-34度、夕方-24度。朝と昼の気温差が大きく、昼は暖かく感じる。

2012/03/24 2nd-day23
+74° 50' 1.90", -96° 1' 59.30"
一日中、強い地吹雪。背中から風を受けながら走る。明日、天気が良ければレゾリュートに到着できる見込み。

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Photo 写真:

ある日の走行中、寝ているシロクマに遭遇。向こうはしばらくこちらに気づかなかったらしく、振り向いて気づくと慌てて逃げていった。

哲秀からメッセージです。
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悪天候により予定より8日遅れてようやく補給を受けることができた。手元には、燃料1.5L、食糧はマカロニスープ1食分とキャンディ2袋が残っていただけ。犬たちは、2日おきにいつもの2/3の量の餌しか与えられず、かなりギリギリの状態だった。レゾリュートでは、一時、カナダ軍に緊急補給支援を要請しようとかというほど心配をかけてしまった。
このままフィールドに留まり活動を継続したいところですが、一旦レゾリュートに戻り、元気な顔を見せるのが筋だと思います。7-10日ほど帰着するまでにかかりそうですが、レゾリュート到着後に詳細な報告をしたいと思います。 山崎哲秀
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Photo 写真:

鼻が凍傷。テントの中も凍り付いている。

2012/03/17 2nd-day16
+74° 36' 28.20", -101° 20' 0.90"
補給待ち停滞7日目。
補給隊2名は2台のスノーモビルに乗って朝10時にレゾリュートを出発。連日ブリザードが吹き荒れた後なので、海氷の表面が波打って走りにくいはずだ。出発から5時間後、コーンウォリス島とバーサスト島の中間地点で2台のうちの1台が故障し、急遽、新たに2名スノーモビル2台のレスキューチームが編成され、レゾリュートから故障地点に向かことになった。合流後、補給チームは先を急ぎ、深夜0時まで走らせてくれたが、夜はバサースト島で緊急キャンプとなった。待ちわびていた補給は今日もなし。

2012/03/18 2nd-day17
補給待ち停滞8日目。
補給隊の動きは位置情報が衛星経由でインターネットを利用し確認できるため、日本とレゾリュートで監視を続けている。日本と電話連絡を取り、補給隊の現在位置を逐次確認する。途中で補給隊の動きを示すシステムが何らかの原因で作動しなくなったため、地吹雪で視界が悪いこともあり遭難が危ぶまれたが、夕方5時半、シンが吠えて、遠くから近づく補給隊のエンジン音を教えてくれた。8日間に及ぶ長い長い待ち時間であった。

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2012/03/13 2nd-day12
+74° 36' 28.20", -101° 20' 0.90"
補給待ち停滞3日目。
レゾリュートにはブリザード警報発令中。
こちらは吹雪。天候の回復に時間がかかる見込み。
スノーモビルによる補給が遅くなれば、ソリを曳く犬たちの体力回復に時間がかかってしまう。
スノーモビルによる補給の目処が立たない場合、航空機によるピックアップの体制が取れるよう、調整開始。

2012/03/14 2nd-day13
補給待ち停滞4日目。
レゾリュートにはブリザード警報発令中。
こちらは上空は晴れているが高い地吹雪。午後から曇り始めたので、また吹雪になるかもしれない。
こういう天気の場合は次の日の天気予報がコロコロ変わるので注意が必要だ。
レゾリュートから補給のスノーモビルが出るためには、少なくとも2-3日、風が止んで視界が利く日が続く必要がある。

2012/03/15 2nd-day14
補給待ち停滞5日目。
レゾリュートにはブリザード警報発令中。
こちらは吹雪のちくもり。
風が弱まるのを待って、テントの位地を10mほどずらす。これまでの強風でテントの周りに吹きだまりができてしまった。
気温-19.3度。気温が高いので腹の減りを紛らわすことができ、自分も犬たちも幾分救われている。
3月11日に予定していた補給が、悪天に阻まれまだ受けられない。補給を受け次第、レゾリュートに引き返すことに方針を決める。

2012/03/16 2nd-day15
補給待ち停滞6日目。
レゾリュートのブリザード警報は解除されたが、まだ強風のため補給隊は出発できない。
こちらは朝9時頃から天気が回復してきた。
レゾリュートから、補給の出発準備は出来ている、天気が予定通り回復すれば、明朝出発予定と連絡有り。早ければ、こちらには、明日夜遅くに補給隊が到着するかもしれない。

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Photo_2 写真:ルートを探しながら進む。

2012/03/08撮影

2012/03/08 2nd-day7
+74° 58' 51.40", -100° 48' 16.90"
寒さで親指が半分凍傷。海氷観測をしながら犬ぞりを進める。夕方、テント設営後、シロクマがやってきたが、犬たちは疲れて寝ており、近くに来るまで気づかない。3/11にレゾリュートから1回目の補給(食糧、ドッグフード、ラード、燃料)を受けられるよう手配する。

2012/03/09 2nd-day8
+74° 48' 33.30", -101° 15' 36.60"
クラックが再凍結した比較的平らな氷を捕まえて進む。天気がよく風が少ししか吹かず、今日は快適に進んだ。

2012/03/10 2nd-day9
+74° 36' 28.20", -101° 20' 0.90"
途中で小さい乱氷帯を超える。今は比較的平らな氷の上にいるが、もうワンピッチ進めばかなりの乱氷帯があるものと見込まれる。この地点で補給待ちとする。

2012/03/11 2nd-day10
補給待ち停滞。強風のため、補給延期。
地吹雪。-35度。そろそろ-20度台になってもよさそうなものなのに、寒い日が続く。-30度台の風は冷たい。ちょっと外に出ただけで鼻がひん曲がりそうになる。長時間、外で作業することはできない。

2012/03/12 2nd-day11
補給待ち停滞。強風のため、補給延期。
しばらく悪天が続く見込み。犬も自分も食糧をセーブしている。

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2012/03/05 2nd-day4
+74° 58' 44.9", -99° 43' 04.2"
朝、乱氷地帯が少しあった他はスムーズに前進。バーサスト島の沿岸にテントを張ったが、このあたりはカリブー(トナカイ)がたくさんいる。今はまだドッグフードがあるので狩りの必要はないが、いざという時に狩り場がわかっているのは安心だ。

2012/03/06 2nd-day5
強風につき停滞。一日中、視界無し。気温はマイナス36度程度だが、風が強いと体感温度はマイナス50度を下回る。

2012/03/07 2nd-day6
強風につき停滞。吹雪のち地吹雪。夜になってやっと雲が切れ、空が見えてきた。明日は晴れそうだ。

3

写真:3月4日キャンプ風景

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2012/03/02 2nd-day1
+74° 49' 44.30", -95° 59' 48.30"
ケンブリッジベイに向けて再出発する。前回とルートを変え、まずは西にあるバーサスト島の南側を通り、島の南西端あたりから海峡の横断を試みることにする。

2012/03/03 2nd-day2
+74° 56' 45.80", -97° 25' 5.40"
昨夜はシロクマ来襲。テントから歩測40歩のところまでやって来た。威嚇射撃で追い払う。

2012/03/04 2nd-day3
+74° 58' 5.40", -98° 39' 5.90"
風上に向かって走行していたら、寝ているシロクマに遭遇。犬たちがシロクマを追いかけてソリは暴走し制動が利かない。なんとかシロクマが逃げ切ってくれたが、張り切って走りすぎたボタンの爪がひとつはがれる。バーサスト島の沿岸部を更に西に向かう。

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