2012年11月
満月
白熊君が来た!
11月27日(火) レゾリュート 吹雪 -23,9℃
吹雪が今日も止まず。そんな中、夕方6時前に「白熊が出た!」の一報が。今シーズンもぞくぞく白熊君がレゾリュートの町にやって来る。先日は親子連れの白熊が、民家をノックしたとのことで、射殺された。人間に危害を及ぼした、というルールに乗っ取ってのことのようだ。そして今日は、どうやら僕の犬たちのところへ現れたらしく、ライフルを抱えて駆けつけた時には、すでに町の人たちがスノーモービルで追い払っている時だった。犬たちは無事。意外と白熊も逃げ足は早い。トットットットッ~っと、暗闇の中に姿を消して行った。それにしても犬のところに白熊がノコノコやってきても、ルール外なんだなあ・・。動物保護が重視されている現在にしても、僕は町にやって来る白熊に関しては、プロテクトはおかしいと思う。また同じ白熊がやって来るだろう。
でも白熊君が来たことが、町の大きな話題だから、平和と言えば平和なのか・・。
写真:犬たちを繋いでいる場所に、ノコノコと白熊君がやって来た。(写真は少し前に撮った、犬たちの繋留の様子)
「リク」
11月26日(月) レゾリュート 地吹雪 -24.7℃ 昨夜から地吹雪が続いている。風が弱まったら、犬ぞりを出そうと外の様子をずっと窺っていたけど断念。この北風で、レゾリュート湾の外の海氷が、また動いたみたいで、蒸気雲が立ち込めている。海氷の安定が遅い。 今日はワンコ近況報告で「リク(陸)」の紹介。リクももう6歳になった。甘えん坊は相変わらずだけど、今シーズンはメス犬のコウと共に、リーダー犬としても頑張ってもらいたいと思っている。優秀なリーダー犬だった、亡きキナリのようにはいかないが、忠実で扱いやすいワンコだ。コウとそれぞれのいい部分を補いながら、リーダー犬の力を発揮して欲しいところ。 写真:今日の「リク」。地吹雪で、雪まみれで寝ていたところを起こして撮った。
「ルッキ」
日本より
「マイ&チミヤット」
11月21日(水)-2 レゾリュート 晴れ -25.3℃
今日のワンコ紹介は「マイ&チミヤット」兄妹。この2頭の犬は、実はまだ皆さんには未公表だった兄妹犬で、今シーズンの秘密兵器?(笑)といったところです。5月初旬に、僕のホームグラウンドであるグリーンランド北西部、カナックの町から生後2か月でやって来た兄妹。ブログでもよく登場するレゾリュート在住のサイレス&サエコ夫妻がこの5月に、ある遠征隊がチャーターした小型飛行機に便乗してグリーンランド・カナックを訪れた際に、お願いして連れて帰ってもらったのでした。
すっかり成長した「マイ&チミヤット」兄妹は、今日犬ぞりデビューを果たした。いきなりソリを曳かされて「えっ、なに?なに?」という感じで、まだ教えることが一杯あるけど、何とかなるんじゃないかな。オス犬の「チミヤット」は、まだ生後1年も経っていないのに、体格はかなり大型で期待したいところ。どちらかというとのんびりしたマイペースな性格か。「マイ」は1か月ほど前に早くも発情期を迎えてしまい、もしかしたら年内中に子犬を産む可能性がある。「チミヤット」はエスキモー語で、日本語に訳すと「飛行機」の意味。飛行機に乗ってレゾリュートにやって来たから、この名前を付けた。「マイ(舞)」は5月のことをデンマーク語でMaj(マイ)と言うことと、飛行機で舞ってやって来たことを掛け合わせて「Maj、舞」。カナックからレゾリュートにやって来た直後に命名したという訳でした。
写真上:5月初旬にレゾリュート到着直後の「マイ(左)&チミヤット(右)」。マイはチミヤットの後ろに隠れてばかりだった。
写真下:成長した「マイ」(左)と「チミヤット」(右)。今ではマイのほうがキャピキャピして、表に出る感じになった。
「天命成遂」
11月21日(水) レゾリュート 雪
今生きているような世界へ足を踏み入れることを決意した、高校時代だったか、あるいは足を踏み入れてから間もなくだったか、当時の日記を掘り返してみないと正確には分からないけど、自らに課した言葉がある。「天命成遂」。北極での活動を始めた25年前は元々、冒険心で入った世界に過ぎなかったが、今では目的がはっきりしたものになっている。北極で成し遂げたい目標がある。あと15年かかるか、20年かかるか?あるいは達成出来ないかもしれない。一人で出来ることではないのだけれど、信じて続けていくしかない。
継続することが何と言っても難しい。それでも不思議と気持ちは今でも変わらない。もう一度確かめておこう。「天命成遂」。
今後の目標
・ 日本の極地(北極)研究者の方たちの設営支援ができるように、民間支援体制を作る。
・ グリーンランド極北、カナダ極北にそれぞれ日本の観測拠点を設営する。(公的資金ではなく、民間より何とか設営資金を獲得できれば・・)
・ エスキモー民族(グリーンランド)と日本の姉妹都市(友好都市)提携の橋渡し、促進。
・ エスキモー文化の継承。
海氷
「パニッ」
11月19日(月) レゾリュート 雪 -21.3℃
レゾリュートでの滞在が、だいぶ落ち着いてきたところで例年と同じく、我がドックチームのわんこ達を紹介していこう。今シーズンデビューのわんこ達から順番に、今日は「パニッ」。パニッはコウが今年の3月27日に産んだ仔犬で、あれから7カ月も経つとすっかり大きくなった。どうやら母犬のコウに似て、落ち着きがなく勝気な性格みたいだ。さっそく犬ぞりデビューを果たしたが、将来はラッシ → コウ → パニッ、と3世代続いてメス犬のリーダー犬になれるか期待したいところ。ちなみに「パニッ」はエスキモー語で、日本語に訳すと「(私の)娘」という意味。
写真下:すっかり体が成長した「パニッ」。
今日も・・
犬ぞりトレーニング開始
11月17日(土) レゾリュート ブリザード~雪~晴れ -19.3℃
レゾリュート入り後、10日目にしてようやく犬ぞりトレーニングに漕ぎつけた。まずはホッとした気持ちになった。
朝のうちはまだ強い風と吹雪が残っていたが、お昼近くにやや回復したのを見計らって、4頭の犬たち(リク、アプ、コウ、パニッ)を連れ出した。僕もシーズン始めは感覚が戻ってなく、とりあえず今日は4頭だけ。感覚を確かめた。3月末にコウが産んだメス犬の「パニッ」は今日が犬ぞりデビュー。まだ戸惑っているけれど、繰り返してレッスンしているうちに覚えてくれるだろう。
写真:今日の犬ぞりトレーニングにて。犬たちは左からコウ、リク、パニッ、アプ。
ブリザード
犬たちを移動
吹雪
11月10日(土) レゾリュート 吹雪 -16.3℃
今日は吹雪。天気が良ければ少し離れた海岸近くに繋留している犬たちを、世話がしやすいように近くまで連れてきたかったのだが・・。強風に加えて雪で視程が殆どなく、出歩ける天気ではないので断念。その分、いつでも連れて来れるように準備だけは整えておく。それがいつもの、まず最初の作業。
そうそう、3日前イカルイットの空港で飛行機を待っている時の話。ベンチに座っていると、警察官から「ミスター・ヤマサキ?」と声を掛けられた。身に覚えがないので(笑)、なんだろう?と話を聞いていると、ライフル所持の許可証を発行してくれるという。僕が今日レゾリュート入りすることを、どこから知ったのかは分からないが、手続きを済ますことができた。申請料金25ドルを支払う。2ヶ月毎に更新していくことになる。いつもはレゾリュートの警察で申請するのだが、そういえばイカルイットにいつも問い合わせてくれてたっけ・・。誰かが気を利かせてくれたのだろう。ラッキーだった。レゾリュート近辺では、白熊がこの冬もたくさん徘徊しているとのこと。う~ん・・。
写真上:北極入りしてからの、まず最初の作業。犬たちを繋ぐステイや犬用の胴バンド(修理)、曳き綱などを準備する。
写真下:ライフル所持の許可証。
Resolute(レゾリュート)着
昨日11月8日の夜に、目的地のレゾリュートに到着。まだ気温は高いが、ピリッとした北極特有の乾燥した空気に戻ってきたことを実感。アジイ&アリーサック夫妻、サイレス&サエコ夫妻とも再会を喜んだ。この二組のご夫婦には、レゾリュートでは特にお世話になっていて、頭が上がらない。
今日も雪がちらついていて空は雲に覆われているが、すでに一日中太陽が顔を出さない「極夜」だ。AM10時頃、サイレスと共に犬たちを繋留してある海岸近くまで歩いて行き、犬たちとも再会を果たした。サイレス&サエコ夫妻には、夏期中の犬たちのケアをいつもお願いしていて、そのおかげで今シーズンも犬ぞりでの活動を迎えることが出来る。犬たちはエスキモー語の掛け声に大騒ぎで、大歓迎してくれた。気分が盛り上がる。まだ到着したばかりでペースがつかめてなく、犬ぞりトレーニングに入るまで、態勢を整えるのに一週間ほど時間が掛かりそうだけど、のんびり準備していこう。滞在のこと、犬たちのことなど、またゆっくりブログでも報告していきたい。
写真:犬たちと再会。
Iqaluit(イカルイット)着
11月6日の夕方に日本を発ったあと、同日の午前中(現地時間)にカナダ西海岸側のバンクーバー着。無事入国後、夕方に乗り継いでオタワへ移動。時差の関係もあって、到着はオタワ時間の深夜11時半頃。この日は空港のいつものベンチにて(笑)寝袋にもぐり込んだ。
そして今日7日は、オタワよりFirst Air便にてNunavut州の州都であるIqaluit(イカルイット)まで移動。今日はここに泊りで、明日いよいよワンコたちが待つレゾリュート入りの予定だ。
イカルイットの気温はマイナス10℃弱といったところ。レゾリュートはもっと冷え込んでいるだろう。
写真上:大阪、伊丹空港にて。 写真下:イカルイットの町(機内から)。