犬ぞり案内人 山崎哲秀 ー北極圏をテツがゆくー

グリーンランド北西部地方に古来から住む、エスキモー民族から伝承を受けた犬ぞりを操り、“アバンナット北極プロジェクト”に取り組む、山崎 哲秀のブログです。 このブログでは、北極遠征中や日本滞在中の活動の様子を紹介します。 アバンナットプロジェクトの詳細は、山崎哲秀のホームページhttp://www.eonet.ne.jp/~avangnaq/ をご覧下さい。山崎哲秀の連絡先は、同ホームページに記載しています。

2014年11月

11月28日(金)晴れのち雪 -12.5℃

20141128

 昨日の続きでワンコ紹介。ママットルが夏の8月に4匹仔犬を産んで、3匹はユーソッフィ爺さんのところへ。1匹だけ自分のチームに残すことにしました。そして今日、名前が決まりました!「こてつ」。親近感のある名前ですね(笑)。いつもワンコ達を応援して下さっている、東京在住の方が命名してくれました。ありがとうございます!

「こてつ」君は、母犬のママットルと顔立ちはそっくりだけど、毛の配色がすごく独特で目立ちます(笑)。生まれて3ヶ月半だけど、かなり体格がいいワンコ。性格はまだ把握しきれてないけど、懐っこい可愛いワンコです。3月か4月頃にもしかしたら、犬ぞりデビューが出来るかもです。

写真上:毛の配色がインパクトある「こてつ」君。

写真下:母犬のママットル(左)と「こてつ」。

201411282

11月27日(木)雪のち晴れ -12.9℃

20141127

 シオラパルク入りしてからの滞在も落ち着いてきたので、そろそろワンコたちの近況を兼ねて、順番に紹介していこう。まず今日はメス犬の「ママットル」(3歳)。なんと夏期中の8月に4匹の仔犬をまたまた生んでいました(笑)。メス1匹とオス3匹で、メスの仔犬を、日本帰国中にワンコ達を預かってくれたユーソッフィ爺さんが欲しいとのことで、オスの仔犬2匹と共に3匹をユーソッフィ爺さんへ。オスの仔犬を1匹だけ、チームに残すことにしました。母犬のママットルは変わらず元気です。昨シーズンは全然落ち着きがなかったけど、3歳になり随分と落ち着きが出てきた?感じです。「ママットル」は、「美味しいもの」、という意味があります。家に遊びに来る子供らが「ママットルちょうだい。」なんてよく言うので、「おやつ」なんかの意味もあるのかも。

写真:間もなく産休明けの「ママットル」。

11月26日(水)雪 -12.9℃

201411263

 ここではこの時期は「極夜」と言われる一日中太陽が昇らない季節。夏の白夜とは正反対になる。北緯78°付近のシオラパルク村では、10月20日を過ぎると間もなく、太陽が顔を出さなくなる。そして次に太陽が戻って来るのは2月17日前後と、実に4か月近くも極夜が続く。12月の冬至が一番、一日が真っ暗な日で、それを折り返すと日に日に明るい時間帯が増えていく、という極端な自然環境だ。そんな極夜を過していると、だんだんと時間の感覚が無くなっていってしまう。ブリザードが何日も続くとなおさらだ。それでもなんとか一日の生活リズムを作るのだが、今朝は朝一で仔犬たちの犬ぞりレッスンに出かけたあと、なんだかんだと用事や作業をしていると、午後2時頃になって、朝から何も食べていないのに気づき、慌ててご飯を作ったという始末(笑)。

極夜中のたいていの一日のパターンは、朝夕のアナログの気象観測と、午後あたりに南の空の雲形と、海氷目視を兼ねての写真撮影記録は日課。このあと大気関係のサンプリングも器材が届き次第に日課にして、海氷の上を歩けるようになったら、海氷関係のデータ収集も定期的にする。天気がいい日は犬たちを走らせ、夏の間に落ちてしまっている体力・筋力の回復トレーニングも、極夜中は欠かせない。また必要な装備(革の手袋や犬の胴バンドなどなど)も自分で作ったりとか、その日の作業記録をつけたりなどなど屋内作業をしていると、一日が終わっていく。

写真:犬ぞりトレーニングにて。この冬デビューの4匹の仔犬たちも順調に覚えている。

11月25日(火)吹雪のち雪 -9.7℃

20141125

 「プラット」というこちらの習慣があって、村に住んでいる人たちが「フラッ」と、家に訪問に来る。村の子供たちも外で遊んでいる途中で、しょっちゅうやって来る。たいていは喉が渇いたりしてジュースを飲んで、またバタバタと出ていく(笑)。作業をしている時が多いので、なかなか相手をしてやれないが、ここには氷点下の中、外で遊ぶ元気な子供たちがいる。この冬はシオラパルク村には、数えてみたところ、子供は10人ほどいるのかな。

写真:遊びに来る子供たち。

11月22日(土)雪のち晴れのち曇り -7.3℃

20141122

 今日から犬ぞり開始。連日の強風で、海氷は薄く張っては流されて・・という状態で、海の上を犬ぞりで走るのはもう少し時間がかかりそうだが、海岸沿いに凍り付いた定着氷を利用してのスタート。大きく動けるわけではないけど、4頭の若い犬たちのレッスンにはちょうどいい。今日はリーダー犬のアーベェとアッロ、ショウヤの3頭に、今季デビューのワサビを加えて少しだけ走らせてみた。しばらくは天気がいい日は、ワサビ、リッカ、カギャ、ガリッたち今季デビューするワンコのレッスンを繰り返していこう。

シオラパルク入りして7日間は吹き荒れていて、外では何も出来なかったことを考えると、順調に今シーズンもスタート出来たと思う。生活態勢も整ってようやく犬ぞりを始めることができてホッ・・とした気分だ。

写真:胴バンドを装着した「ショウヤ」。毛が冬毛に変わりつつある。産休のママットル以外、全13頭に胴バンドを装着した。

11月20日(水)高い地吹雪 -14.4℃

 11月10日にシオラパルク入りしてから、実に7日間も地吹雪の悪天候。「ヤマサキが来てから天気が悪いよ~ォ!」と言われる始末(笑)。そろそろ犬ぞり走り初め、をしたいところだ。でも屋内作業も飽きないくらいあるので、退屈はしていない。

 今日はシオラパルク村の人たちの仕事(職業)あれこれ、という感じで書いてみたい。

以前は賑やかな時で、平均70~80人は住民がいたこともある、世界最北のエスキモー先住民の村も、今では過疎が進んで40~45人ほどに人口は減ってしまった。時代の流れと言えばそれまでか、若い人たちは不安定な猟師から離れて、定職を求めて町へと出る傾向が続く。そんなシオラパルク村に住んでいる人たちの仕事は、今でも専業猟師は6~7人はいるだろうか・・。その中でも奥さんが村の仕事に就いている家庭もあったりする。シオラパルクでの猟師以外の仕事はというと、村役場の事務員(見ていると女性住民が一年毎?順番に持ち回っている)。食糧や生活用品が販売され、郵便局や銀行業務等を兼ねているお店が一件あり、そこでの事務職員や販売、作業員。ゴミ収集などの作業員。学校(小学校)の先生(=資格者)と補助職員(=村の人たちが当たっている)。村のディーゼル発電機をメンテナンスするエンジニア。遠隔治療(必要時の薬品の配布や怪我の手当など)要員。牧師さん(以前は資格を持った牧師さんがいたが、今は代理ということ)などが見られる。やはり定職を持てる人数には限りがある。

余談だけど、僕が20歳代の頃、何とか日本でお金を貯めて村に通い詰めていたが、かなり切り詰めて滞在しているのを見兼ねたのか、生活用水にする氷山の氷運搬の仕事を村で与えてくれた、という懐かしい思い出がある(その頃から何故かグリーンランドに住民登録されている(笑))。今では大きな貯水タンクが設置され、給水設備が整っていて、氷運搬の仕事は無くなってしまったが・・。

写真:今日の話とは関係ないが、犬たちの繋留地点の様子。強風に犬たちは寝くるまっている(分かり辛いけど、黄色い矢印)。

20141120

11月18日(火)シオラパルク 吹雪のち雪 -7.5℃

20141118

 16日から吹き荒れた風は、今日の午後に弱まったが、視程が1kmもないくらいの雪が降っている。PM2時頃、気象計の脚の部分を固定しに、村から海岸に沿って西側に1kmほど離れたあたりまで出かけて作業をしてきた。また明日から吹き荒れる予報なので、出来る時に野外作業。脚の付け根は海水を利用して凍らせて固定。3本のワイヤーで補強した。

写真:気象計の脚を固定。

11月15日(土)シオラパルク 晴れ -16.3℃

201411153

 僕のドックチームの犬たちを応援して下さっている皆さんへ、ワンコ達の報告です。10頭の成犬、オス犬のアーベェ、アッロ、ハロット、キャヨット、アングア、ヌターバル、ヒャカ、ナッホ、ショウヤ&メス犬のママットル達はみんな元気です。そして今年の1月末に生まれた5匹の仔犬たちですが、オス犬の「タケル」が夏の間に病気で亡くなっていました。日本からの電話のやりとりで、1匹の仔犬が病気で亡くなったことは分かっていたのですが、どの犬かが確認をとれていませんでした。再会してみたところタケルでした。大所帯なので、体調を崩す犬も出てきます。獣医もいない場所なので、こればかりは仕方がありません。オスのワサビ、ガリッ、カギャ&メスのリッカの4匹は生後10ヶ月目を迎え、随分と体が大きくなっています。元気です。

またママットルが8月に、なんと4匹の仔犬を産んでいました。メス1匹とオス3匹。メスはユーソッフィ爺さんが欲しいとのことで、約束をしています。オス3匹は村の友人にあげる予定でいます。多すぎても世話をしきれないので、残すとしても1匹かなあ・・と思っています。

またのちのち、チームの犬たちを1頭ずつ紹介していきますので、今しばらくお待ちを!

写真上:仔犬だった4匹のワンコたちは、こんなに大きく成長。(上左)カギャ。(上右)リッカ。(下左)ワサビ。(下右)ガリッ。

写真下:犬たちのエサ、セイウチの肉を天井からぶら下げて解凍し、小切りする。

201411155

11月14日(金)シオラパルク 晴れ -16.2℃

20141114

 予定より5日遅れで、10日(月曜日)にようやくシオラパルク村入り。村の皆さん&ワンコ達とも半年振りの再会を果たした。もう25年ほど通い続けているホームタウンと言えるこの場所も過疎化が進んでいる。極夜の訪れ(冬の訪れ)と共に戻って来るのは、山崎くらいだとのこと(笑)。

いつもの如く犬ぞりが出来る冬季シーズンを、約半年間過すわけなので、まずは生活態勢作りから始める。あいにく11~12日と強烈なブリザードとなり、実際に屋外作業を始めることが出来たのは昨日13日からだった。申し込んでいたインターネットは思ったより早く13日に開通した。僕が足を踏み入れた25年ほど前は、この村の人たちはまだランプ生活をしていたのに、今やインターネットや携帯電話が使える時代だから驚きだ。すごいスピードで時代が変わってしまった。

天気が回復した昨日は、ワンコ達の世話をしやすいように、住んでいる家から近い所に移動させて、繋留する作業を行った。夏の間、ユーソッフィ爺さんが丁寧に面倒をみてくれていた。感謝しきりだ。犬たちの報告はまた改めて・・。

写真:正午を過ぎた頃の風景。11~12日のブリザードで海氷が流失後、また村の前のフィヨルドに氷が薄っすらと張り始めた。

事務局からのお知らせです。いつも山崎哲秀を応援して頂いてありがとうございます。

UP BOOKS & MAGAZINES出版より電子書籍、「エスキモー犬たちの大冒険」(写真・文 山崎哲秀)が発売されました。 → http://www.upbooks.jp/ 

山崎哲秀本人が実際に飼っていた、そり引きエスキモー犬たちが登場する写真絵本です。

11月9日(日)カナック 晴れ -20℃前後

20141109

 まだ・・・カナックで足止めされている。水、木、金曜日と空には厚めの低い雲が掛かっていたから、ヘリコプターはキャンセルに。そして土曜日と日曜日の今日はすこぶる快晴。格納庫のあるPituffik(ピトゥッフィッ)もSiorapaluk(シオラパルク)村も、全部天気が良さそうなんだけど・・。シオラパルク村の親友ケットゥットゥからは「今日もセイウチが獲れたぞ~!」と電話が掛かって来るし、むむ~っ・・。早くワンコ達も待つシオラパルクに入りたいが、ヘリコプター定期便は来ず。休日は休日らしい。それにしても水曜日と金曜日の定期便が2便ともキャンセルになり、せめて天気が回復した昨日の土曜日くらいは動いてくれてもいいのになあAir Greenland。待っている地元の乗客もたくさんいるのに。飛ばなくてもちゃんと収入になる保護があるらしいです。そりゃないよォ・・。

 でもそのぶん、日本でやり残してきた事務仕事をかなり済ませることが出来た。これはこれでヨシとしよう。明日は飛びますように。

写真:昨日に続いて、今日もすがすがしいカナックの空。

11月5日(水)イルリサット 曇り、カナック 晴れ -15℃前後

201411051

 AM9時半頃、Ilulissat(イルリサット)を出発。北西部地域のQaanaaq(カナック)まで、途中Upernavik(ウパナビック)という町を経由するフライト予定だが、ウパナビックが天候不順とのことで、ダイレクトでカナックの町へ。ちょうど正午頃到着。そのまま乗り継いで目的地のSiorapaluk(シオラパルク)村に定期便のヘリコプターで移動予定が、シオラパルク周辺の天気が悪いらしくキャンセル、今日はカナック泊となった。Air Greenland持ちで、町の小さなHotel Qaanaaqへ泊ることとなった。この北西部地域は僕の北極のホームグラウンドで、知人友人が多く、挨拶に回るのが大変なので、密かにシオラパルク入りする予定だったのだけど・・(笑)。すんなりシオラパルク入りして、活動を進めて行きたかったが仕方がない。海は中途半端に薄っすらと氷が張っていて、船も犬ぞりも出せない時期。空路に頼るしかないのだが、一週間以上も悪天に掴まることがあるので、明日はフライトがありますように。

写真上:薄っすらと海の表面に氷が張っている、カナック前のフィヨルド(飛行機上より)

写真下:カナックより海を望む。

201411052

11月4日(火)イルリサット 晴れのち曇り -10℃

201411042

 予定通り今日もイルリサット泊。僕がこれから滞在する北西部地域にはいない、獣医さんに会っておきたかったのと、またこれも北西部地域では手に入りにくい、装備や道具関係の通販が出来るかの確認など、やっておきたいことがあったので、昨日の夕方にイルリサット入りして、今日一日動ける時間を作った次第。予定通り用事を済ませることが出来た。

町を歩いていると、友人のヨーゴに声を掛けられる。近年は仕事を求めてイルリサットへ移住する、北西部地方の人たちも多い。

写真:港の停泊中の貨物船。

※明日5日は、最終目的地の北緯78度付近にある、グリーンランド最北のシオラパルク村に移動予定です。シオラパルク村の借家にインターネットが開通するのは今月中旬頃になると思います。しばらくブログ更新は出来ませんが、開通次第にまた更新したいと思います。

11月3日(月)コペンハーゲン 雨、イルリサット 晴れ

20141103

 コペンハーゲンは今回は素通り。11月3日の今日はグリーンランド入り。グリーンランドはデンマークの自治領ということもあり、Air Greenland航空の定期便がコペンハーゲンからグリーンランドへと乗り入れている。コペンハーゲンからグリンーンランド・Kangerlussuaq(日本語読みをするとカンガルスアックになるが、実際はカギャッルスアッ、カギャッルッホッアみたいな言い方が現地読み)に、まずは乗り入れ、乗り継いでIlulissatへ。今日はここ泊まり。イルリサットは、世界遺産のイルリサット氷河がある、観光ではすっかり有名な場所。

カナックへの定期便が水曜日の週一便なので、明日もイルリサット泊の予定を入れている。2つほど用事を済ませたい。

写真:夕方4時頃のイルリサットの港と町。

 10月31日、大阪から東京に移動。午後から書籍関係の打ち合わせ後、立川の国立極地研究所へ。

11月1日はFENICS → http://www.fenics.jpn.org/ のイベントに参加。

そして11月2日、成田空港から出国し、先程デンマーク・コペンハーゲン着です。いよいよ今シーズンの北極活動が始まります。有佐&勇希君との時間をゆっくり作れないまま、バタバタとした出国になりました。応援・支援を頂いてる皆様にも、十分のお礼が言えてないような気がします。申しわけありませんでした。合わせて今シーズンも送り出して頂き、ありがとうございます。明日11月3日、グリーンランド・イルリサットへ移動。11月5日にはベースとなるシオラパルク村に到着予定です。今シーズンも今後に繋がる取り組みにしたいです。

近日中に北極通信第43号配信の予定です。またブログも更新していきますので、時々でも覗いて下さい。

↑このページのトップヘ