犬ぞり案内人 山崎哲秀 ー北極圏をテツがゆくー

グリーンランド北西部地方に古来から住む、エスキモー民族から伝承を受けた犬ぞりを操り、“アバンナット北極プロジェクト”に取り組む、山崎 哲秀のブログです。 このブログでは、北極遠征中や日本滞在中の活動の様子を紹介します。 アバンナットプロジェクトの詳細は、山崎哲秀のホームページhttp://www.eonet.ne.jp/~avangnaq/ をご覧下さい。山崎哲秀の連絡先は、同ホームページに記載しています。

2014年12月

12月27日(土)晴れ -25.0℃

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 しばらくブログをサボってしまった。この4~5日のことを簡単に報告すると、一年で最も苦手な日(笑)、イダコタ(家族)のいないクリスマスは、シオラパルク村であちこちの家庭から声を掛けてもらい、夕食を御馳走になったりして嬉しかった。日本の有佐&勇希に電話をすると「メリ~クリスマス!サンタさん来たよ」と、勇希君が言うのにはビックリ(笑)。

そしてこのところ天候が安定していて、25日にこの冬初めて、犬ぞりで海氷上に乗り入れることが出来た。昨日26日に測定してみると海氷の厚さは35cm。ドカンっと、強烈なブリザードが吹けば、まだまだ割れてしまうかも。その他ルーチンワークといった作業を、変わらず毎日続けています。

 引き続きワンコ近況は「キャヨット」5歳。昨シーズンは、懐いてはいたけど体に触れられるのを警戒していた。でもこの冬は随分とすり寄ってくるようになった。無口なマイペース型のワンコで、ハロットを子分としている。チーム一の体格の良さは変わらず。

写真上:この冬初めて海氷上に犬ぞりを乗り入れる。雪が全くなく、ツルンとしていて、犬たちも走り辛そう。

写真下:「キャヨット」5歳(オス)。

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12月22日(月)晴れ -21.3℃

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 冬至、それも新月と重なる朔旦(さくたん)冬至とのこと。こちらではなんと、オーロラが!トリプルで縁起がいいですね!!

長い極夜も、折り返しを迎えました。

写真:朔旦冬至の日、空を彩るオーロラ。アラスカやイエローナイフのような鮮やかなオーロラはここでは出ないけど、見惚れてしまいます。

12月20日(土)晴れ -22.7℃

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 昨日ようやく、この冬初めて海氷の上を歩いた。海氷のデータ収集をしてみると、氷厚は22cm。表面は雪が無く、ツルンと光っている状態。こういう氷の上を、犬を長距離、長時間走らせると、足裏の肉球をすり減らして怪我をしてしまう。

 今日のワンコ近況は「アングア」。今年7歳で、超ベテランの域に入った。右目の下に大きなケンカの傷跡があり、注意して見ていると、どうも右目の視力がほとんどないような気がする。餌の肉魂を口元にヒョイと投げてやると、普通はどの犬たちもパクッと上手く銜えて受け取るのだが、アングアはこの冬は、それが出来ない。でも元気なので、走行には差支えない。歳をとっても相変わらず甘えん坊は変わらず(笑)。

写真上:昨日、この冬初めて海氷の上に乗る。表面はツルンと、スケートが出来そうな感じだ。奥はシオラパルク村の灯。

写真下:超ベテラン犬「アングア」。右目が気になります。

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12月18日(木)晴れ -21.5℃

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 1998年と2000年に、研究者の的場澄人さん(以下、的ちゃん)と取り組んだ、シオラパルク周辺地域での観測活動が、15年以上の時間を経て、一つの形となった。まだ若かった二人が、無い予算をお互いに持ち寄って実現させた観測活動だった。その頃は、的ちゃんもまだ駆け出しの研究者で、僕もまた犬ぞりを活用しての観測活動に、志向が傾倒していった頃で、お互いの意志が合致して実現した挑戦だった。そして的ちゃん曰く「最近シオラパルク(カナック)周辺域で実施中の、日本の観測調査で得られているデータと、上手く繋がってきた」というのだ。

そういった意味でも、研究者の世界はすぐに成果が表れるのではなく、根気と時間がかかるものなのだ、と改めて感じさせられる。

そして僕も今の北極活動で掲げている目標は必ず実現すると、これからも信じて取り組んでいくしかない。

 

論文が掲載されているのは、雪氷学会のBulletin of Glaciological Research という雑誌 → http://www.seppyo.org/bgr

論文 → https://www.jstage.jst.go.jp/article/bgr/32/0/32_79/_article

写真上:(上)1998年、Meehan氷河を犬ぞりで登行中、的ちゃん(左)と。(下)内陸氷床を移動中に記念撮影。

写真下:サンプリングをする的ちゃん。

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12月16日(火)晴れ -18.9℃

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 週間天気予報では、しばらく強風が吹かないみたいだ。海氷がうまい具合に発達するか?期待しよう。

 立て続けに今日もワンコ報告で「ヌターバル」。昨シーズン生まれて犬ぞりデビューしたので、「ヌターバル(新しいヤツ)」と名前を付けたが、今シーズン2歳となり、また冬を迎えた。落ち着きのなさは相変わらずだけど、まあ若いから仕方がないか(笑)。体は小柄だったのが、中型くらいの大きさになった。元気に走っています。

写真:今シーズンも落ち着きのない「ヌターバル」。

12月13日(土)地吹雪のち晴れ -19.0℃

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昨日未明から、今日の午後3時頃まで吹き荒れた。海氷は相変わらず流失。参ります・・。作業はたくさんあるから退屈することはないけど、犬ぞりでスッキリと、海氷上を走りたいところ。同じ毎日が過ぎていきます。

新たな作業で、今シーズンも犬ぞり用のソリ製作を始めた。昨シーズン作った長さ4.25mのソリよりも50cm短い、一回りコンパクトなソリを製作予定。時間の合間にのんびり作っていくことにしよう。

 今日のワンコ近況は「ワサビ」。1月生まれの4兄妹の中では、一番すんなりと、手間がかかることなくソリを引き始めた。性格はオス兄弟の中では、最も優しそう。さて、まず紹介した4兄妹&コテツ君、まだまだ体が大きくなるでしょう。

写真:手間がかかることなくソリを引き始めた「ワサビ」君。

12月10日(水)吹雪のち曇り -15.4℃

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 早朝の吹雪はAM9時頃には止んだ。10時にお店が開くのを待って、買い出しを済ませたあと、イッドゥルアホッというところまで歩いて、海岸沿いの定着氷の偵察に出かけた。11月中旬に行った時は、途中で定着氷が切れていて、犬ぞりを通すことが出来なかったけど、なんとかなりそう。次は犬ぞりで抜けてみようか。まだ海氷上には乗り入れることが出来ないので、ダメな時はダメなりに、可能な範囲で犬たちを走らせている。

前置きが長くなってしまったが、今日はワンコ近況報告の続きで「ガリッ」。ガリッも1月に生まれたこの冬デビューのワンコだが、4兄妹の中では、今のところ一番体が大きい。性格も強そうな感じです。

写真:「ガリッ」。眉間から鼻にかけてが黒毛で、よく似た毛並のカギャと見分けている。

12月8日(月)晴れのち低い地吹雪 -14.8℃

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 先日、日本から届いた観測道具。いよいよ明日からサンプリングを始めようと、エアロゾルサンプリング用のポンプ器の充電をするべく、コンセントを差し込んだ。しばらくすると「グイ~ン」と、充電器から音が響き始め、「こんな音するかなあ?」と覗き込んでいて「あっ!」と気付く。慌ててコンセントを外したがToo late‥。100V用の充電器で、変圧器を入れないとダメだった!充電器をヒートさせてしまった。ポンプの回路もやってしまったか・・?ほんの15~20秒の出来事でした。す、すまん、原ちゃん・・。データ収集のスタートが遅れてしまいそうです。

かなり凹んでいる・・。

写真:ポンプと充電器。

12月7日(日)雪のち曇りのち晴れ -14.8℃

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 1月生まれの4匹の犬たちは、成犬に混じって橇を引く練習を始めて3順目を終えた。まだ海氷が定着せず長い距離は走れないが、基礎的なことは順調に覚えている。そして今日から、8月生まれのコテツ君も、生後3か月をとっくに過ぎてしまったので、犬ぞりレッスンを開始した。まだ体が小さいので、橇を引くことは出来ないけど、繋がずにフリーで犬ぞりに付いて走らせた。母犬のママットルも同行させたが、いい感じで犬ぞりに付いてくる。

写真:コテツ君も犬ぞりレッスンを始める(左奥の白いのがコテツ)。3頭の成犬と一緒にフリーで走らせる。

12月6日(土)曇り -10.3℃

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 昨日のヘリコプター定期便で、原ちゃんより観測器材が到着。まずは気になっていた、気象計の設置完了です。

写真:昨シーズンと同じ地点に、気象計を設置。(実際の周囲は、殆ど真っ暗の季節です)

12月5日(金)晴れ(やや高い地吹雪を伴う) -13.4℃

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 12月に入り、村はクリスマスのモードとなり、村の人たちの家の窓には、デコレーションが始まった。僕も家族といれば飾り付けなんか考えてみてもいいのだけど、一人でいるとなかなかクリスマスモードには入れない(笑)。一度くらい、一緒に過ごしてみたいなあ。有佐&勇希君とは電話でよく話をしています。

今日もワンコ近況で、1月末に生まれた4兄妹の1頭「カギャ(岬)」。どちらかというと大人しい性格のような気がする。兄弟のガリッと毛の模様が似ていて、見分け違えることがあるが、眉間から鼻にかけて毛が白いのが「カギャ」です。

写真:「カギャ」。

12月2日(火)地吹雪のち晴れ -9.6℃

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 昨夜は猛烈に吹き荒れた。早朝に風がだいぶ弱まり小康状態となった。

 今日はワンコ紹介で、生後10か月を過ぎたメス犬「リッカ」。今年の1月末に生まれた仔犬たちも、すっかり体が大きくなった。「リッカ」もメチャクチャ元気で、近寄ると凄い勢いで飛びついてくる。母犬のママットル同様に、食い意地がすごい(笑)。他のワンコ達を押しのけてでも食べようとする。犬たちをずっと飼って見てきた中では、どうしてメス犬は食い意地がすごいのだろう?どのメス犬も共通だなあ・・(笑)。でも愛嬌あるからよし!

写真:やはり食い意地が激しい「リッカ」。

12月1日(月)晴れ -17.1℃

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 今シーズンは11月に一度も海氷上に犬ぞりを乗り入れることが出来なかった。沿岸で凍った定着氷で犬たちのトレーニングを続けている。

強風で海氷が流失を繰り返すにしても、近年でも11月に何度かは、犬ぞりで乗り入れることが出来てたんだけど・・。以前だと早くて10月下旬には犬ぞりで海氷上を走っていた。一方、60kmほど離れた隣り町のカナックがあるフィヨルドでは、例年通りすでに犬ぞりが走っているようで、カナックの町から70kmほど離れたフィヨルド奥にあるケケッタ村との間も、すでに犬ぞりが走っているとのこと。

温暖の影響もさることながら近年、シオラパルク村の沖合に、海底にひっかかって聳える大氷山が全くないのも、強風が吹くとすぐに海氷が流失してしまう原因の一つになっているみたいだ。以前は沖合の海上のあちこちに、大きな氷山が海底にひっかかっていた。それで海氷が上手くブロックされていたようだ。今夜はブリザードの予報。また薄く張った氷が流れてしまうなあ。

写真:午後のシオラパルク村前の海氷。薄く張った海氷に、南に向かって開水部が伸びる。

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