犬ぞり案内人 山崎哲秀 ー北極圏をテツがゆくー

グリーンランド北西部地方に古来から住む、エスキモー民族から伝承を受けた犬ぞりを操り、“アバンナット北極プロジェクト”に取り組む、山崎 哲秀のブログです。 このブログでは、北極遠征中や日本滞在中の活動の様子を紹介します。 アバンナットプロジェクトの詳細は、山崎哲秀のホームページhttp://www.eonet.ne.jp/~avangnaq/ をご覧下さい。山崎哲秀の連絡先は、同ホームページに記載しています。

2015年02月

 2月23日(月)曇り シオラパルク -24.3℃

 太陽が日に日に高くなる。本格的な犬ぞりシーズンの季節だ。このあとの予定は、3月に入ると、20歳の頃からお世話になっている知人の方が、シオラパルクを訪問することなっており、行動を共にすることなっている。そして3月末か4月初めにはシオラパルクよりさらに北の、イングレフィールドランドへ、長期で犬ぞりで出かける予定。シオラパルク在住の大島さんや猟師の人たちと行くのだが、僕の場合は観測拠点設営の目標に向けての、現地探査が大きな目的です。

そして5月は、東グリーンランドでの日本隊の観測調査支援をすることになっており、帰国は6月初めになります。今しばらくこちらでの活動を頑張ります。

2月17日(火)晴れ カナック -30.4℃、シオラパルク -29.9℃

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 太陽が約4か月振りに戻った。

 2月15日から、産休のママットルを除く、全14頭の犬たちと再びカナックへ。翌日戻る予定だったが、16日は天気が良くなく、17日の今日シオラパルク村に戻って来た。相変わらずカナック前の海氷上でテント泊。停滞の16日は朝一で、買い出しをしたかったバケツと灯油ランプを、カナックの店に買いにいったあと、すぐテントに戻る。上陸はそれだけ(笑)。この冬デビューの若い犬たちも、長距離を走ることで、着実に体力をつけてきている。まだ号令を無視するようなことがあるので、このあとビシッと教えていくことが課題。

今朝、薄明るくなり始めたAM8時半頃にカナックを出て、シオラパルクに到着したのがPM2時半頃。村に向かう途中に、山の上の方からオレンジ色の明りが染まり始めた。村についてしばらくすると太陽が顔を出した。地形の関係で、カナックはまだ太陽が出ていなかったが、シオラパルク村では昨日少し太陽が顔を出したとのことだった。

写真上:シオラパルク村のある裏の山がオレンジ色に染まる。

写真下:約4か月ぶりに戻ってきた太陽。犬たちの影がのびる。

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2月12日(木)晴れ -32.2℃

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 あと5日ほどで4か月近く続いた極夜も終わり、太陽が顔を出す。今年に入ってからは、すっかり冬らしく冷え込んでいる。天気がいいと今は、朝の8時頃から東の空が薄明るくなり始め、PM7時になってもまだ西の空に残照がのこる。それでも太陽は顔を出さないという不思議な光景です。

写真:明るくなり、写真が撮りやすくなってきた。村の端に繋留しているワンコたち。

2月9(月)雪のち薄曇り -34.5℃(海氷上観測地点)

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  さかの、ママットル!

カルタの文句になりそうですが、まさかのママットル!です。

実はメス犬の「ママットル」がまたまた・・。1月25日の走行を最後に、産休に入っていて、8日夜の9時頃から11時頃にかけて6匹の仔犬を産みました!数日前に雪の下から枯草(干し草)の「イビ」を、犬ぞりのついでに一杯取ってきて、ママットルの下に敷いてやった矢先でした。ドンピシャですね(笑)。

今、僕のチームは15頭のワンコ達がいて大所帯で、これ以上増えると面倒を見きれないので、今回は見送ろうと、12月に発情期を迎えた時は、隔離したのだけど・・(笑)。それでも、村で仲のいいケットゥットゥが仔犬を欲しいとのことで、もらわれていくことに決まっています。同じチーム内だと、血が近くなりすぎるので、こちらの人たちも上手く調整していきます。ママットルは、ケットゥットゥが、生まれた仔犬たちと一緒に自分で世話をするとのことで、しばらく留守になります。それにしてもエスキモー犬たちの生命力には脱帽です(笑)。

写真上:出産直前のママットル。

写真下:生まれた仔犬たち。

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2月4日(水)雪 -24.3℃

 時代の流れとその速度は、どこで変わってくるのだろう?このグリーンランド北西部地域は、時間の流れが緩やかで、エスキモー文化が根強く残された、最後の聖域でもあった。だけど10数年前、この地域最大のカナックの町に、飛行場が出来て以来、外界との行き来がやりやすくなってからは、時代の流れの速度が恐ろしいほど早まり、急速に古来の文化が失われている。僕が足を最初に踏み入れた25年ほど前は、この地方には全部で6つの村落があったが、この10年ほどで2つが廃村になってしまった。飛行場が無い頃は、小さな村落に住んでいた人々の憧れは、この地区最大の町、カナックにあったように感じていたが、今はこの地方を離れて、南部の地域へと目線が変わり、移住する人々や家族が顕著だ。多い時でカナックの人口は800~900人と聞いていたが、今では600人ほどだ。僕が滞在しているシオラパルクにしても今は40人ほどと、以前の半数くらいになってしまっている。

猟師の数が多く、狩猟をする犬ぞりがあちこちと行き来していて活気があり、本当に面白い地域だったが、めっきり寂しくなってしまった。専業猟師は殆どいなくなってしまった。地域の地球温暖などの問題ではないと思う。近年、毛皮などの市場も、動物保護などの観点から締め出されたりなど、専業猟師では生活が出来ず、比較的に現金収入になる「漁師」へと転換したり、安定収入のある定職に就くようになってきた。そうなるとやはり南部の大きな町へと目が向いていくのか?時の流れが緩やかだったあの頃には、もう戻れなく、最後に残された昔ながらのこの地域のエスキモー文化も、このまま急速に衰退していくと思う。今しばらく、この地域の移り変わりを見つめていこう。

2月2日(月)雪のち晴れ カナック -23.8℃、シオラパルク -29.5℃

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 2月に入り、こちらは冬本番。犬たちを長距離走らせたくて、1泊で隣り町のカナックへ小旅行に出かけてきた。特に今シーズンデビューの4頭のオス犬(ワサビ、カギャ、ガリッ、コテツ)が、そり引き犬としてどれ位のところまで成長してきたか、確認したい意味合いが大きかった。僕もこの冬初めての泊りでの犬ぞりになるので、余裕はないと思い、観測課題関係の道具は村に置いていった。

2月1日は13頭のオス犬たちと、まだ暗い中AM8時半頃シオラパルク発。カナックにはPM2時半頃着。距離と時間はあまり関係なく、海氷や積雪、気温などなど、色んなコンディションで、進める距離、時間が全然変わってくるけど、今回は海氷の状態もよかったが、早かったほうだと思う。

カナックの町の前の海氷にてテント泊。町には行かず、犬の世話やら色々してると夜の時間帯になり、そのままテントで宿泊。シオラパルクで仲のいい、ケットゥットゥから、カナックにいる息子のイガーパルに渡して欲しいと、預かり物があったが、イガーパルがPM7時頃、わざわざテントまで受取りに来てくれた。結局今回は、チェックポイント代わりに(笑)、イガーパルに会っただけで、翌朝の9時半頃、東の空が薄明るくなり始めた頃にカナックを出発。シオラパルク村に到着したのはPM4時頃だった。昨シーズンまでの9頭のワンコ達は、この冬初めての長距離を2日間、問題なく走り切った。1歳のワサビ、ガリッ、カギャは走る体力はそこそこついているが、まだまだベテラン犬たちに比べると課題はあるけど、時間が解決してくれそう。生後5か月半のコテツ君は、頑張ったが、復路3分の2ほどのところで、かなりバテてきたので橇から外してフリーで走らせてやる。それでも残り10kmほどのところで、犬ぞりからどんどん遅れるようなったので、橇に乗せてやった。でも生まれてこの時期で初長距離走行をここまでやれたら、これも時間が解決してくれる。体格も普通の生後5、6か月よりも大きく、かなりいいソリ引き犬になるのでは、と楽しみにしている。

犬たちをしばらく休ませてから、餌をあげたりなど作業をしていると、あっという間にPM8時を回った。

写真:カナックの町の前でテントを張る。このピラミッドテントは、支援をして頂いているmont-bell社が製作してくれたテントで、このテントも今回がデビューでした。

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