犬ぞり案内人 山崎哲秀 ー北極圏をテツがゆくー

グリーンランド北西部地方に古来から住む、エスキモー民族から伝承を受けた犬ぞりを操り、“アバンナット北極プロジェクト”に取り組む、山崎 哲秀のブログです。 このブログでは、北極遠征中や日本滞在中の活動の様子を紹介します。 アバンナットプロジェクトの詳細は、山崎哲秀のホームページhttp://www.eonet.ne.jp/~avangnaq/ をご覧下さい。山崎哲秀の連絡先は、同ホームページに記載しています。

2015年12月

12月31日(木)シオラパルク 晴れ -25.2℃

 2015年が過ぎていきます。一年の終わりに一つお知らせがあります。

 2006年から始めた「犬ぞりによるアバンナット北極圏環境調査」活動も10年の区切りを迎えました。そして、この11月に「一般社団法人 北極観測支援機構」が立ち上がりましたことを、報告したいと思います。この夏期の日本帰国中は、上京を繰り返して、これに関する打ち合わせを続けていました。僕も理事として参加させて頂いてます。北極へ、それぞれの想いを抱いた有志が集まってスタートした民間機関です。個人的には「グリーンランド極北とカナダ極北にそれぞれ、日本の観測拠点を設営する」という、兼ねてからの夢があります。少しずつステップアップして、実現に辿り着きたい。これからも継続していく犬ぞりでの活動に加えて、新たな北極活動の展開を迎えます。今後とも応援を宜しくお願い致します。気持ち新たに2016年を迎えたいと思います。

近いうちに“(社)北極観測支援機構”のホームページがインターネットにアップされる予定です。詳細はホームページを見て頂きたいですが、また開設され次第にアナウンスをしたいと思います。

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12月29(火)シオラパルク 雪 -24.4℃

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 年内に一巡目のワンコ報告をすることができました(笑)。ワンコ近況の最後は「アーベェ」(オス8歳)。アングアと並んで超ベテランの域に。チームのボス犬であり、リーダー犬でもある。両方の資質を持ったワンコには、なかなか出会えないけど、他のワンコたちとの兼ね合いが良かったみたいで、たまたま僕のチームの中ではボス犬となり、またリーダー犬のセンスも持っていた。前にいたチームでは、ボス犬ではなく、リーダー犬でもなかったとのこと。今シーズンは若いワンコを、アーベェと一緒に先頭を走らせて、次期リーダー犬を育てていきたいと思っている。

写真:落ち着いてて、大人しいと思いきや、喧嘩も強い「アーベェ」

12月28(月)シオラパルク 晴れ時々曇り -25.1℃

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 19日に痛めた腰が、ようやく回復してきた。直後の2日ほどは、歩くのも苦痛だったが、力仕事も普通に出来るようになってきた。もどかしい時間だった。

今日のワンコは「ワサビ」(オス2歳)。リッカ&ガリッとは兄弟(妹)で、それぞれ性格が違うが、3頭の中では一番冷静で落ち着いている。もの覚えもいいみたいで、安心してみていられる。

写真:餌を食べたあとの「ワサビ」。

12月27(日)シオラパルク 晴れ -26.8℃

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 穏やかな天気のいい一日。24~25日と悪天だったので、今夜は少し遅れての村のクリスマス会。食事して、聖歌をうたい、プレゼントの交換と続いていった。キリスト教が浸透しているので、クリスマスはやはり一大イベントですね。

今日のワンコは「コテツ」(オス1歳)。チームでは最年少で、昨シーズンよりも顔から幼さが消えて、さらにキリっとしたように感じる。寡黙なタイプで、利口そうなので、数年後が楽しみだ。

写真上:村のクリスマス会へ。クリスマスツリーを囲んで聖歌をうたう。

写真下:表情に幼さが消えてきた「コテツ」

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12月26(土)シオラパルク 晴れ -18.4℃

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 24~25日は、この冬初めての強烈なブリザードが吹き荒れた。風速は20m/sを越え、外に出ると吹き飛ばされかけたので、慌てて家に戻った。そういった中、シオラパルク村もクリスマスが終ったが、25日の夜は隣りに住んでいるケットゥットゥ家族が夕食に呼んでくれ、クリスマスの雰囲気を味あわせてもらった。ちなみに日本の家族にTELをすると勇希君は、「サンタクロース来たよ~!」とのこと。何をもらったんだろ?

今日の午前中になって、ようやく風が止んだ。犬たちの様子を見に行くと、雪が吹き溜まって、埋もれかけていたワンコが6頭ほど。慌てて掘り起こしてやる。小一時間かかった。

 今日のワンコは「ヌターバル」(オス3歳)。生まれて半年くらいの時に譲ってもらったワンコで、その時に「新しいヤツ」という意味の名前を付けた。今年で犬ぞりデビューして、早くも3シーズン目だ。母犬はママットルで、餌の食いっぷりが、やはり良く似ている。食べる時には全く冷静さを失ってしまいます(笑)

写真上:クリスマスのケットゥットゥ家族。

写真下:食べる時は全く我を忘れてしまう「ヌターバル」

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12月22(火)シオラパルク 晴れ -32.9℃

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 冬至。極夜の折り返し。太陽が戻って来るのは2月17日頃。

クリスマス前の最後のヘリコプター便が、昨日に続いて今日も午後遅くにやって来た。12月13日に日本の有佐が送ってくれた郵便小包が、なんと早々に到着。びっくりした。昨年のこの時期は1ヶ月半ほどかかったのに。聞いた話によると、イルリサットからカナックまでの週一の定期便では、物資輸送が間に合わないとのことで、最近は旅客便以外に週一回、貨物便が飛んでいるらしい。やたら運賃が高価だけで、あまり効率よく運航されているようには見えなかったけど、この調子でAir Greenland続けて欲しいですね(笑)。

地元在住の高槻市で応援をしてくれている、サチヨさんから、恒例の「パウンドケーキ」も小包みと一緒に入っていました!ありがとうございます。犬ぞりの行動食で食べさせて頂きますね。

 前置きが長くなったけど、今日もワンコ近況で「ナッホ」(オス5歳)。昨日のヒャカとは兄弟で、昨シーズンの兄弟ゲンカで、なんと右耳を噛み切られてしまった。片耳の「ナッホ」だけど、元気一杯です。ヒャカ以上に懐っこく、明るい性格です。今シーズンは兄弟仲良くね。

写真上:片耳の「ナッホ」

写真下:冬至の正午過ぎの南の空。明日からは少しずつ、明るい時間が増えていく。

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12月21(月)シオラパルク 雪のち晴れのち曇り -30.5℃

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 この冬一番の冷え込み。夕方に気温を測ってみると、マイナス30.5℃。予報ではさらに冷え込むとか。いいね!去年の12月より、随分と冷え込んでいる。

午後に、久々にヘリコプター定期便が村にやって来た。雪がちの天気が続いて、10日ほど来なかったんじゃないかな。クリスマス帰省で、9人ほどシオラパルク村に戻って来たとのこと。

 今日のワンコは「ヒャカ」(オス5歳)。元々は3兄弟で、僕のところに来た時は3頭ともヒャカンナッホ(太陽が照る、輝くの意味)という名前だった。紛らわしいので3分割して「ヒャカ」「カンナ」「ナッホ」と呼び分けることにしたエピソードがある。今はナッホと2頭が残っている。昨シーズンはよく、兄弟げんかをしていたが、今年は今のところ仲良くしている。特に癖もなくコンスタントに橇を引っ張ってくれる。

写真:穏やかな性格の「ヒャカ」

12月19(土)シオラパルク 地吹雪のち晴れ -22.4℃

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 昨日から9頭の犬たちと、犬ぞりで出かけ始めた。6頭からステップアップ。最終的に、明るくなる1月下旬頃までに全頭で走れるように、今シーズンのチームを調整していく予定。犬たちは順調に夏期に落ちた体力、筋力が戻ってきている。ところが・・僕のほうは昨日、腰を痛めてしまった。海氷の乱氷に引っかかった橇を動かそうとしてグキッ。体勢が悪かったのか、若い時のように、力任せでやるな、ということだな。無駄なく、さらに効率良くやれということだな・・(笑)犬ぞりから戻ってしばらくすると、腰が立たなくなる始末。ちょいと時間がかかりそう。今日は犬の餌やり、生活用水の氷山氷を浜辺に取りにいったり、日課の観測データをとったり、最低限の作業。

 今日のワンコは「アングア」(オス8歳)。リーダー犬のアーベェと共に、チーム最年長のベテラン。右端を走る癖がある。大人しく、遠慮しがちの性格は変わらず。他のワンコ達は、丸呑みで餌を争って食べるが、アングアはゆっくり味わって食べる。

写真上:「アングア」8歳。右目はケンカで付いた大きな傷があり強面だけど、大人しい。

写真下:昨日から9頭で走り始める。

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12月16(水)シオラパルク 雪 -21.1℃

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 細かい雪がサラサラと降る一日。毎日が早く、ブログの更新も気付いたら4日もしていなかった(笑)クリスマスが近くなり、隣り町のカナックに進学(中学校)している子供たちが、里帰りし始めて、村の中が少し賑やかだ。でもクリスマスをカナックの町で過ごすという家族も多く、出入りが激しい。

 ワンコ近況ばかりですみません。今日は「ガリッ」(オス、もうすぐ2歳)。リッカ&ワサビとは兄妹(弟)。この兄弟たちは、どのワンコも愛想がいい。ガリッもちょこちょこと落ち着きがないほうで、元気一杯。昨シーズンは繋いでいるロープを噛み切る癖があったが、今は治っている。人間の子供もそうだけど(自分の子供たちも)、ワンコたちの成長を見るのもすごく楽しい。

写真:写真を撮ろうとしたら、走り回っていた元気一杯の「ガリッ」

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12月12(土)シオラパルク 晴れ -28.7℃

 11月19日に少し強い北風が吹いて以来、この冬は今のところ全く強風がなく、海氷も安定している。今日は対岸のカギャ岬まで行って、海氷のデータをとってきた。気温もこの冬一番冷え込んだ。5時間半くらい外に出っ放しだったけど、帰路に風を切って犬ぞりで走ってると、少し寒かったな・・。

 今日のワンコは「アッロ」(オス5歳)。この冬はショウヤと張り合っていて、2頭でよく睨み合っている。昨シーズンまでは、全然他の犬とケンカはしなかったけど、5歳になりベテランの域に入って、少し主張が出て来たか?(笑)

ケンカも重傷になるくらいにされたら、こちらも困るけど、大所帯の犬社会。上下関係をつけたがります(笑)懐っこく明るい性格はこれまでと変わらず。

写真:主張が強くなってきた「アッロ」(日本語に直すとシャチの意味)。

12月10(木)シオラパルク 雪のち曇り -15.1℃

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 昨日から、久々に雪が降った。この季節はたいてい粉雪で、降った時間の割りには、1cmも積もってないけど・・。

 ワンコ近況が続きます。今日は「リッカ」。あと1ヶ月ほどで2歳。ママットルが母犬のリッカは、母親に似て凄く食べっぷりがいい(笑)。エサをやる時の騒ぎようはチーム一で、落ち着きのなさもチーム一。近くに行くと前脚で抱きついて来て、離してくれない。憎めません・・(笑)。あと数年もすれば、落ち着いてくるでしょう。

写真:「リッカ」。目に特徴があって、右目の周りは黒縁で、左目の周りはやや毛が薄く肌色。

12月8(火)シオラパルク 晴れのち曇り -23.7℃

 今日も犬ぞりを出して、海氷のデータをとってきた。

 写真は今日の犬ぞりと北斗七星。北斗七星を探してみて下さい。

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12月7日(月)シオラパルク 晴れ -21.4℃

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 連日いい感じで冷え込んでいる。

 そのうち村のことや、生活の様子なんかも紹介するとして、今日もワンコ近況で「ママットル」(メス)。ママットルも4歳になって随分と落ち着きが出てきて、犬ぞりで走らせても、ちゃかちゃかしなくなったので、手が掛からなくなった。ママットルの名前に相応しく、食いしん坊は相変わらず。そろそろ発情期を迎えそうな気配があり。様子を見ているところです。

 

写真上:今シーズンも変わらず愛嬌のある「ママットル」。

写真下:三日月がくっきりの正午だった。

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12月5日(土)シオラパルク 曇りのち晴れ -20.4℃

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今日も続けてワンコ近況で「ショウヤ」4歳(オス)。ショウヤの意味は醤油のこと(笑)。落ち着きがないのは相変わらず。人間に対してやや警戒心が強いワンコだけど、懐いてくれている。ショウヤは我がチームのリーダー犬でありボス犬であるアーベェのことをメチャクチャ好きなようで、いつもベッタリという感じ。馬力があって、ソリを引っ張る力はチームのベスト3に入ると思う。今シーズンも頼りにしてますよ。

写真上:写真を撮ろうとしたら、警戒する「ショウヤ」。体の横は冬毛へと変わる途中の、夏毛がまだ落ちきっておらず残ったままで、変な模様になっている。

写真下:今日の正午過ぎの南の空。今の実際の正午頃の時間帯の明るさです。空には三日月。

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12月4日(金)シオラパルク 曇り -15.7℃

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 こちらは極夜で、一日の殆どが真っ暗な季節。冬至が極夜の折り返し地点となる。少し前から月が明るかったから、しばらく朝一で犬ぞりを出して、ワンコたちを走らせたり、海氷のデータを収集したりとか野外でバタバタとしていた。今日は曇りで暗かったので、お昼頃、犬ぞりを出してきた。

 今日からワンコたちの近況報告を一頭ずつやっていこう。いつも年齢順(年長からか、若い順か)で紹介していくので、今回はランダムにいくことにする。今日は「キャヨット」6歳(数えで)。子分で仲が良かったハロットがいなくなり、やや寂しそうに孤立してしまっている感じがある。体格はチームで一番いいのに、小柄なワンコ達にも遠慮しがち。ドカン!と行けばいいのに・・。こういう時は孤立しないように、上手くしてやらないとエスカレートしてしまう。「キャヨット」は日本語に直すと、茶色の意味。

写真:少し寂しそうにしている「キャヨット」。

12月1日(火)シオラパルク 晴れ -21.0℃

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 こちらグリーンランドも師走を迎えました。冬らしい、冷え込んだ天候が続いています。

 犬ぞりチームのワンコたちを応援してくださっている皆さま、お待たせしました。ワンコたちの報告です。

昨シーズンの活動が終了して、犬ぞりが出来ない夏期の日本帰国中は、僕の犬ぞりチーム15頭の犬たちを、シオラパルク村のユーソッフィ爺さんに預かってもらっていました。9月初めに電話をした時には、全頭が元気とのことでしたが、残念なことにその後、2頭のワンコが亡くなっていました。5歳になる「ハロット」と、2歳になろうとしていた「カギャ」でした。一頭は繋いでいたペアの組み合わせが悪かったのか、喧嘩でやられたとのこと。もう一頭は病気で亡くなったと説明を受けました。実際に僕がその場にいたわけではなかったので、詳しい状況が掴みきれないのですが、2頭ともソリをよく引っ張ってくれる、年齢的にも全盛期中の貴重な戦力だっただけに、残念で仕方ありません。毎回言うことですが、多くの犬を飼っていると、全頭がずっと育ってくれるのは難しく、こればかりは仕方がないのかなあ・・。名残惜しいですが、気持ちを切り替えることにしたいと思います。あとの13頭は皆元気です。また一頭ずつ、近況を報告していきたいと思います。

写真:「ハロット(上)とカギャ(下)」

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