犬ぞり案内人 山崎哲秀 ー北極圏をテツがゆくー

グリーンランド北西部地方に古来から住む、エスキモー民族から伝承を受けた犬ぞりを操り、“アバンナット北極プロジェクト”に取り組む、山崎 哲秀のブログです。 このブログでは、北極遠征中や日本滞在中の活動の様子を紹介します。 アバンナットプロジェクトの詳細は、山崎哲秀のホームページhttp://www.eonet.ne.jp/~avangnaq/ をご覧下さい。山崎哲秀の連絡先は、同ホームページに記載しています。

2017年03月

3月30(木)シオラパルク 晴れのち薄曇り -22.3℃ 
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 さて、3月が終ろうとしている。このあとの予定だが、滞在ビザの関係で、予定通りだと426日(水)か28日(金)の定期ヘリコプター便で、シオラパルクを離れないといけない。5月~6月中旬にかけて、日本からの観測調査隊がこの地方に入ることになっており、サポートの打診を受けているが、ただいまデンマーク政府に滞在ビザ延長の申請をしているところだ。昨年あたりから、3ヶ月以上のグリーンランド滞在の規制が厳しくなっている。すでに3ヶ月延長して、180日の滞在ビザをもらっているので、許可が下りなかったら、5月上旬の帰国となり、許可が下りたら観測サポート後、6月中旬頃の帰国となる。

そんな感じで、どちらにしろ大きく動けない状況で、シオラパルク周辺を4月中旬頃まで犬ぞりで活動し、それ以降は後片付けに入らないといけない。

56月に日本で講演の依頼も幾つか受けていたのですが、予定を入れることが出来ず、申しわけありませんでした。ぜひまた声をお掛け下さい。

 

写真:今日の犬ぞり。


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3月28(火)シオラパルク 曇り -18.7℃ 
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 前脚を故障していたベテラン犬の「ヒャカ」のリハビリを兼ねて、少しだけ犬ぞりを走らせようと思ったら、あまりにも海氷の状態がいいので、シオラパルクから北のほうへ30kmほど離れた、Neqe(ネケッ)と呼ばれている場所まで足を延ばしてしまった。「ヒャカ」も重症ではなかったのか、どうやら回復した様子で、快調に走っていた。
 
Neqeまでこの時期に、気持ちよく犬ぞりを走らせることが出来るシーズンは、久しぶりだな。ここ何年も、もうこの時期には海氷が流失していることが多かったからなあ。

写真上:今は朽ち果ててしまった、Neqeの狩猟小屋。
写真下:薄っすらとハローが。
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3月26日(日)シオラパルク 曇り一時晴れ -21.1℃ 
 どうやら今日からサマータイムらしい。犬ぞりで出て、村に戻ってから気付いた。時計が1時間進んで、日本との時差は11時間遅れ。 

 「タコリリ」。「蝶々がいる」。という意味になるんだけど、何に使われるかって??面白い表現だよねえ(笑)ワンコの目の上の、蝶々模様のことを、こちらでは「タコリリ(蝶々がいる)」と表現するそうな(笑)

写真:僕のチームの「タコリリ」たち。
20170326(ブログ用)

3月24日(金)シオラパルク 晴れ -21.6℃ 
 23日から地吹雪となっていたが、今朝早くに風はおさまり快晴となった。犬ぞりで海氷測定に出かける。シオラパルクのフィヨルド内に5ヶ所、定点の目印棒を立てていて、定期的に海氷測定をしている。今日の測定点(フィヨルド内ではこの冬一番新しい氷の場所)では、海氷がほぼ1mの厚さになっていた。この2月~3月中旬は、久々に昔のシオラパルクらしい冷え込みだった気がする。ここにきて、なんだか周辺の海氷が安定している。「地球はもう温暖化していない」という説があるが、信じたいところだ。僕が犬ぞり現役のうちに、もうひと冷え込みして欲しいなあ(笑)
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今日は5頭のワンコたちと出かけてきた。足の凍傷から復帰した8月生まれの「銀河」も絶好調だ。「アーベェ」亡きあとの若きリーダー犬「コテツ」君も、先日の小旅行で見違えるほど号令の聞き分けが良くなってきた。今日から「銀河」を「コテツ」のすぐ後ろで走らせ始めた。とりあえずサブリーダーのポジション。まだ号令の聞き分けはダメで、ひたすら前に引っ張り続けるだけだけど(笑)、リーダー犬になれそうな雰囲気を持っている。「コテツ」のいい相棒になれば。

写真上:定点の目印棒と犬ぞり。
写真下:「コテツ」(左)と「銀河」。
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323日(木)シオラパルク 晴れ、強風(高い地吹雪を伴う)-19.7

 ベテラン犬の「ヒャカ」が、今回の小旅行中、2日目から前脚の調子が悪いみたいで、橇に繋いだり、フリーにしてやったり、ケアしながら走らせていたが、どうやら肩甲骨のところに気泡が溜まり、前脚が棒のようになって痛む症状のようだ。重い荷物を引っ張ったり、胴バンドのサイズが合ってなかったりなど、圧倒的に若いソリ曳き犬に多く出る症状とのことだが、ベテラン犬でも出ることがあるらしい。ここのエスキモーの言葉で「キャヒッドァットゥ(肩甲骨が悪い)」と言う。

こういう時、獣医がいないこの場所では、飼い主自ら処置をほどこしてやる。背の肩甲骨の間の毛を刈り、ナイフで45cmほど縦に皮を切ってやることで気泡が抜け、症状が改善する。以前に若いワンコが、走行中にバタリと倒れて急に走れなくなった。その時にエスキモー猟師から教わった。処置のあと、見事に回復したのだ。

ということで、その時の症状と似ていて、両前脚を触ってやると痛がるので処置をしてみることに。しばらく様子を見てみよう。まだまだ走れる年齢なので、回復してくれよ。

 

写真:「ヒャカ」の肩甲骨の間をナイフで切って、オペしてやる。

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3月22日(水)シオラパルク 晴れ -32.2℃  
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 太陽が隠れている時の気温は、まだ冷え込んだりするが、昇っている時間帯が長くなり、すっかり日射が暑く感じられ、防寒対策が楽な季節となった。もう冬は終わった。 3月18~21日にかけて、11頭のオス犬たちと一緒に、120~130kmほど離れたケケッタの村へ、犬ぞりを走らせてきた。天気も悪くなく、4日間でシオラパルク村に戻って来ることができた。これは毎年、太陽が昇らない極夜の1月か2月に、テントを張りながらする小旅行なのだが、今になってしまった。連日で長距離を走ってみると、そのシーズンのワンコたちの調子もよく把握できる。やや不調気味のワンコもいるが、よく走ってくれた。僕自身のコンディションの確認の意味合いもある(いい歳になってしまったので・・(笑))
ケケッタ村は15~20人の小さな村だが、殆どが出払っており、仲のいいアグチンギア家族は村にいて、再会を楽しめた。

写真上:飲食用の氷山氷が近くにあった場所にテントを張る。右奥がケケッタ村。
写真下:雪で視程が不良の中、犬ぞりを走らせる。
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 3月14日(火)シオラパルク 晴れのち曇り -28.4

 今朝の月・・。

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 東京・板橋区にある「植村直己記念財団・植村直己冒険館」の内藤さんが、一週間の予定でシオラパルク村を訪問中。シオラパルク村は植村直己さんにとっても故郷である村。今日は内藤さんと、フィヨルド奥にあるVerhoeff氷河まで、犬ぞりで出かけてきた。内藤さんは明日、帰国の途につかれます。

 

写真上:今朝の月。

写真下:Verhoeff氷河下でのワンコたち。

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312日(日)シオラパルク 晴れ -30.4

 快晴が続いている。今日は氷河で、ワンコたちの登りのレッスン。

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3月10日(金)シオラパルク 晴れ -30.2

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 久々の快晴。今日の夕方は、白い月が・・。


写真上:今日の白い月。

写真下:どんどん身体が大きくなる、タロ(左)&レオ兄弟。
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3月9日(木)シオラパルク 晴れのち薄曇り -35.1
20170309(ブログ用) 太陽が戻ってから、放射冷却の一番寒い時季らしく、近年の中では、いい感じで冷え込みが続いている。寒さでこの数日はアイスフォグ状態。中旬頃から、そろそろ気温が緩み始めることと思う。

11頭のオス犬たちと犬ぞりを走らせてきた。凍傷で左前脚をやられていた「銀河」も、回復具合を見るために連れて行く。スピードが出るとまだ痛みが残っているのか、遅れがちになる。もう少しの間、無理せず少しずつ走らせていく必要がありそう。

 この冬シオラパルク村は、白熊の当たり年だ。元旦に村に現れて、エスキモー猟師に撃ちとられたのを最初に、2日前(37日)に村の西沖合に現れた白熊が撃ちとられ、そして今日もまた白熊が撃ちとられた。年間このエリアで狩猟許可されている7頭のうちの、すでに3頭がシオラパルク近辺で獲られたことになる。

 

写真:今日の犬ぞり。


3月8日(水)シオラパルク 薄曇り -34.9℃

 これまで利用していたeoblogが、3月31日をもってブログサービスを終了するので、ただいまlivedoorブログに移設中です。
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3月1日(水)シオラパルク 曇り -23.9℃

 ブログ更新の間隔が開いてしまった。色々とあった。

まずは、ブリザードが止み2月23日に、北の方へ極夜の単独徒歩探検に出かけていた、友人の角ちゃん(角幡唯介さん)が約3ヶ月ぶりにシオラパルクに帰還した。顔面はこのブリザード中にやられた凍傷がひどいが、元気な姿にホッとした。ほんとに角ちゃんは超人だ(笑)村に戻ってからは僕の家に一緒にいて、間もなく帰国の途に・・。

 

そして次に悪い知らせあり。今年10歳のリーダー犬「アーベェ」が老衰で亡くなってしまったこと。また立て続けに不運は起るもので、ベテラン犬「アッロ」(6歳)もアクシデントで亡くなってしまったこと・・。この2頭の死で、チームの戦力がガクッと落ち込んだ。

あとこれは良い知らせ。先日のブログでも報告した「銀河」の左前脚の凍傷は、思ったよりは軽かったようで、間もなく戦列復帰できそうな気配。「タロ&レオ」合わせて3頭の新鋭に、今後(来シーズン以降)は期待を掛けることになる。

 

もう一つ。グリーンランドでインフルエンザが猛威を振るっていて、このアバンナッソア地方も例外ではなく、隣り町カナックからシオラパルク村にも持ち込まれ、村中で蔓延。僕も2月24~26日かけて身体が気怠く動かず、寝込んでしまった。持参の薬品を飲んで処置し、ようやく犬ぞりを出したり、普通に動けるようになってきた。

と、こんな感じの約1週間でした。いいことも悪いこともあったけど、全体的には、可愛がっていた2頭のワンコの死が、沈んでいる気分のほうを半分以上に占めさせているかな。

このあと3月15日までに、別々に2組の日本の方がシオラパルク村を訪れることになっていて、受け入れを頼まれています。

写真:イグルーを作る「カガヤ」。(2月27日に、角ちゃんと共にイグルー作りのレクチャーを受ける)

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