犬ぞり案内人 山崎哲秀 ー北極圏をテツがゆくー

グリーンランド北西部地方に古来から住む、エスキモー民族から伝承を受けた犬ぞりを操り、“アバンナット北極プロジェクト”に取り組む、山崎 哲秀のブログです。 このブログでは、北極遠征中や日本滞在中の活動の様子を紹介します。 アバンナットプロジェクトの詳細は、山崎哲秀のホームページhttp://www.eonet.ne.jp/~avangnaq/ をご覧下さい。山崎哲秀の連絡先は、同ホームページに記載しています。

2018年01月

2018年1月29日(月) シオラパルク 晴れ -26.7℃
 久々に定期便のヘリコプターがやってきた。この冬は、この何年かのうちでは、12月から1月にかけての流通が、すごく悪かったなあ。年々この地域が置き去りにされていく感じがするのは、気のせいだろうか。ひと昔まえの体制のほうが良かったような・・。
20180129(ブログ用)

 今日のワンコは「ヌターバル」オス5歳。生まれたばかりの時に譲り受けたので、「新しいヤツ」という意味の名前をエスキモー語で付けたが、もう5歳になり、ただいま全盛期の年齢だ。僕のチームのワンコたちは、人懐っこいワンコが多く、ヌターバルもそうだなあ。僕がそばに行くと、お腹を向けて「触ってくれ」と尻尾を振りながらアピールする(笑)。

写真:「ヌターバル(新しいヤツ)」5歳。

 2018128日(日) シオラパルク 晴れ -26.8

 

 ワンコ近況で「ヒャカ」(オス)7歳。前回のナッホと兄弟で、やっぱりベテランらしく安定感があって、手間も掛からないワンコ。兄弟揃って人懐っこい。昨シーズンは一時怪我をしてしまったが、この冬は怪我なく過ごしてくれますように。これからが本格的な犬ぞりシーズンだよ。

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北海道のマイナス32℃まではいかないが(笑)、こちらもいい感じで冷え込んできた。ここは高緯度のわりには暖かい地域だ。太陽が戻るまであと3週間ほど。日々が慌ただしく過ぎていきます。

 

写真:「ヒャカ」オス7歳。

2018123日(火) シオラパルク 晴れ -22.8

20180123(ブログ用)

 今日のワンコは「ナッホ」(オス)。ナッホも7歳の超ベテランとなった。歳のわりには落ち着きがなく、そばに行くと覆いかぶさるように飛びついてくる(笑)。体格がいいので、押し倒されそうになり、振りほどくのが大変。ソリも黙々と引っ張ってくれる。安定感あり。4月には大仕事があるから、期待してるよ!

 

写真:「ナッホ」オス7歳。

2018年1月20日(土) シオラパルク 晴れ -22.1℃
 ワンコ個別の近況。今日は「キャヨット」。今はチームで最長老となり8歳。もういつリタイヤしてもいい歳になったが、今のところまだ他の犬たちのスピードにもちゃんと付いてきていて、元気だ。チームで体が一番大きいにも関わらず、喧嘩を好まず、他のワンコたちにも喧嘩を吹っかけることもない。これから一番寒い2月を迎えるけど、頑張ってくれよ。
歳をとったワンコが生き延びるかどうか、いつも同じパターンがあって、厳冬期は老犬にとっては越せるか越せないか、厳しい季節です。このところ気温は高いけど、ワンコたちにとっては、温暖な気候のほうがいい。
20180120(ブログ用)

あと先日実施の、シオラパルク村の予防接種は、4日かけて全頭のワンコたちが終った。シオラパルク村には今回は、152頭のワンコが(生後3ヶ月以下は除く)予防&識別マイクロチップの接種を受けたとのこと。約150頭。人口40人ほどの村で、数が多いようにみえるが、犬ぞりが今以上に生活に基づいていた、10~15年前頃までの半分の数にも満たないと思う。
このあと北西部地区では、最大のカナックの町、ケケッタ村、サビシビック村でも同様の接種が実施されるとのこと(15年ほどの間で、2つの小さな村が廃村となり、今はこの地区は4つの町村から成る)。
現在の犬の個体数調査も兼ねているのかもしれない。

写真:チーム最長老の「キャヨット」。


2018年1月18日(木) シオラパルク 晴れ -14.8℃
20180118(ブログ用)

 チームのワンコたちの、個別の近況報告を始めることにしよう。
産休中だったメス犬の「リッカ」が今日から復帰した。今シーズン、初走行だ。村からフィヨルドの奥の海氷測定地点まで、他の6頭のオス犬たちと軽く走らせてきた。
仔犬たちがどうやら乳離れしたようで、少しずつ走らせ始めることに。おっぱいが走行中にまだ凍り付く可能性があるので、市販の犬用のウェアのお腹の部分に、毛皮を縫い込んでやり、胸に当ててやる。特別だよ、リッカ!

写真:犬ぞりに復帰の「リッカ」。胸当てを当ててやる。

2018年1月17日(水) シオラパルク 晴れ -18.6℃
 月曜日から、予防接種の担当者がシオラパルク村を訪れていて、村の犬たちに感染病の予防接種をしてくれている。なんでも今年から、犬識別のマイクロチップを体内に埋め込んで管理する試みが始まるそうで、僕のワンコたちも皆、予防接種&マイクロチップを埋め込んでもらった。
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ただこの北西部地方全体でいうと、犬ぞりが今のところまだ、冬の生活の交通手段に利用されている割合が大きく、犬の数が半端じゃないのと、老衰・体調不良で亡くなっていく犬や、産まれてくる犬もひっきりなしで(避妊、去勢手術を受けれる施設はないので)、入れ替わりが激しく、管理しきれるのだろうか・・?ワクチンもなかなか届かないし・・。しばらく何年か続けて、有効かどうか見極める必要があると思う。興味を持って見ることにしよう。

写真:マイクロチップを肩甲骨のあたりに埋め込んだ(注射器タイプで、打ち込む)あと、反応するか機器で確認をしている様子。

2018年1月16日(火) シオラパルク 晴れ -20.5℃
 13日から15日未明にかけては、最強には程遠かったが、この冬一番の「アバンナット(強い北風)」が、内陸から吹き下りた。吹き下ろしの「アバンナット」は、シオラパルク村の風物詩だ。時には「ゴォ~!」っと、風を切りながら、家を揺るがす。
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シオラパルク村の南の対岸、カギャ岬~西10kmほど沖合の海氷が動いて海が開いた。

写真:南から西の沖合の海が開いた(横の黒い線が、沖合いに開いた海)

2018年1月14日(日) シオラパルク ブリザード~地吹雪 -15.6℃
 昨日から、風が吹き荒れている。明日あたりまで続きそうな気配。仔犬たちは外での小屋生活に、すっかり慣れたが、舞い散る雪でどうしても毛の表面に粉雪がへばり付き、表面の毛がパリパリに凍り付いてしまったので、毛が乾くまで、夕方に家の前室に一時避難。まだまだ手が掛かり、大人のワンコのようにはいきません。それでもどんどん成長し、すでに全長は40cmを越えたんじゃないかな。
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昨夜は数時間おきに、仔犬の様子をみがてら、犬小屋の周りを除雪したりして、今日はやや寝不足気味。
極夜の終盤は、いつも生活のリズムがメチャクチャになるなあ・・。

写真:前室に一時避難の仔犬たち。

2018年1月9日(火) シオラパルク 晴れ -23.1℃

 産休のメス犬「リッカ」を除いて、この冬初めて全頭で走って来た。今日は海氷測定の作業はなしで、ワンコたちのためと、僕も楽しむための走行。チームはいい感じでまとまってきた。
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極夜も折り返して3週間近くが経ち、南の空もだんだんと明るくなっている。太陽が戻るまで、あと40日ほど。

1月末頃には、隣り町のカナックへ長距離を走らせるのと、ワンコの補強も兼ねて行きたいと思っている。その頃には仔犬も橇に乗っけて、一緒に行けるんじゃないかな。

写真:10頭のワンコたちとレッスンがてら、走行を楽しんできた。

2018年1月8日(月) シオラパルク 曇り -15.1℃
 ここで、僕の犬ぞりチームのワンコたちの現状報告を。

 事後報告となってしまったが、12月中旬に1歳を過ぎたオス犬「レオ」が亡くなってしまった。年末年始に差し掛かかったこともあり、気持ちが暗くなるのが嫌で報告が遅れてしまった。原因はよく分からず、朝の見回りに行くと倒れていた。「レオ」は命名してくれた知人の方がいて、ほんとに申しわけない気持ちです。すみません。いい感じで犬ぞりを覚えてきた矢先だったのに・・。
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 夏の日本帰国中には、5歳になろうとしていた、全盛期のオス犬「ショウヤ」も事故で亡くなってしまってた。目が届かない帰国中の出来事で、未練タラタラだ。
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 今シーズンは戦力が落ちてしまっていて、頭を抱えている。全てがスムーズに・・というわけには、なかなかいかない。4月に研究者の観測サポートを、犬ぞりでする予定があるので、チームの補強をする必要がある。現在のシオラパルク村では、犬ぞりから離れていく人たちが多く、チームがコンパクト化され、なかなか犬が手に入らない。個人、個人でみると、僕が一番犬を持っているかもしれない。そんな感じだ。
現在の僕のチームは、オス犬9頭、メス犬2頭、仔犬オス1匹、仔犬メス3匹。獣医もいない厳しい自然環境下なので、仔犬も無事に育って欲しい。

また個々のワンコたちの近況報告もしていきます。

写真上:1歳を過ぎて、犬ぞりで走るのが楽しそうだった「レオ」。
写真下:サボらず、とにかく橇をよく引っ張ってくれた「ショウヤ」。

2018年1月7日(日) シオラパルク 曇り -18.6℃
 冬のシーズン始めは、体が寒さに慣れていなくて、マイナス10℃でも寒く感じるけど、季節が深まる毎に、マイナス10℃が暖かく感じ、しばらくするとマイナス15℃にも慣れてきて、今は体がマイナス20~25℃仕様になっている。今日は気温がマイナス20℃には下がらず、犬ぞりで走ってても「寒いなあ~」という感じでもない(笑)。これから2月にかけては、ここでは厳冬期を迎える。
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 年が明けて、昨日6日(土)まではイベントで(今はキリスト教が浸透していて、そのイベントと思われる)、子供たちが仮装して、家にお菓子をもらいにやってきたりとか、何かと村の中も盛り上がっていたが、どうやらひと段落したようだ。日曜日の今日は、ひっそりとしている。
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 5匹の仔犬たちの成長も順調で、メス犬一匹はアピレングアにもらわれていくことに決まっている。オス犬一匹とメス犬三匹を手元に残す。
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 昨年12月中旬頃から、村の犬たちが立て続けに死んでしまっていて(特に若い犬)、どうやら病気が流行っているみたいだ。仔犬たちに早く予防接種をしてやりたいが、先住民族の世界最北の村、後回しにされてしまうのか、いつもなかなかワクチンが届かないのだ。年明けに、村にワクチンを送ってくれるように、グリーンランドの政府機関にメールを送り要望している。いつ届いてくれるか・・。

写真上:今日も犬ぞりで海氷測定をしてきた。
写真中:仔犬たちの囲いを手直しして、広くしてあげた。
写真下:餌を仲良く食べる、母親のリッカと仔犬たち。

2018年1月1日(月) シオラパルク 雪のち曇り -20.3℃
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 31日は前々日、前日と地吹雪で外に出れず、作業をやり残したぶん、犬ぞりを出して海氷の厚さを測りに行ってきた。
夜は村の人たちの集まりがあり参加。そして新年を迎えた。近年は、打ち上げ花火がお店で販売されるようになり、年明けと同時にみんなが一斉に打ち上げる。15分ほど続く。市販されているとはいえ、日本より安全基準がおおらかなのか、かなり本格的な打ち上げ花火だ。夏の貨物船で運び込まれる。これ一昔前は、ライフルを空に向かってドンドンと撃っていた。
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生後一ヶ月を過ぎた仔犬たちは、新しい年に合わせて屋外での生活を始めた。古い荷置き用のパレットをもらって、犬小屋の前に囲いを作って、極夜の暗闇の中で迷子にならないようにした。

写真上:村の集まりにて。クリスマスツリーを回りながら、聖歌を歌う風景。
写真下:屋外で生活を始めた、仔犬たち。

2018年1月1日(月)
2018Greeting

 明けましておめでとうございます。グリーンランド・シオラパルク村も、日本より12時間遅れて新年を迎えました。2018年が皆さまにとって、良い年でありますように・・。

今後15年間の目標は、はっきりとしています。一人で出来ることではありませんが、実現できるように、信じて、迷わず、覚悟を持って進みます!

環境への取り組みとして
・日本の北極観測における民間支援体制を整える
・グリーンランド極北域とカナダ極北域に日本の観測施設を設置する

国際交流・文化交流として
・エスキモー民族(グリーンランド北西部地方)と日本の交流(姉妹都市・友好都市関係)の促進・締結と、その後の両地域間の交流
・エスキモー民族伝統文化(犬ぞりなど)の継承

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