体感気温が-30度を下回ると、凍傷の危険性が高くなる。凍傷とは、体の組織が凍り、壊死する症状だ。外気に触れている鼻や頬はもちろんのこと、手袋やブーツの中の手足の指先も血の巡りが悪く、凍傷になりやすい。自分は生きているのに、心臓は元気に動いているのに、痛みも伴わず、静かに肌が凍り始めるから恐ろしい。一旦凍ってしまった肌は、初期の段階で気づいて温めれば、軽い火傷のような症状で、いつかは肌も再生するが、症状がひどくなると鼻や指を失うことになる。体感気温は、気温と風速に関連している。たとえば、気温が-30度の時、無風であれば体感気温も-30度だが、風速が5m/s-45度、風速が10m/s-60度にもなる。犬ぞりには風をさえぎるフードがない。ヤッケの帽子につけている毛皮が頼りだが、完全に風をしのぐことはできない。気温と風速、視程を見て、凍傷の危険性を考慮し、進むべきか、停滞すべきかを判断している。