2011119日(水) 雪時々曇り -32.4

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犬ぞりトレーニングって、いったい何をやってるの?と想像がつかない皆さんもいると思うので、今日はそのことについて少し書いてみますね。

 チームワークを作るのも一つの理由だけど、それとは別にもっと大きな意味がある。もともとエスキモー犬というのは雪や氷が溶ける夏の間は、ただ繋がれて餌を食べているだけの生活。なのでシーズンが始まっていきなりハードにソリを引っ張らせても、体がついこない。エスキモーの人たちは、海の氷が凍り始める11月頃からの、太陽が昇らない極夜の季節は無理をせず、近場で狩りをして、それがうまい具合に犬たちのトレーニングにもなっている。生活に基づいているわけだ。そして極夜も終盤を迎え、日に日に明るくなるに従って、狩場の範囲を広げて長距離を走らせるようになる、という感じ。僕の場合はそういう流れを「トレーニング」と称して、犬たちが長距離を走っても体力が続くように、今の極夜の季節に、犬たちの調整をしている段階です。レーサー犬ではないので、脚が速くても全然ありがたくなくて、空荷のソリをただ引っ張ってるだけではトレーニングにならない。僕のソリは頑丈で、空荷の時の重さは150kgくらい。犬ぞり旅行に出ると多い時でさらにソリの上に600kg700kgという荷物を積まないといけない。エスキモーの人たちはそれが時には1000kgを超えるような、獲物の肉にあたる。脚は速くなくてもいいから、荷物を積んだ重量のあるソリを、ゆっくりでいいからコンスタントに引っ張ってくれるほうがありがたいのだ。僕の普段のトレーニングでは、ソリのランナーに鎖や太いロープをかけて、ブレーキ(負荷)をかけながらのトレーニングを続けている。片方のランナーにブレーキをかけたり、両方のランナーにブレーキをかけたり、時には片方のランナーに2本ずつくらいブレーキをかけたり・・。(ちなみにこのブレーキは、氷河の坂を下る時にソリが滑り落ちてこないので、安全面でかなり有効です。エスキモーの人たちに教わった、氷河下降方法)。

 今日のワンコは「リク」。走る意気込みはいつも凄いんだけど、先頭をきって走るタイプじゃないなあ、君は。

写真上:ランナーに太いロープを巻き、ブレーキをかけて走行している様子。

写真下:今日の「リク」。いつもは飛びついて来るけど、走行後でお疲れ?

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