影響を受けた方たち(その3)。今日は「師匠」です。

 僕にとっての「師匠」は、グリーンランド北西部、アバンナッソア地方のエスキモー民族だ。その中でも特別な「師匠」がいる。グリーンランド最北のエスキモー部落、北緯78°のシオラパルク村に在住の、「大島育雄」さんだ。もう40年も猟師としてこの地に住み続けている大島さん。エスキモー以上にエスキモーといえる方で、民族の文化を引き継いでいる。

僕が大島さんに出会ったのは23歳の時。20歳を過ぎてからグリーンランドへと足を踏み入れ、マイナス40℃の気候の中でキャンプ生活を試みたところ、あまりにもの自然の厳しさに手も足も出ず、日本に逃げ帰った。その翌シーズン、厳しい氷点下での活動方法を学ぶために門を叩いたのが、シオラパルク村に在住していた「大島育雄」さんだった。その後冬になるたびにシオラパルク村を訪れ、エスキモーの人たちを始め、特に大島さんからは野外での活動法、犬ぞり、狩猟を教わった。大島さんにとって、外からやって来た人間に、実践で犬ぞりを始めとするエスキモー文化や活動方法を、ここまで教えたのは、あとにも先にも僕だけだと思う。もしかしたら、僕が現地に定住することを望んでくれていたかもしれないが、今は日本と北極の両方にベースを置いていることに、少し後ろめたさを感じている。「こんな出来の悪い弟子はいない」と言われそうな気がするが、僕にとっては「師匠」だ。この4年ほどはカナダ北極圏で活動しているが、今後の展開で2年後に、自分の犬ぞりチームをグリーンランドに戻す予定です。

写真:シオラパルクに通い始めた20数年前、大島さんと娘さんの「アヤ」と。

20120525