31日(金)レゾリュート 晴れのちブリザード -41.0

20130301 「ボタン」が狂犬病に感染したのでは?と思われる症状が出たのは、犬ぞりで泊りがけで出かけた225日のこと。その数日前から、なんだか他の犬たちにやたらとケンカを吹っかけるかのように噛みついていて、次期ボス犬になりそうな強い雰囲気を持ち合わせているワンコなので、世代交代の波が来ているのかと思っていたが、それが異常だと気付いたのは、キャンプを張ったその日の夜だった。キャンプ前の走行中にも他の犬たちに噛みついてはチームワークを乱してイライラさせられ、深夜になってからはこれまでにない行動をとり始めた。まずは繋留中に胴バンドをグチャグチャに噛み切って逃げ出し、他の犬たちに噛みつきにかかり、騒動を鎮めるのに地吹雪の中一苦労。テントの中に戻りしばらくすると、また犬たちが騒ぎ始めたと思ったら、今度は曳き綱を噛み切ってフリーになり、また他の犬たちへ。ソリ曳き犬に育ててきたこれまで僕が知っている「ボタン」ではなく、狂っているとしか思えない光景だった。そのあと町のほうへと駆け出して行ったのだが、悪天停滞が終わってレゾリュートに帰ってみても、「ボタン」は町に戻っていなかった。町から離れたゴミ捨て場方向でそれらしき様子のおかしい犬を見かけた、と目撃情報があったが、それからは今日になってもチームの場所へも戻ってこず、おそらく、発症後数日で死に至る、と言われるように、そのまま何処かで死んでしまった可能性が強い。

 狂犬病の予防接種は規定通りに続けていて、まだ有効期間内であったにもかかわらず、僕の接種の仕方が悪かったのか・・。町に戻ったあとすぐに、治療の一環として他の犬たちにも再度、狂犬病の予防接種を打ち直しておく。感染していないように祈るばかり。あるいは「ボタン」が狂犬病ではなかったのならいいのだけど。他の犬たちも、数週間も経過を診れば、大丈夫かどうか判断できるだろう。

 思い当たるのは2月中旬を過ぎた頃に、繋留している「ボタン」の班でキツネを食べた形跡があったこと。この冬レゾリュートではキツネが異常繁殖していて、捕獲したキツネを一匹40ドル(だったか)で、町の行政機関が買い取っている。僕も歩いていて、立ち向かってくるキツネに何度も遭い、すごく気をつけていた・・。おそらく「ボタン」が、ノコノコとやってきたキツネを捕まえた時に、少なからず噛みつかれただろうし、また感染した個体の肉?脳みそ?なんかを食べても感染するというから、「ボタン」が狂ったのは感染してしまったとしか思えない。将来期待していたワンコだっただけに、何とも気が重い事件だ。

 この一件で、また1頭の若いオス犬を失うことになった。今シーズンはいいとしても、来シーズン以降の活動にあたってのチーム維持がどんどん難しくなり追い込まれていく。チームのオス犬が9頭で、しかも次世代の若い戦力がいないのだ。狂犬病は不可抗力にしても、どうしてレゾリュートではこんなにも若い犬が育ってくれないのか・・。

 写真:普通に忠実なソリ曳き犬だった頃の「ボタン」。